裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

火曜日

「ボーイズ」ラブ

 坊屋三郎×小野ヤスシ、玉川カルテット×灘康次(5P)。朝7時起床。朝食は豆モヤシとソラマメのスチーム。塩(クレージーソルト)だけで食べるので、ドレッシングをかける豆サラダよりさらにヘルシー。とはいえ、昼までに腹が空いて空いてまいった。朝のワイドショーで、透明人間になれるコート、というのが登場。光学迷彩服(攻殻機動隊のアレ)で、後ろの光景を服の前面に映し出す。今やっている007で、この技術を使った透明ボンド・カーが登場して、Qのジョン・クリースが“英国科学の技術の結晶”とか自画自賛していた(透明車の後ろを彼が歩くシーンが一瞬、シリィ・ウォークに見えるという楽屋オチギャグあり)が、日本の研究だったんじゃ ないか。

 今日は一日、原稿書きだけ。何か久しぶりのような気がする。能登から帰ってからこっち、本当にイベント続き、出仕事続きであった。モノマガジン原稿、ワリワリと書き続ける。伊丹十三のスパゲッティの茹で方の文章について。高校生のころから、この文章を読み返すたびにスパゲッティを食べたくなって弱ったものだが、今回も覿面に食欲が刺激され(まあ、朝が朝だったこともある)、1時半に原稿完成させて編集部にメールしたあと、台所の棚を引っかき回して2年くらい前に買ったタリアテーレ(平べったい、きしめんみたいなスパゲッティ)を見つけ、茹でて、茹で上がったら急いでお湯を切り、そこにバターを放り込んでかき回す。伊丹十三ご推薦の、スパゲッティ・アル・ブーロ(バタースパゲッティ)、要はスパゲッティのもりそばである。パルミジャーノ・チーズはたまたま買ってあったので、おろしてたっぷりとかけ て食す。

 郵便局に行き、古書代金振り込み数点。銀行にも行き、別件振り込み一つ。それから東武デパート地下で食料品買い込み。ヘアカットも行きたい、古書店めぐりもしたい、映画も観なきゃいかんものがたくさん、しかしいずれも時間なし。時間がない時間がないと嘆きつつ、いざ、時間が出来ると今度は急に不安になるのがフリー職業人というものかもしれない。

 帰宅して、Web現代原稿にかかる。今回は引用文とかがなく、一から11枚分の原稿をカリカリ書いて仕上げるが、まずまずはかどった方。2時間チョイで11枚、書き上げてメール。先日の寺山修司関連インタビュー記事がアガってきていたので、それにざっと目を通す。電話数件、以前つとめていたところを退社して音信不通だった人からひさしぶりに挨拶電話があったり、前の本が詰まって、こっちの件がとどこ おっていたのがやっと動き出したり。春近し、といった感あり。

 外は小雨。気圧の関係か、肩が張ってきた。苦しいという感じではないが、久しぶり(今年に入ってからは初めてか)にマッサージやってもらおう、と5時45分、家を出て、タクシーで新宿へ。受付の女の子が変わっていたが、差し出したオロナミンCを何も言わずに受け取ったところを見ると、申し継ぎが出来ていたのか。サウナに中国人の二人連れが入っていた。見ていると、スリッパを履いたまま浴室に入ってきて、シャワーをバンバン使う。それも立ったままである。中国も広いから、どこの地方の習慣か知らないが、あらゆる蛇口を開けっ放しにして水をじゃぶじゃぶ流し続けているのは、よほど水の豊富な地方なのではないかと思った。カルチャー・ギャップを目の当たりに出来た感じでオモシロイ。椅子があっても使わず、立ったまま全身をすみずみまでシャワーで洗う。シャンプーを大量に使って、足下一面を泡で真っ白なまでにし、そこで初めてスリッパを脱いで、足を床にこすりつけるようにして、泡で足の裏を洗う。合理的なんだかそうでないんだか、よくわからない。郷に入っては、 というような思想はあちらにはないらしい。

 体重を家庭用でない体重計で久しぶりに測る。能登旅行もあったし、さぞ増えているだろうとビクビクしていたが、なんと逆に減って(1キロ程度だが)いた。魚中心のヘルシーなものばかりだったからだろうか。朝の豆食が効いているのかな。揉んでもらっている最中、二度ほどオチる。やはり疲れは溜まっている。左肩がちょっとこれまでとは違う凝り方だから、と、先生、肩と腰に数カ所、針を打ってくれた。腰のあたりが腫れているように痛い。最初にここのマッサージに通いはじめたときが、こんな感じだった。通っているうちにその腫れが取れたのである。正月以来のハードスケジュールで、また腫れが出たか。私の腰は、右左の足の長さが違うので、普通に歩 いているだけでねじれるのである。

 1時間15分、揉んでもらって8時半帰宅、夕食の準備。カツオの刺身、鶏胸肉の蒸し焼き、こはだの粟漬け。ごはんはじゃこ飯にし、金沢丸一のお婆ちゃんから送られたヌカミソ漬けの酸っぱくなったナスやキュウリを、細かく切って水にさらし、よく絞って生姜の千切りとまぜ合わせてかくやのこうこ。これが絶品。思えばうちの婆さんもこのかくやが好きだったな。たくあんでもよく作っていた。今度、久しぶりにやってみよう。

 DVDで『サインはV』、やっと、という感じでジュン・サンダース死す。意外であったが、病魔に冒されてからはジュンはついに一回も試合に出られない。記憶では骨肉腫で片腕を失い、片腕のままX攻撃をするシーンがあったように(K子も)思っていたのだが。アレは漫画版か? それと平行して日本リーグ開幕あり、もういっぱいいっぱいにストーリィが進行。鳴り物入りで登場した泉洋子はただのやられキャラに落ちてしまった。ジュンの母を捜す新聞記者に勝部演之。ウルトラQのラゴンの回に漁師役で出ている。三島由紀夫が絶賛したという役者で、私のお気に入りはTBS『関ヶ原』の吉川広家。本家の毛利に命ぜられて西側につくが、徳川方と内通し、石田三成からの催促にもまったく陣を動かさず、ここで敵の後ろをつけば勝てる、という部下の進言も却下して、“わしが徳川ば勝たせちゃるんじゃ”とうそぶく策謀家の広家像が印象的だった。しかし、この『サインはV』の記者は、ジュンに自分の病気を気付かせるきっかけを作ったり、その罪滅ぼしでジュンの母親を捜して、やっと消息がわかったぞ、アメリカにいるんだ、と言ってユミを喜ばせるが、調べたらもう二 年前に交通事故で死んでいたとか(詰めが甘い!)、全くいいところがない。

 酒は同じく金沢丸一から送られた金粉入りの『祝酒』、それにメローコヅル。かなりすすんでしまい、酔っぱらう。勝部演之の広家を見ようとして『関ヶ原』のビデオ三巻目(『男たちの祭』)を見るが、彼が出る前に眠くなってしまい途中放棄。1時 ころ就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa