裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

日曜日

金のない奴ぁオリエントコー(ポレーション)へ来い

取り立ては厳しいけど心配すんな。

朝7時半起床。勢いよくとはいかないがまずまず。入浴、洗顔その他すませて、9時朝食。青豆のスープ、アップルマンゴー。メールいろいろ。橋沢さんに昨日の稽古欠席お詫びメールなど。本日の稽古場、場所がわからない。オノに言って助川くんに連絡とってもらう。すぐメールが来た。

2時までいろいろと雑仕事。収集つかず。エエイ、と打ち切って出かける。地下鉄で新宿まで、そこからJRで目黒まで、そのあとタクシーで油面まで。

稽古場でまず登場シーン、ここは問題なし。コムテツ役の佐々木さんとのシーン、お互いの息あわず、5〜6回繰り返し。とちるのは佐々木さんなのだが、これはきちんとセリフも何も入っていない私とあわせるために気が散るのだろう、申し訳ない。ただ、3回やるとさすがにテンポつかめてきて、休んでいたギャップは埋められる。しかし立ち位置など、私は下半身のカンがまったくない男なので、ちょっと(いや、かなり)苦労。渡辺克己さんのダンスが笑える。

5時ころ、ちょっと間食休憩。若手のみんなと雑談など。おニクくんが警察手帳をコバーン(小林三十朗)の写真で作っていた。買い物に外に出るとパラパラと雨。後半はプロデューサーの中曽根さん来て、通し稽古。ダンサーさん入れての通しは初めてだが、やはりまるで違うものとなる。一ヶ所、出を忘れたところあったが、頭が真っ白になるということもなく、無難にやりこなせた。まだ無難というだけではあるが、アクセントにはなったかな、と思っていたら、中曽根さんにちょっと褒められた。全員がギャグ々々々々で舞台を進行させているので、私のところが安心できる、とのこと。この言葉で救われた。ギャグが私のパートにはまったくないので、どうしたものかと悩んでいたのだ。

そう言えば『モンティ・パイソン正伝』の中でエリック・アイドルが
「人間はある一定の時間しか笑っていられない。(中略)もしぼくが何か作るとしたら、途中には観客を笑わせ続けなくてもすむようにアニメーションや歌などを入れておくだろう。コメディのちょっとした裏技だ」
と書いているし、テリー・ギリアムも
「一時間ほど経ったあたりで集中力が落ちてくる。何を見ていてもそうだ。(中略)何故かはしらないが、たぶん笑うということは精神的に体力を消耗するんだろう」
と、そしてテリー・ジョーンズも
「適度なところで休息を入れた方がいい。それほど厳密にやる必要はないけれど、しかしそうすれば映画の空気が変わる。大事なのは、それが面白いかどうかではなく、どう配置されているか、いつ現れてくるか、ということの方だ」
と言っている(アイドルは“本当はやってはいけない”と言っているけれど)。カウンタックーズのメンバーたちの笑いの連続に客がくたびれたあたりで私が出てきて、人情派刑事の役割を務める、というくらいのバランスがいいのではないかと思い、そう思ってやや、ホッとした。

10時、油面を出る。雨ポツポツ。目黒駅そばの『北海道』で、またちょい飲み。ダンサーの女の子二人と、原田明希子ちゃん、橋沢さん、中曽根さん、ブタカンの早坂さん、それに親川くん。最初は中曽根さんのダメ出しについていろいろ対策をみんな練る。役者さんたちのこともいろいろ。ちょっとアルコール入って、今後の劇団の売り出しのこと。いろいろと思うことあり、また語りたいことあり。12時閉店で出て今日はみんなに迷惑かけたこともあり女の子たちと親川くんにはお礼で代持つ。橋沢さんと中曽根さんはまだ打ち合わせ続けるそうで、誘われたが明日のこともあり、帰宅。

一旦ベッドに入るが久しぶりに体動かして気分が高揚したか寝つけず、水割り一杯、飲みながら『仮面の忍者赤影』のDVDなど見て気を休める(こんなもので安めんでも)。

そろそろ終盤に入ってきた『ウォーホル日記』にライナス・ポーリング博士が出てきた(85年11月21日)。ウォーホルに
「(健康に対する)真の悪者はただ一つ、砂糖だ」
とサジェスチョンしておきながら、自分はデザートのクッキーを残らずぺろりと平らげて、ウォーホルに呆れられていた。医者の不養生、いや紺屋の白袴。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa