7日
日曜日
真夏には怪談! の記
朝5時半起床、寝床読書(小学館から送られた
『内藤ルネ自伝・すべてを失くして』)。
本人が同性愛者であることを一般書籍にも関わらず堂々と記しているところが時代だな、と思う。とにかく面白い。
それにしても美少年・美少女画の元祖でもある高畠華宵の評伝でも、人を疑うことを知らなかった子供のような華宵が晩年人に騙され続ける件が印象的だった。画家という人種は……。
7時、日記つけ、ミクシィなど。
9時朝食、夕張メロン、バナナ。
メロンは中田の伯母の家から
「ひとつはダメよ、半分あげるワ」
と、黍団子をくれる桃太郎のような台詞と共にもらったものだとか。
自室に帰って原稿。二見書房の最後の最後の原稿(開講の辞)を書いてメール。
11時半、地下鉄で新宿まで、中央線〜総武線乗り継ぎで両国。
お江戸両国亭『幻の南湖』第六回。
暑くて蒸して、もうどうにもならない。、両国亭のわきに浮浪者がシャツ姿で寝ていた。熱射病にならないか心配になる。
と学会の久留夫妻がすでに来ている。
チラシをいつものように貰ってみると、『旭堂南湖結婚披露講談会』というのが入っていて驚く。そのチケットを販売しているのにさらに驚く。“第一回”とあるのにもっと驚く(笑)。
藤本和也さんなどに聞いたら大学時代からのつきあいの彼女と、だそうだ。
1時開演、芦辺拓さん、開田あやさんもかけつけ。
本日の演目
・モリゾー&南湖のショート講談
・探偵講談『魔術師 前編』(江戸川乱歩)
・古典講談『小夜衣草紙より“蛤の吸い物”』
・紙芝居『原始怪獣ガニラ』(佐久良五郎)
・探偵講談『魔術師 後編』
『魔術師』は前編は前にも聞いたが後編は今回が初めて。
「さて、この対決はいかなることになるか、今回はこれで読み終わりとさせていただきます……って、前・後編で終わりと違うんかいな」と自分で言って笑わせる。この後は“完結編”か。
ガニラもまだ、終わらない。
『小夜衣草紙』はいかにも古いストレートな復讐ものの形式を残しているオーソドックスな怪談。幽霊がいろいろ頭を使って自分を裏切った若旦那に復讐するのである。東京の怪談は明治時代に圓朝が幽霊を神経作用(臑に傷持つものの罪悪感が幽霊を現出させる)という解釈で登場させてから、また大正時代に岡本綺堂が、幽霊から因果律をとっぱらったモダン・ホラー形式で一世を風靡してから、こういうオーソドックスに復讐する幽霊というものは出せなくなってしまった感がある。幽霊の出現で悪人たちが精神的錯乱に陥り、自滅するのが東京風なのである。
女中に化けて、縁起物である蛤の吸い物を隠してしまう
という計画性(?)を持つ幽霊というのはこちらにはあまりない。山前さんとの例によっての対談の後、例によっての江戸和食『隅田』で(蒸しエビ餃子とかホタテのマヨネーズフライとかが江戸和食なのか、というツッコミも例によって)打ち上げ。
藤本さん、白夜の編集のMさん、芦辺さん、あやさんなどと主に話す。
独身の芦辺さん、南湖さんの結婚に対しやたらやっかむのに、私とあやさんが双方からツッコミを入れる。
「この歳になったら、待ってたって相手は来ないよ。
いるところに自分から出かけていかなきゃ」
「どこにいるんですか。どこに行けばいるんですか相手というのは」
「だから、例えばこの打ち上げで私らの近くに座らずに、若い女性のいる席のところに陣取るんです」
「しかし陣取ったところで」
「あとはファイトです。××さんを見習いなさい。独身時代の彼は“求婚魔”と呼ばれていたんです。あなたはそんな“なんとか魔”みたいなタイトルの作品だけはいろいろ書いているのに、実践が足りない!」
もちろん、ミステリまわりの話もたくさん。
レトロミステリというジャンルがあるがレトロSFというのはないのかとか、クラブ小説形式のB級ホラーオムニバスをやりたいねえという話で盛り上がる。
『怪奇トリビア』の後、それをやろうとしていたのだが担当編集者が病気になってしまったことなどで中断されている。
7時半、お開き。コミケで南湖さんの同人誌売りますよ、と搬入を打ち合わせ。
結婚披露にもスケジュールさえ会えばいきますよ、と言っておく。
あやさんと総武線で新宿まで、そこからタクシー相乗りで中野まで。
二見のYさんはさすがやり手だという話など。私から原稿をとるコツを知っている。
京都での化け猫撮影の件も。
それにしても自分が大蔵貢に思えることである。かねて望んでいたことだが。