11日
火曜日
小倉マグラ
「ソウコウするうちにもう、髪の毛がカツラなのか地毛なのかなどドーでもいいと思えてきて、私は」
7時半起床。目はその前から覚ましていて、また寝また寝であった。最近早起きが全然できなかったので、この傾向はよし。入浴、ひげそりの刃を久しぶりに変える。
昨日のメールに返事を出したらさらに返事が。
「幸せそうでなにより」
と書いたら
「はい、今、とても幸せです!」
とのこと。よかったよかったと思い、かつこんないい子を業界から去らせた連中の異常性を思う。
9時朝食、コーンスープとスイカ。パイデザから『Bの墓碑銘』ゲラが届いている。部数設定に迷う。内容はまぎれもなくここ数年作った本のうち最も私らしいのだが、しかしまたやたらマニアックで、実売数が読めない。
昨日N田くんから依頼来た緊急原稿書いてメール。さらに講談社モウラにファックスしなければならないのだが、自宅にはファックス機がない。1時に神保町でオノと待ち合わせることにして、家で弁当を使う。イカのかきあげの味付け。MXテレビから昼の番組の出演依頼あり。
地下鉄で神保町。オノと落ちあいドトールで受け渡し。某週刊誌の件、他の編集部との打ち合わせの件、いろいろとダンドリつける。そこから地下鉄三田線、蓮根。昨日も蓮根だったが、今日は昨日とはまた別の住区センター。しかし芝居でもやらないとこういうところには一生、足を踏み入れなかったろうと思うと不思議である。
昼はヌキで稽古、セリフも入りちょっと余裕できてきたのでギャグをちょっと入れてみる。“いいね”と言われた。
「原稿書かないで練習してたんじゃないですか」
いや、練習したいのはやまやまだが今回はまったくそんな余裕ナシ。今日もモバイルで原稿を合間々々に書いている。
5時から通し稽古。余裕でやってみたら昼間ほどよく出来ず。不思議なもの。ここは大丈夫、と思った家宅捜索のシーンがうまく形にならない。演技はナマモノである。そろそろ声を嗄らし気味の人も出てきている。さすがにしゃべる商売もやっているだけに、こっちはそれほどでもないわい、と自慢に思っていたら、夜、ちょっと咳が連続した。
9時半、撤収。橋沢さんから“今日は?”と誘いがかかったがさすがに今日はダメ。急いで水道橋まで出て、そこから金かかるがタクシー。車中でゲラに目を通し、帰宅後すぐに某週刊誌書評原稿19字×45行、やっつける。ホーッ、と息をつく。
DVDで『海獣の霊を呼ぶ女』見ながら、黒ビール。どうしようもないB級映画だが幽体離脱がテーマ(『悪魔っ子』や『童夢』の元ネタか?)で、その陰鬱な雰囲気がいい。ある意味その雰囲気をぶち壊しているのが怪物のぬいぐるみだが、しかしこれが出ないと話にならない、のがB級映画のB級たるところ。怪物が主人公の背後から忍びよって殺そうとしたところで、怪物に憑依している女性が目覚め、怪物が殺意をなくしてあっちへ行ってしまう(襲われようとした男は全然気がつかない)場面の間抜けさは『モンティ・パイソン』みたいだった。役者では脇の方に有名な人が出ていて、警部役のロン・ランデルはその後『キング・オブ・キングス』や、『史上最大の作戦』に出演。催眠術ショーで金儲けを画策するチャペル氏にはジョージ・サンダースの弟のトム・コンウェイ。ディズニーの『ピーター・パン』でナレーションをやっている人である。
牛肉刺し、辛子明太子などつまみに、黒ビール小二缶、ホッピー二杯。1時就寝。明日はいよいよ小屋入りである。