裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

土曜日

日活の日

 角川映画、小林旭の渡り鳥シリーズを復活させると宣言。朝、夢の中に耶律楚材が出てくる。もっとも、耶律楚材がどんな格好の人物だかまったく知らないので、夢の中ではボーヨーとした姿であった。私は彼にその名前は耶蘇教を連想させてよくないとかなんとか、説教していた。6時に目覚ましが鳴って起床。眠い眠いとぼやきながら朝食。レトルトでジャガイモのビシソワーズ、スイカ二切れ。シャワー浴び、今日 の舞台での服を選び、いろいろと準備。K子はと学会Tシャツ姿。

 構成台本を20部ずつコピー。こういうときに限って途中で紙が切れたりするのはいつものこと。なんだかんだ、あれもやってないこれもやってないということが重なり、K子をいらだたせる。前売り券の売上げを会計の眠田直氏に渡さねばならないのに、それを入れた封筒が手紙入れの中に見あたらない。何度も探してはイライラする(これは既に昨日のうちにバッグの中に入れておいたのを忘れていたのであった)。結局、家を出たのが8時15分。新宿から山手線。9時5分前に日暮里駅着。太田のHさん、会員のS井さんはじめスタッフ陣、前座をお願いしているブラ汁・ブラッCなど揃っているが、まだ事務室が開かないのでロビー前のソファで手持ちぶさたそうにしている。永瀬さんも来て、いろいろ本日の打ち合わせ。構成台本コピーをホチキスで止めてもらう。

 9時、事務の人に会場使用料払込領収書(これが当日の使用許可証代わりになる)呈示して楽屋入り、Kくんら警備担当者に会場チェックしてもらう。植木さん、皆神さん、山本会長、眠田さんらも続々と楽屋入り。会長にレーザーポインターを貸す。第一楽屋を女性楽屋として、ドアのところに貼り紙。出入り口指示の貼り紙を作り、受付・物販用の台をこしらえ、ポスターを一階と四階(会場のある階)の、エレベーター、エスカレーターの前の位地に台に貼って掲示する。なにしろ今日は土曜日でもあり、下の階では結婚式が行われている。間違えてこっちに入ってくる人がいてはえらい騒ぎである。いや、実際、女性が一人こっちの楽屋に入ってきて、不思議そうな表情でハッピ姿のスタッフを見て、“ここ、ナンデスカ?”と訊いてきた。ここはナンデモありません、と追い返す。ロビーで作業していたら、数人、エレベーター近くにすでにたむろしていた一人が私の腕をつかむようにして、
「まだ当日券はありますか」
 と訊いてくる。今回は公演情報をほとんど流さずにいたから、満席で入れない場合を想定して早く来たらしい。あわてて楽屋のS井さんに相談し、整理券を作って配布してもらう。それにしても、まだ舞台設営すらやっていないのにもう客が並ぶというのもなかなか凄い。彼ら数名は整理券を配布してもなお、開場までずっとそこで待っ ていたようだ。

 声ちゃん、談之助さん、開田あやさん、本郷ゆき緒さん、ひえだオンまゆらさんなど、出演者も入り完了。こちらは舞台設営に忙殺。音響・照明担当のIさんと、マイクの通りを確かめ、ピンスポの位地を上手、下手、中央に定め、トークの際の机と椅子の位地を定める。机上での予定である台本と現場での食い違いをチェックし、赤をどんどん入れていく。会員のK川さんが借り出してきてくれた書画カメラをプロジェクターに接続し、その映りを確認する。一方で、受付ではチケットの準備、配布用パンフの準備、チラシ類の設置(ブラッCの勉強会のチラシも置いた。藤倉さんがとてもウレシソウに眺めていた)など。あと、弁当や飲み物の種類決定、買い出し仕事も誰かにやってもらわねばならない。女性会員のmikipooさんに、大賞受賞作の記された紙が入っている封筒を開けるためのハサミに、リボンを結んでもらうようお願いする。まったく、何から何まで手作りである。廊下やロビーに出るたび、楽屋に戻るたびに、いろんな連絡事項、決定必要事項が出てくる。こんなに物がはかどらないのに、もう昼過ぎなのでは、とあせって時計を見ると、まだ10時になるかならないか。時間が特殊な流れ方をしている感覚である。そう、これは『ビューティフル・ドリーマー』の世界なのである。しかし、あのアニメとは違い、いつ果てるとも知れないそういう雑事をやりながら、ふと顔を上げて見回してみると、バラバラのいろんな素材が揃ってきて組み合わさり、非・日常の気分が次第々々に高まってきて、“イベント”が形づくられていっている。学生時代にさんざ経験した、あの感覚。

 一方で、このイベントは私にしても未経験の部分が多い。一番大きなことは、今回が、自分たちの手で一から計画したイベントだ、ということである。一応、太田出版に協賛して貰ってはいるが、企画実行は全て自分たちで、会場選びも会員の植木さんがやったことだし、その費用等の予算も、基本はと学会の同人誌売上げなどでプールした、会の予算から出している。最初は音響と照明だけはプロを入れようと私が主張していたが、その後、いっそのことこれも自分たちでヤッチマオウと、全部会員中の有志で、機械に詳しいI矢くんなどにまかせてしまった。物販要員で太田出版から人数が少し出てきてくれるのと、落語の高座作りや着替えなどの手伝いに快楽亭のところの前座さんを借り出したのと、あとカメラ撮影でササキバラゴウさんに手伝いに来てもらったのくらいで、後は受付も司会も何もかも、全部と学会員が自前でやっている。昔、イベント仕事に深く関わっていたとはいえ、私はイベント業ではなく、芸能プロダクションであった。芸人さんを、すでに出来ている会場に送り届ければそれですむことだった。人集め・宣伝のプロ、会場作りのプロ、機材のプロ等々がいて、そこにこちらは芸人派遣のプロとしてプロの芸人を提供すればいいのであった。それが今回はいわゆるプロは談之助さんの他一人もいない。全部、手探りで会を作っていかなくてはならない。ハコからこっちで作り、しかも、シロウト集団とはいえ、金とって客を入れる以上、恥ずかしいものを見せるわけにはいかないのである。

 アクシデントもいろいろある。例えば会長が、K川さん提供の新式書画カメラの映りのよさに感動し、突如“前に作った紹介ビデオを使うのはやめて、実際にカメラでいちいちその本を見せて紹介したい”と言ってきた。じゃア、と、ブタカンの永瀬さんと、その前のと学会エクストラのときの書画カメラを置きっぱなしにして会長の発表につなげようと打ち合わせる。結果として、書画カメラは最初の基礎講座からずっと続けて壇上に出しっぱなしでいいことになり、ならば会長一人にまかせず、志水さん・皆神さんにツッコミ役で舞台に出てもらおう、などと変更種々。しかし、こういうのは舞台上の演出の範囲内でのことである。今回一番大きかったアクシデントは、荒川区の管理係から(ホテルの中の施設だが、このホールは荒川区の区営のものなのである)、テレビが入るそうであるが、それはどこの局の何という番組か、またこの会はいったいどういう会なのか、という問い合わせがあったことであった。もし、カルト宗教とか非合法な団体とかであったときに責任をとるのが嫌らしい。役所というのは仕方がない。電話口でおどおどしゃべる初老の男性に、会の趣旨や、活動内容、さらに今回の取材番組名など逐一説明。“では、読書会でいろいろな本を紹介するという会なのですね”と、安心したらしく、一応電話は切れたが、しばらくしてまたかかってきて、“その紹介する本の書影を一部分でいいから、コピーしてFAXで送ってくれないか”と言ってきた。呆れ返って、会長の持ってきた本から数冊借り、『アポロは月へ行ったのか?』とか、『私設アルプスの少女ハイジその後』とか、『歯は中枢だった!』とか七、八冊ばかりコピーして送ると、向こうもやっとカルトなどではないとわかったか(逆に思われたとしてもおかしくなかったが)、何も言ってこなくなった。しかし、そもそもわれわれがカルト宗教団体であったとして、電話口でそれとわかるようなことをべらべらしゃべったりすると思うかね? 当のテレビ『パンドレッタ』スタッフはその電話のすぐ後、到着。女の子たちはすでに着替えていたけれど、一応楽屋に通して、牛丼弁当食べてもらう。そう言えば私も10時半ころ、弁当使ったはずだがほとんど覚えていない。途中で例の電話説明にかり出され、戻った 時にはすでに取り片付けられていた。

 いろいろあって、総リハが始まったのが三十分遅れ。ゲネということで衣装つけて舞台あがる。帽子もクロッシェ風のものから黒の豚皮のダウン帽に変え、カラーシャツに赤いネクタイ、黒のジャケットを着用。姿見に映してみると、そこにイラストでおなじみの、“あの”唐沢俊一が出現。つくづく思うが、絵になる姿である。……ただし漫画であるが。シュシュトリアンの衣装姿の声ちゃんと、司会席に立ち、軽く掛け合いの練習。他の出演者、植木さんは黒背広に黒ネクタイという“サラリーマンのコスプレ”。会長はTシャツの上にと学会のハッピ。志水さん、皆神さんはそれぞれそのまんまでキャラになっており、女性陣がまた凄い。開田あやさんはお馴染みバーブワイヤーだが、金髪カツラをしてないからモロにボンデージ。本郷ゆき緒さんが、金緑の中国服(シナ服、と呼びたいな、ここは)、ひえださんはいつもよりキツめのメイクにジプシー風占い師の衣装。対して同じエクストラ発表のS井さん、新田さんは普段そのまんまのシャツ姿というのがまた対称的でいい。ブタカン永瀬氏が何度もせかすが、立ち位地のバミリだけでもいろいろ大変で、開場時間に十分ほど食い込んでしまう。この時、ロビーではすでに客があふれかえり、大混雑していたらしい。後で聞いたら、K子が機転で物販を先に開始して混乱をふせいだらしいが、笑ったのはお客たちが誰に指示されるまでもなく二列縦隊に並び始めたということで、さすがオ タクは並ぶことに慣れてるなあ、という感じ。

 楽屋に引っ込み、あとは開演待ち。スタッフが差し入れてくれたドリンク剤のんで出を待つ。ここまで来ると、逆に落ち着いてくる。入りは順調で、補助を出すかどうか、というところらしい。こないだの大木での打ち合わせでHさんと、“まあ、来て三五○ってとこですか”と話したが、まずドンピシャ。実質は会員席、招待席を少し空けさせたので、三七○というところ。宣伝をほとんど雑誌媒体でしなかったというハンデでこれは、ちょっと凄い。こうなると、もっとマスコミに広告打っておけばさらに……という欲も出るけれど、まあ、ここらへんが今のわれわれにとってトラブルなく捌ける人数の上限ではないかという気がする。これで慣れてくれば、来年はも少し上をねらえるだろう。ロビーでの販売は順調で、開演前に会誌のバックナンバー等は全部売り切れ。会長が様子見て戻ってきて、
「しまった、女ターザン本を持ってくるんだった〜!」
 とくやしがっていた。太田出版の営業の人が挨拶に来て曰く、
「お客さんが、いちいち“この本は何年度の例会の記録ですか?”“××という本が取り上げられているのはこの本ですか?”と質問して買っていくんです。こんなに、 お客が濃い販売をやらせてもらったのは今回が初めてです」
 と。何か笑える。

 開演前に流していたテルミン演奏が消え、いよいよ開幕。袖の陰マイクで声ちゃんが開演を告げ、『威風堂々』流れる中(いつもはオープニング・ビデオなのだが、製作担当の会長が忙しくて作れなかった)、司会席に出て、挨拶。思えば去年の夏、出雲のSF大会々場のホテルで、昼酒に酔って太田のHさんにちょこっと“来年は東京で自主興業したらいいじゃないですか?”とささやいたのが、ソモソモの発端であった(2002年7月13日の日記参照)。それから一年足らずで、ここまで来たか、 と思うと、いささか感無量。ちょっと出をトチってしまった。

 声ちゃんと二人掛け合いで、トンデモ本大賞東京開催に至るまでの経緯をざっと説明。なんで会が出来て11年目で、大賞が12回なのかとかの解説。さらにトンデモ本大賞は権威でトンデモを押さえつけるものではなく、いかにそれがエンタテイメントしたトンデモ発想であるか、の評価なのだ、その証拠に、受賞基準はその紹介で会場にいる皆様がどれだけ笑ったかによる、と解説。あいまにこちらのはさむギャグに満場爆笑、しばし笑い待ちをしなければいけない場面もあった。冒頭でこれだけ笑いが取れるというのに少し驚く。そして、植木・志水、皆神三氏によるトンデモ本基本講座に移る。ここは皆神さんの独壇場となり、自分の名前がシルバー・ブルーメと並んで載っている文部省選定教科書を紹介、パナウェーブ関連での大槻教授のいい加減発言、さらにアポロ月着陸否定番組のマヌケさなどを、ビデオと書画カメラで解説、ひとつひとつに満場、大拍手、大爆笑。さらには内容に対する質問なども飛び、初っぱなから大盛り上がり。出演の三人もテンションが上がったか、袖からの永瀬さんの“あと十分”という合図を、“もう終わり”とカン違いして、〆に入ろうとしたくらい。発表にスピード感がついているので、時間配分を大幅に早めて認識してしまっていたのだろう。

 袖で聞いていて、今回の会の成功をこれで確信すると共に、誤算だったなあ、と思う。会の構成案を出したとき、一部から、そんな基礎講座とか退屈ぽいものをしないで、最初から受賞作紹介して、さっさと本題に入っていけばいいではないか、という意見があった。そのとき私の論は、客というものは入場してすぐにテンションを上げられるものではない、最初はなかなかなじめずに落ち着かないでいる、その平常の状態にいる客を徐々に温め、クライマックスまでに沸かせる状態にまでするのに、こういう基礎講座的なものは絶対必要なものなのだ、というものだった。みんなは納得してくれたのだが、いざ蓋を開けてみると、なに、温めるも何もない、すでに観客全員沸騰状態であった。これは、開場が遅れて、ロビーですし詰め状態がしばらく続いたが故に、いわゆる“ゲッベルス効果”(人間は狭いところに押し込められて、他者ととの身体距離がとれないと、神経的に麻痺して、すぐにレポールのかけられる興奮状態になる)がすでに生まれてしまっていたことによるのだろう。それに、宣伝もろくにしない状態で情報を自分でつかんでやってくるような客は、そもそも最初から“濃い”のである。

 続いてがと学会エクストラ。“と学会はこの世にありとあらゆるヘンなものを収集して研究するのが目的。UFOやオカルト以外のトンデモ物件を発表する、その様子を再現してみましょう”と司会、最後に“女性陣の華麗な衣装もお楽しみください”と付け加え。その前フリで最初に出てきたのがフツウのおじさんのS井氏である。マイクの前で一言、“期待させといて、女性会員でなくてすいません”で場内爆笑、拍手。ツカミのチャンスを逃さないのは、さすがに創立以来発表慣れしているベテランであると感心。次があやさん、大胆なボンデージ衣装に場内から“オオーッ”の声。“おマンマとおマンコに手を抜くな! の開田あやでございます”と。これだけの人数を前に堂々とおマンコと口にできる女性も彼女くらいならん。さらに本郷さんは例によっての見事な発表テクニックと、ハーレクインネタという意外性で満場を酔わせる。取り上げた作品の登場人物に“デブリン”というのがいたのだが、続いて登場の新田五郎さん、“デブリンではありません”でまた満場爆笑、拍手。まったくウチの会員はアドリブが効くことであるよ、と舌を巻く。ネタは手に入ったマンガもの、素材はよし、例の投げっぱなしの話術よし、立って話したため、いささかマイクが声を拾わないところがあったが、それでもなお一番のウケ。トリは貫禄でひえださん、例の“最低ですかー?”のかけ声に満場大声で“最低でーす!”と返す。なんだ、この ノリは。

 舞台、サクサクと進む。いよいよ会長登場、今までの出演者とはやはり違う反応が場内を包む。やはり“これがあの伝説の山本弘か”という、何というのか、アイドルを見つめる目線なのである。その証拠に、後で投票用紙のアンケート欄への書き込みで、“会長萌え!”“こんな好青年だったとは”“ウホッ、いい男(笑)”などという萌え書き込みが多数あった。候補作四冊を紹介。私はその隙にちょっとノドをうるおしに楽屋へ入ったが、Hさんがモニターを見ながら、“会長の発表、さすがですねえ!”といまさらに感服の表情。これはやはり、舞台慣れの成果ですね、と談之助さんと分析。十数年前、初めてと学会がラジオで取り上げられて会長が出演し、それを聞いた会員からの感想が“なんか、早口のにいちゃんが出てました”というものだった。人間、無駄に歳はとらない。某所からは、と学会以上に有名な某研究学会のイベントもやったことがあるが、会員さんたちのプレゼンの巧さと客の反応を見ると、比較にならないくらい今日の方が上です、なんでこんなに全員が巧いんですか? という声もあがった。これは、ウチの基本が“人前での発表”にあるからだろう。

 紹介終わり、集計の手順を説明して休息。まず、前半は大成功。この調子で後半も行きましょう、と楽屋でハッパ。休息時間も物販はさかんで、私の同人誌、立川流の同人誌等、完売。観客に配った発狂くん煎餅の余りを食べて声ちゃんたち、辛いからいと大騒ぎ。皆神さんはサインに駆り出される。これは、今日の客層はさすがに『世界シリーズ』『年鑑シリーズ』はもうすでにほとんどの人が持っており、売れ筋の中心が皆神さん監修のスケプティクス・ライブラリーだからである。客数が目算通りであったことにつき、談之助さんが“不思議ですねえ、イベントってもンは。350の席数のところでやると、1000でもなく、100でもなく、何故かちょうど350デコボコで来るンです”と言っていた。客がハコに合わせる、というやつか。一方で 集まった投票用紙、次々に開票と集計が進んでいる。

 さて後半、まずは談之助さんのトンデモ落語。この落語を入れるにしても、休息と投票終えたことでいったん下がった客席の体温を上げて、という目論見だったのであるが、お客さんたち、体温が下がるどころか、もう最初から大期待で高座を注目している。袖で聞いていて大丈夫かとこっちが心配になったほどヤバいネタでも引くものかは、ワッワという受け方。この段階で楽屋のHさん永瀬さんと、少し進行マキで行こう、と打ち合わせる。この調子だと、最後まで客の体力が持たないかもしれない、と心配になったのである。いつぞや、談志の独演会で、最初のネタであまりに笑わせてしまったため、本ネタでみんなくたびれ果てて笑いがイマイチ、ということがあったのを見ている。眠田さんも受付からやっと解放されてきて、“客よりオレがもうバ テ切ってるんだよー、この後出演だろ、ヤバいよー”と言っていた。

 談之助さんの落語が終わって、引き上げるときに司会席に呼んで、少し雑談。これは、高座を片付けて次のパネルディスカッションの用意をするまでの時間つなぎである。“しかし、ヤバいネタでしたね”“でも、今日のお客さんは引かないからいいですよ。パナウェーブの扮装で出ただけで、こないだこの日暮里でやった落語会のお客さんは引きました”と。そりゃ引くだろう。とやこう話すうち、舞台設営終わり、さてパネルディスカッション。裏方だった永瀬氏含め9人(運営委員8人プラス鶴岡法斎)、『ザ・コア』の話から初めて雑談しばし。鶴岡が今日は妙におとなしく、これではHさん期待の、話題を妙な方に引っ張っていく役割が果たせるか? と思っていたのですが、ちゃんとイザというポイントでやってくれました、“昭和天皇にはニセモノがいて、あちこちで目撃されている”という話から、“実はホンモノがお忍びで歩いていたんではないのか”という話になったところで、“『暴れん坊天皇』ってやつですかね?”と。これには会場もわれわれ出演者ももう絶倒。Hさんが楽屋で親指立てている図が目に浮かぶようであった。で、そうやって盛り上がっている途中で声ちゃんが“お話の途中ですが、そろそろ発表の時間です!”と割って入り、全員起立して、発表となる。会長に声ちゃんがハサミを渡す。新聞スクラップ用の、バカ長い ハサミを用意したのだが、ここまでちゃんとウケてくれた。画竜点睛である。

 発表結果は後にと学会HPで発表するので、ここには書かない。ただ、会長がコメントして、“毎年、「今年はこれが本命だな」というのがあるんですが、まず大抵、それと違う作品が大賞になります。今年もまったく予想外でした”と言ったのが印象的であった。『威風堂々』流れるなか、拍手と喝采で幕。いつまでも残っている人もいるので、モンティ・パイソン風に“もう、面白いことは何もやりません、お帰りください”と〆める。初めての会で、これだけ盛り上がり、大きなトラブルもなく、無事4時間の長丁場を乗り切ったこと、実に目出度し。5時半終演予定がサクサクっと行き、5時15分にはハネられたことにも満足。これは、ここの撤収が6時までに完了すれば、賃貸料が5万近く浮くからである。普段着に着替えて、ロビーの撤収の手伝いに向かう。まだお客さんがいて、サインを頼まれたり、握手責めにあったり、さらに自分の発見したトンデモ本を提供してくれる人までいた。感謝。永瀬さんと眠田 さんと、三人で機材費等支払い。係の人に挨拶して、完全完了。

 二次会会場『オックス』に入る。すでに会員の皆さん、盛り上がっている。会長は明日、自分の住んでいるマンションの共同ドブさらいがあって、これに欠席すると罰金をとられる、と二次会はパスして帰阪してしまった。これもまた会長らしい。太田出版のHさんに乾杯の挨拶をお願い。その後、本日のスタッフ、出演者の皆さんに、一人々々挨拶して回る。ここの店は持ち込みOKなのがありがたい。と学会らしい、ユニークな酒がいくつも持ち込まれて並んでいる。横山信義さん手作りの梅酒あり、原田実さん持ち込みのアブサンあり、九州からぴんでんさんが持ってきてくれた芋焼酎『不阿羅王(ファラオ)』あり、ワインマニアのI矢さん持参の自慢のワインありといった感じ。K川書店の編集者でもあり会員でもあるS川さんが、なにやら真面目な顔をして太田のHさんに論じている。口調が興奮気味なので、何か腹を立てて文句 を言っているのか、と思い、近寄って会話に加わってみると、逆に
「さっき今回の会はまずまず成功、と言っていたが、私はそれどころか大成功だと思う。これだけ客が盛り上がる会というのは他にちょっとない。それだけに、こんな小さな会場でやるべき会ではない、もっとマスコミに宣伝して、メディアミックス的に展開すれば、凄いことになる」
 と、マジな表情で熱っぽく論じているのであった。メディアミックス的展開とは、さすがにK川書店的な考えである。魅力的な論であり、しかし、と学会のような、他人さまの本にツッコミを入れて楽しむ会は、今回くらいの人数でやった方が“秘密クラブ”的共犯意識で盛り上がるというのもあり、これが来年までの課題ということになるだろう。今年来年はSF大会が地方大会なので東京開催も異存なかろうが、都市型大会で東京・横浜などにSF大会が戻ってきたときはどうするのか、という問題もある。企画発足当初は、会員間に、規模拡大絶対反対、という声すらあり、一時は私の方であまりのワケのわからなさに激高して、会を出ようかと思った一瞬すら、あった。社会人の片手間での会の限界というのもある。この点に関しては、まったく片手間でよくまあ、ここまでやりおおせたという感慨もあるが。皆神さんともいろいろ話す。今日の客はスカラー波の解説でどっと反応するような濃い客で、これは意外だった、と。談之助さん、あそこまで全部のギャグが受けるのは実は望ましいことではない、というような意見を述べる。ギャグにも段取りというものがあり、メインまでへの盛り上げでテンションをタメといて、ドッとメインでそれが爆発する、というよう でないと、と。

 9時までいろいろ話して盛り上がり、遠方の会員が帰るたびに万歳三唱で送り、なにか興奮さめやらぬ感じ。9時、お開きということで、永瀬さんに挨拶してもらい、植木不等式さんの一本締めで、幕。さあ、次はコミケだ、とハッパ。夏の祭は続く。会計のこと、この後のことなど、植木さん、談之助さん、K子と、いつも日暮里の会の打ち上げに使う『酔の助』で。馬刺、鰯塩焼き、チンチン焼き(トロロ芋のすりおろしを鉄鍋で焼いたもの)などを飲みつつ、焼酎でお疲れさま。会計のK子から、同人誌売上げも入れれば大黒字の報告。ただし、あくまでも遊びの会であったが故に、出演者、スタッフ一同へのペイがお車代程度なのはここまで盛況だった会としては寂しい、来年はここらを改善して、きちんとウケに見合ったギャランティを支払うようにしたい、とK子述べる。冠付け、スポンサーの問題など、いくつか試案みたいなものを。11時過ぎ、JRで帰宅。新宿駅で、三次会帰りのI矢さん、Uさんとバッタリ出会った。みんな興奮醒めやらないのであろう。12時、シャワー浴びてフトンに潜り込む。長い一日の終わり。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa