裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

木曜日

帰りついた、の記

朝7時半起き。
正気づいてすぐ、京撮から渡された撮済みが手許にあるかどうか確認。かなり酔っていたからな、昨夜は。これを無くしたらいままでの苦労がなんだったんだ、になる。ちゃんとあってホッと。眠い目をこすりつつシャワーして、一階ロビーで朝食券2枚買い、二階の花水木でおぐりと待ち合わせ。もうチェックアウト準備して来ていた。今回のお礼と今後のこと少し話す。
今朝はパンとベーコンにしてみたが、あまり(予想通り)うまくなし。おぐりがパンとハムとスープ、サラダ、コーヒーという完全洋風メニューで箸を使って食べている(パンにバタつけるのもお箸で)のに驚いて指摘すると、
「いつもこうしている、家でもこうだった」
とのこと。それから、目玉焼きはやはり箸か、塩か醤油か、バタで焼くか油か、などという話。文化ギャップはおもしろいものだが、彼女と一緒には暮らせないだろうな。
おぐりチェックアウトすませて帰京。私は部屋で10時ころまで残務整理。10時チェックアウトして新幹線。太秦はさわやかだったがさすがに京都駅近辺はすさまじい暑さ。車中モバイルの調子悪し。読書などしてのんびり。と、いうかのんびりせざるを得ず。シュトルム・ウント・ドランク的な今回の撮影を振り返る。もともとは私の脳内の心もとない細胞の隅っこの方にアブクのように浮かんだちっぽけな発想が、現実世界においてアレヨアレヨという間に結晶し、多くの金と多くの人がそのアブクみたいな発想の結果動いて、ひとつの作品となって世に出ようとしている。考えてみれば不思議である。
今回の映画化の大きな特徴のひとつが、“無理していない”ということだろう。自腹を切って制作費出しているわけでなく、自分の身丈に余る大作を撮ろうというのでなく、しかし底辺のレベルに甘んじているわけでもない。全部を自分ひとりでやろうというのでなく、信頼のおける友人・知人たちの協力を得てやっている。非常に現在の自分に見合った状況で余裕持って撮れた。驚く程スムーズに撮影が進行したのはそのためだろう。品川駅2時着。タクシーで渋谷の仕事場に直行。すぐアサ芸に入る。月曜日に送っていなくてはならぬ原稿を木曜まで延ばしてしまった。そのかわり、最新のニュースを入れられるという利点はあるが。5時アゲて送る。
イラストのツチダさんと担当のK元さんからすぐ返事。待ち焦がれていたのだろう。それから京撮関係者などにメール、などいろいろ。留守中に秋の学園祭での公演依頼などが来ているのでスケマネに放る。
母が掃除に来てくれていた。だいぶ居間が片付いているが、どうせすぐまたモノと本であふれる。そろそろここも完全改装が必要か?
連絡とれなかった制作委員会Sくんから電話、明日、撮済受け渡しと今後のスケジュール決め。
10時、下北沢でK子と待ち合わせ。
北沢にあるイタリア料理店『オステリア月市』で夕食、というか夜食。
ここはタクシーで虎の子へ行く道すがらにあり、窓から眺めて気になっていた店なので、ちょっとうれしい。ギネスビールでのどをうるおし、カルパッチョ、野菜のスープ、タルタルステーキ。ここは例によって虎の子のキミちゃんから教わった店だそうだが、おすすめはトリッパ(牛の臓物煮込み)だそうである。もちろん私もトリッパは大の好物、頼んで
「うまい!」
とか言っているところに
「やあ、これはこれは」
と当のキミちゃんが現れる。
いろいろと話が出て、盛り上がったがそこらでこの4日間の疲れがドッと出てきた。
K子から
「顔が死んでるわよ」
と言われ、先に帰らせてもらう。女性二人、“私、○○の愛人になる〜!”などとはしゃぎまくっていた。
タクシーで帰宅、ひさしぶりの我が家のベッド。
沈没。

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