裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

月曜日

ガテンにQ2を入れず

 硬派就職情報誌であるガテンには、ダイヤルQ2などのナンパな広告は入れない、ということ。朝、4時半に起き出して、河出の原稿を書く。30枚のうち、何とかかんとか25枚くらいまで書く。それからオレンジーナ一本飲んでまたフトンに入り、7時45分まで寝る。朝食、貝柱粥とスグキ。昨日サウナで体重を量ったら、微々た るものではあるが順調に減少しつつあり。

 新聞休刊日で手持ちぶさた。10時ころまでに7日の東京大会の日記を書き上げてアップ。日記にこう記すことで、その翌日である昨日より、7日の記憶が克明に甦ってきて、まだ二日しかたっていないのに、ややノスタルジックな気分になる。植木不等式氏の日記にも7日のことがアップされたので何度も読み返したり。みんな、昨日はさすがにバテていたとみえ、今日になってやたらMLが活発化して“ご苦労さまで した”メールのやりとりが盛んなのが可笑しい。

 1時半、時間割で河出須川くんと打ち合わせ。原稿の冒頭のみ、プリントアウトしたものを見せる。スケジュール確認、かなり厳しいことになりそう。自業自得ではあ るけれども。“永瀬さんは元気ですか”と訊かれる。元気も元気、と答える。

 打ち合わせ終わって、チャーリーハウスでトンミン食べて帰宅、その原稿の残りを書き上げて送ろうとしたが、何故かメールの調子が悪い。いじっているうちに、原稿をちょいと手直しする必要ある箇所を発見、これにテを入れるが、これがちと長くなる。さっき名前の出た永瀬さんから電話、やはり昨日はバテていたそうだが、その反動でどうもハイになっているらしく、来年は1000人規模の会場を取ろうと主張。私はいくらなんでもそれはわれわれだけの手には余る、どこかの出版社が本腰を入れて主催してくれないと、と言うが、なに、そんなものは大したことない、とあくまで意気軒昂、こういうときの永瀬さんには何言っても無駄なので、ただソウダネエとしか答えられず。私は、様子が手に入っている日暮里で、出来れば二日興業というような形(初日を大賞選考、二日目を拡大エクストラとして)を取ってもう少しノウハウを会として学んで、大きくするのも小さくするのもそれからのことにしてはどうか、と考えているのだが、永瀬さんは、例の荒川区からの確認電話にかなりカリカリきているようで、小役人が口を出すようなところはイカン、みたいなことを言う。

 結局、夜までやらねばいけないことをまるきり出来ずにしまう。各マスコミからの大会感想メールをMLにアップしたりというどうしようもない雑作業のみ。そうこうしているうちにと学会の新しい会場関係管理係となったIPPANさんから、来年の会場として予約していた某所が、(永瀬さんの言う1000人規模の大ホールも含めて)すでに来年6月は予約でいっぱい、というML報告。ああ、そんなこっちゃないかと思っていた、という感じ。安くて便利で都心に近い場所であったからな。とりあえず代案として、日暮里をもう一回押さえたら、と返事。二日間興業のアイデアも出しておいたが、大賞選考があるので、やはり無理かな、と思う。何にせよ、そううま い具合にはいかない。

 9時半、タクシーで新大久保。K子とみなみさんがフィン語の帰りの食事会で、今日は『ハンニバル』で食べるという。入るとモンデールがいつものように“ハーイ、センセー!”と迎えてくれたが、奥さんのナオコさんの姿が見えない。K子に言ったら、なんと妊娠してもう来月が産み月だとのこと。おお、おめでとう、とモンデール にお祝いを。

 今日は三人なので料理はお好みで、まず鴨とソラマメのサラダ、真鯛のオーヴン焼き、それにメルゲーゼ(羊肉のソーセージ)のクスクス。ワインはシロッコ(熱風)という濃厚かつさわやかなもの。真鯛は刻んだキャベツと一緒に蒸し焼きにされて出てくる。鯛とキャベツの取り合わせというのは日本人にはちょっと考えつかないが、これが甘くて実にいい。メルゲーゼは、昔ビールのつまみに食べたベビーサラミの味によく似ている。あれも原材料が羊肉だったから、まあ当然だが。デザートは胡麻のプディング。我々が来ていると知って、奥さんが自宅(と言っても店の向かいのマンション)から顔を出してくれた。11時過ぎ、帰宅。例の会場のことで、MLに意見 いくつか。

 ワインの酔いを醒ましつつ、少し仕事。1時ころ就寝。寝ていたら、何度か電話かかる。眠いので無視(留守録にも何も入れず切るので)していたが、夜中の三時にまで鳴る。緊急のことか、と思いとったら、何と永瀬氏。会場取りの件。ハイになっていて、もう以前にここはあまりに受付がやかましくてダメ、と結論が出ている、参宮橋のオリンピック青少年センターの会場が、去年から第三セクターに運営が移っているからどうのこうの、と一方的にしゃべりまくられる。会場係はもうIPPANさんと決めているんだし、そこは彼がついこないだも電話してあまりいい感触でなかったというし、と答えるが、設備がどう、席数がこう、とデータを読み上げて、もう一度当たってみる価値はある、と主張。まあ、それは当たってみるのはいいかもしれないが、それは夜中に人の家に伝えるべきことかね、と正直、困惑する。確かにイベントは盛り上がるし楽しいし、これからもやっていかねばならぬことではあるが、われわれの正業はやはり文筆で、これから数日で、趣味のイベントで生じたそっちの遅れを取り戻さねばならないのである。夜中の三時にその件で電話、というのはやや、常軌を逸している。まあ、そこが永瀬唯なのではあるが。だんだん話がループして、昼の電話と同じことを繰り返しはじめたので、何も返答しないでいたら、しばらくして気がすんだか、じゃあまた、と切れた。おまけに、何でそんな電話長々ととるの、と、同じく目を覚ましてしまったK子には毒づかれる。深くため息。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa