19日
金曜日
打ち合わせ二ツ、の記
朝、親しい人と嫌ぁなケンカする夢、二本(と、勘定していいのか)連続。一本はまあ、ケンカしてもいいか、な相手だったが。
7時起床。入浴。体重測ったら2キロ増えていた。よほど京都の水が合ったか。
久々に家で朝食。スイカ、モモ、スープ。
家で原稿メモなど作り、メール出しつつ、1時、家を出て千駄ヶ谷『アダック』での東京ジオサイドプロジェクト打ち合わせに直に出る。六花マネとそこで合流。
先に来ていた太めの女性が、一緒にステージをやるミュージシャンらしいが、ちょっと話を聞いたが、これが非常なわがまま。わがままというより、大きなステージをまかされて
「ついに私の本領を発揮できる場が!」
と舞い上がって、現実問題(時間、予算、スタッフ数エトセトラ)が頭からトンでるらしい。彼女の書いた企画内容のコピーを見たがまあ、あーちすととかいう連中がいかにも考えつくような文句が並んでいるだけのもの。
“過去から現在への悠久の意識の流れを表現”みたいな。
舞台監督さんが彼女の説明に
「すいません、それ、ちょっとイメージできないんですけれどどういうものですか」
とか繰り返していた。しかもステージ構成が複雑もいいところ。たった45分のステージを三つに分けてテーマをそれぞれ変えるなんてあわただしいだけではないか。そのためにわざわざコーラス隊とか笙の奏者とか呼んで、たった五分くらいしか出番がない。心理としてはよくわかる。
大きなイベントに自分の知人・友人を総動員すればそれだけ自分のプロデューサー能力の証明になる。いい宣伝効果ではある。とはいえ、それにつきあわされるメンバーこそいい迷惑だ。かなり大きなイベントなので凝ったのだろうが、凝っただけスタッフの苦労が何倍にもなる。
「あまりにも時間がない」
とスタッフを責めるが、時間がないのは最初からわかっていることで、なら時間がなくてもまとめられるアイデアを出してくるのがプロだろうが。おまけに私が総合司会なのに、一切紹介とかしてくれるなとぬかした。
無音の空間の中にやがて字幕が映し出され、静かな音楽が流れて……という演出らしい。彼女のイメージでは荘厳なステージ上を観客が注視する中、神秘的に登場したいのだろうが、これも最初から、彼女の登場は私のトークの後、と決まっているのだ。トッパナならともかく、ひとつのステージが終わって舞台上に次に出るものへの説明がなければ、客は“休憩か”と思いざわつくだけ。そんな初歩のこともわからんか。
「笙の演奏には楽器を乾燥させておくために電熱器を用意してほしいんですけど」
「すいません、ここ、火気厳禁なんですが」
「衣装をブラックライトで輝かせたいんで、統一したものそろえたいんです」
「Tシャツとかですか」
「いえ、縄文時代の服をイメージしたもので」
「……一着いくらくらいですか」
「五万円です」
「……!」
「無理ですか」
「三十人出るんですよね……?」
オペラをやりたいとか、コンサートを主催したいとかという“趣味”は、逆に金銭的感覚があったらとても手を出せない壮大な無駄遣いであることは知っている。それ故にそれが文化足り得ることも。しかし、それならそういう夢を持つ人はお役所などと組んではいけない。国土交通省などと大きい名前ではあるがしょせんはお役所。ダダ漏れで予算は組んでくれない。しかも、彼女、自分の部分の説明が終わったら
「レコーディングがありますから」
と、さっさと連絡用スタッフ一人残さず帰ってしまった。
あとに残されたスタッフと私たち、ポカン。しかし、そのおかげで“実際問題として”と、自分の企画のプレゼンの頭につけるだけで、スタッフの皆さんに大感激される。
共通の敵が出来ると人間、一致団結する。おまけに“常識家”という評価までいただけてトクをしたような気分。私の担当時間と彼女のステージのつなぎを思いついて話すと、
「うん、それはいい! しかし、承知するかなあ、彼女」
「やってもらわんとねえ。とりあえず電話してみなさいよ」
「ボクがですか〜」
などとガヤガヤ。
当日、夜は別イベントがあるので打ち上げ参加出来ないな、と思っていたのだが、こりゃ酒が入ったら私は絶対キレるだろうから、出られなくて正解だったかも。
お昼が出る。
もっともオリジン弁当。京都で太った主な理由がロケ弁三昧にあったと思う。やっと弁当から解放されたかと思ったらまた弁当だったのに苦笑。帰路、スケマネと彼女の話で盛り上がりつつ。家で仕事。
2時、タントンマッサージで揉んでもらう。少しオチた。いかにテンションは高まろうと(いや、高まれば高まるほど)肉体は疲弊する。
6時、時間割で打ち合わせ、と思ったら休みだったので(そうか、世間はまだ盆だったのだ)東武ホテルにてエースデュースK社長、Sさんと。撮済み無事、渡す。
Sくんが作った猫三味線展開企画書も見せてもらう。なかなか迫力のある出来。彼らが撮ったロケ現場での私のスナップ、なんかベテラン然としていて苦笑してしまう。二人ともちょっと興奮気味で、Sくんなど
「あの実写映像見せればどんなスポンサーでも一も二もなく
飛びついてきますよ!」
と言っている。
K社長のところには昨日、江原さんとTさん訪ねてきて、
「カラサワさんが次、撮るときも絶対うち(京撮)使こてや!」
と言ってくれたそうである。打ち上げのときの言葉が京のぶぶ漬けでなかったことがわかって本当に嬉しかった。心配なのはあれだけのセット使って予算オーバーしていないか、ということだったが、K社長が確認したところきちんと予算内だったそうである。
「それって奇跡じゃないですか」
「Tさんも奇跡だと言ってました」
絶対に仕上がり見ても、あれがたったン百万で撮れたとは誰一人思うまい。それかあらぬか、後でもう一度企画書を見たら、さりげなく予算が多めに記載されていた(笑)。
10時、帰宅。家でメシ。牛鍋を御飯にぶっかけて。