裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

水曜日

疾風怒濤、の記

朝6時半起床。
寝床読書、資料として引っぱり出してきてそのまま再読の秋田昌美『裸体の帝国』(水声社 1995)。
内容は刺激的、資料は新鮮、図版は豊富、なのに全ページゴシック組みの装丁が読みにくいこと。
初読のときも腹がたったが今回もときどき口から呪詛が漏れるほど。凝ったデザインは表紙だけでよろしい。
8時入浴、9時朝食。
モモとバナナ、アスパラガスのスープ。
メール連絡いろいろ。
ニフティメールの新形式、案外使い勝手がいいのがくやしい。時間はかかるが。
談之助から連絡、
毎年恒例の長野の花火見物、今年は10月の6、7に。て、ことは、長野から帰った翌日が大坂でオタアミ、それからその翌日が名古屋のトイフェスということになる。最近こういうスケジュールが増えてきた。レクリエーションになるんだかならんのだか。
11時出勤、原稿書く暇なく京都と連絡、猫の牙のこととか、赤ん坊猫の撮影方だとか。
1時、東武ホテルにて(時間割が盆休み)、某社某氏、某社某氏、それに某社某氏と打ち合わせ。一応、もうオープンだそうだがまだまだ外に出すのは恐いような話いろいろ。
私の方でも“マジかよそれ”な感じがまだ取れない。
千三つ業界のリップサービスはあるが、こちらの判断ポイントからすると大いに成算ありとして向こうも口にしていると思える部分あり。慎重にここは石橋を叩くべきか、乾坤一擲賭けてみるか。
頭がぐるぐるしながら仕事場に帰り、気を取り直していろいろ連絡。
3時半、家を出てタクシーで神保町、カスミ書房へ。
Yさんに病気のお見舞い。
元気だったんでやや安心するが、イワエモンさんのことがあったばかりなので安静に、と言っておく。少し立ち話。
それから神保町駅前に立ち戻り、5時、おぐりと待ち合わせ。
喫茶店『トロワグロ』で京都撮影のもろもろにつき打ち合わせ。
牙あわせのことなど。いろいろ話したくてたまらぬことあるが、京都でそれは会社から直接、ということになるだろう。
6時、別れてもひとつ雑用済ませ、帰宅。
メール各方面にいろいろ。
体がいくつあっても足りない。
イマジカエンタから依頼された資料、ざざっとまとめて(ネットはしかし便利)、メール。
7時、東武ホテルで幻冬舎『ダメな人のための名言集』打ち上げ。
井上デザインから二人、関口さん、六花マネ、トテカワYさん。『華暦』で。
関口さん、前からいろいろトラブルに巻き込まれることの多い人だと思っていたが、またまた。とはいえ、それにもうみんな笑ってツッコミを入れられるくらいに、この人にも余裕が出てきたように思う。
Yさんがこの業界に入ったのは、大学時代に後楽園でやった『トラッシュポップ・フェスティバル』を友人と見に来て(中野監督がゲストの回)、“こんなものが見られるなんて、なんて東京っていいところだろう”と思ったのがきっかけだったとか。
何でもやっておくものだな、と思う。
仕事自体は間に入った代理店がイモだったおかげで胃に穴があきそうになったものだったが、釣れた魚は大きかったわけだ。しかし、こんな可愛い顔してヘンなものが好きな大学生だったんだな。ちゃんと私もこの機を逃さず、
「立川談笑の本、出しましょう!」
とスーパーバイザーとしての責務を果たす。
仕事するなあ、と自賛。
Yさんも乗ってくれた。今度、一緒に独演会に行くことにする。トテカワを連れてタテカワを聞きにいくわけだ。
ちくまの方は談之助とベクトルを過去に向けた本を出し、幻冬舎で談笑とこれからの落語を展望する、
と思うとずいぶんスケールの大きい話になる。スケールの小さい話もする。
「私、眼帯フェチなんですよ、“『愛と死を見つめて』症候群”」
と言うとYさん、
「唐沢さんが望むなら、私、眼帯かけます!」
ああ、俺は幸福だ(笑)。
それにしてもシュトルム・ウント・ドランク的な一日であった。帰宅して、メールチェック、
ロフトさいとうさんからの手紙に心があたたまる。
こんなどうしようもない自分にみんな優しい。冥加なり。
『内藤ルネ自伝 すべてを失くして』再読。
K子は6時近くになって仕事場から帰る。
徹夜でコミケ用のコピー本原稿を描いていた由。
みんなお若い!

Copyright 2006 Shunichi Karasawa