27日
金曜日
広津和郎は、書かねばならぬ
それが作家の宿命だ。朝、7時半起床。朝食、発芽玄米粥、梅干、サクランボ。昨日の晩、9時に仕事場から帰るはずのK子が、豪雨でしばらく足止めを食った。今日はうってかわった晴天で、ギラギラと午前中から日光が凶暴に照る。梅雨入りしたらさぞ体がだるかろうと心配していたのだが、仕事の進み具合もまずまずで、テンションが下がらないのは重畳。ただし血圧も高い。小学生の頃から高めではあったが。
入浴、歯磨き如例。おとつい、歯を磨いていたら歯ブラシがいきなりボキリと三つに折れた。奥歯を熱心に磨いていて、力が入りすぎたらしい。で、昨日から新しい歯ブラシにしたのだが、毛が固く、これでゴシゴシやっていたら歯茎が傷ついた。最近の流行ではフシャフシャと軽く磨くらしいが、なんとなく、ガシガシと磨かないと、 磨いた気がしないのである。
大変ひさしぶりに西原理恵子から電話。ぶんか社で描いていたとき以来か。と学会関係のことについての問い合わせ。『小説現代』7月号に彼女が載せた原稿のことであった。入会規則とか、その他のことについていくつか説明。いつものことながら、彼女は電話などでは本当にまっとうに礼儀正しくしゃべる常識人である。これがあのサイバラリエコだとは誰も思うまい。これが酒が入ると一変する(いや、今は知らない。当時は、した)。“アンタは、そんなにヒキダシをたくさん持っていながら、いつも気取った手つきで、その中からチョイチョイとネタをつまみ出してみせることしかしねえじゃねえか! ネタってのはな、ヒキダシ引っこ抜いて、逆さにふるって、バンバンと底を叩いてみせんだよ!”などと、へべれけになりながら説教を私に垂れたことがあったなあ。そのときは苦笑していただけだったが、いつぞやのクリスマスパーティで、“帽子を脱げ、ネクタイはずせ! 出ッ腹見せなきゃ男じゃねえ〜”とわめいてからまれたときには往生した。木村千歌があわてて、“すいません、カラサワさん、すいません、サイバラは明日になれば今日のこと何も覚えてませんから”とフォローし、私も酔っていて“それはそれで腹がたつ!”と蹴っ飛ばしたこともあり ました。
植木不等式さんに扶桑社の本のまえがきとあとがきの分担についてメール。西原のことも伝えておく。そういえばこの人も週刊朝日で彼女に似顔絵を描かれたことがあるのであった。河出のSさんから、怪獣官能本、執筆者各人のプロフィールの件について電話。追いかけで、コメント稿を“超っ早”で頼みます、と、これまた業界用語 でメールが来る。“ちょっぱや”と読むのである。
昼は冷蔵庫にあったヅケマグロの残りをニンニクバタで炒めて、ご飯のおかずにして食べる。エリンギの味噌汁と。食べてから、“ちょっぱや”原稿。書いて送る。ちくま書房Mさんから原稿催促電話。こっちもちょっぱやでないとまずいよなあ、などと思いながら少し休む。3時、時間割にてゆまに書房。9月刊行の少女小説傑作選第一期の三冊の選定と、付録で掲載する貸本少女マンガのことなどを、担当のTくんと 打ち合わせ。作品原本を貸す。しばらく雑談。
帰宅して、まず海拓舎にパブのリストを作って送り、それから河出書房の、もうひとつのコメント稿を書く。ベギラマに電話。クアタマのロフトのスケジュールを打ち合わせ。出演予定者が、所属事務所の、“これからの子なんで、ロフトに出して地下人気とかが出てしまうとまたまずいので”という理由でNGになったとの由。仕方ない。そのすぐ後で、斎藤さんが来訪。レトロエロ朗読CDの契約書を渡す。韓国真露とノリをおみやげに持ってきてくれた。代わりに新著進呈。スケジュールの件。“地下人気”のことをはなすと大笑いしていたが、“やっぱりカルトと思われているんですかねえ。「うんこまつり」が悪かったですかねえ”と反省も。
そのあと、北海道新聞書評原稿。6時に書き上げてメール。細かい仕事のやたら多い日であったような気がする。その後、翻訳にかかる。全体の半分までいったところで時間。家を出て、神山町『華暦』。さすが金曜日でえらい混み様。マグロとカマスの刺身、肉じゃが、穴子白焼き、おでんなど。マグロの大トロがさすがの味だった。生ビールグラス二杯、ウイスキー水割りダブル二杯。K子に、ゆまに書房の貸本少女マンガの選択を依頼。