6日
木曜日
内装、内装、内装の話はあのねのね
うちのインテリアの件は絶対秘密にね。朝7時55分起床。このところ夢頻繁。今朝の夢は帝国ホテルの前でK子と待ち合わせていたら、知った顔に出会うというものだった。山本竜二で、さすが役者らしく、草色のしゃれたスーツを着て、女性とデートしているが、女性の方は私に顔を見られたのをやたら恥ずかしがり、“竜二さんとデートしているなんて知られたら、スカトロだと思われちゃう”と言って愚図っている、というもの。よくまあ、こういろんなシチュエーションが出てくるものである。
朝食、ロールパンを使ったホットドッグ2ケ。ソーセージと、粒マスタード&カレー粉で味をつけたキャベツ炒めをはさむ。この、ホットドッグにカレー味の炒めキャベツを使う、というのは、だれだったかのハードボイルド・ミステリで主人公が作っていたのを読んで、うまそうだったのでやってみて以来、私の定番になった。ミステリで覚えた料理を持ち技にしている男性というのはかなり多いだろう。『このミステ リがうまい!』という本を出せばどうか。
午前中は雑用で過ぎる。Web現代のネタをどうしよう、と頭をひねっていたら、ライターの野沢義範くんから電話。新宿松竹ピカデリーのところのビデオショップが今月一杯で閉店だとかで、50パーセントオフのセールやってますよ、と言う。あそこのビデオショップは一時は新宿一の品揃えがあったところでもあったが、最近ビデオショップが乱立気味でもあり、姿を消すか、とちょっと感慨あり。しかし、それで今回のネタが拾えた。お礼を言って、すぐ家を飛び出し、タクシーで新宿へ。
なるほど野沢くんの言った通り、マニアたちが先を争ってという感じで買いあさっている。ついこないだ出たばかりの『帰ってきたウルトラマン』のボックスまで半額である。くやしいことに、『サインはV』も半額である。古アニメのDVDをこの際と思ったが、大体はもう買いあさられてしまった後であった。片岡千恵蔵の児雷也もの『妖蛇の魔殿』はじめ東映時代劇を数本、大映ビデオの怪談ものでまだ買っていなかったものを数本、それから『東京裁判』2巻揃い、DVDではスタン・リーインタビュー集など数枚……と、“あくまでも取材、取材”と自分に言い聞かせながら押さ え気味に買う。紙袋二つ。
西口中二階でザルパイコーを啜り込んで、1時半、帰宅。そこから3時までの1時間半で、今のをネタに、Web現代11枚、だだっと書き上げる。メールして、また外出、新橋へ。前回のWeb現代のネタが新橋ガード下の立ち飲み屋だったので、そこの写真撮影である。車中、『週刊新潮』を読む。一般誌中、もっともオジサン臭の強いひねくれ雑誌だが、それだけに企画の意地悪さは群を抜いている。今回は霞ヶ関の各官庁内の書店の棚にどんなH雑誌があるか取材する、という企画が実に小姑ぽい意地悪でいい。防衛庁の雑誌コーナーに『突撃! 遊撃隊』があるのがサスガ、などという皮肉はちといただけないが。『CAN!』の見出し“アジアの娘にハマってしまった僕たち”は中東までを活動範囲とする自衛隊としていかがなものか、などというのもな。農水省では『金魚が踊るM字女性器』(芸能ニッポン)、『人妻熟れ濡れ秘唇潮吹きチェック』(内外実話)が“いかにも水産行政の府らし”いのだそうだ。文科省では『中生出しOK!』(別冊ブブカEX)と“少子化に憂慮の念”。面白いのは財務省で、さすがと言うべきか、エロ雑誌はほとんど無くて、『パチスロ攻略の裏』『パチスロ攻略マガジン』『パチンコフィーバー』『パチスロ必勝ガイド』『パチスロ王国』『パチスロ大攻略』『スロッター王国』『パチスロ解析マニア』『パチスロコミック』『パチスロ必勝本』『コミックパチスロ7』など、攻略もの雑誌だらけだったという。確かにこの品揃えは普通の書店としても異常。で、オチは国会の雑誌コーナーにあった『ごっつ裏』の“やってはいけない不謹慎な世界”、これこそ国家中枢の光景、と皮肉っている。私としてはその棚に並んでいた『ゴルゴ13シリーズ』が興味深かった。代議士の皆さんは、自分たちをゴルゴに擬して読んでいるので あろうか、それともやられる政治家とかの方に?
新橋駅・烏森口で編集のYくんを待っていたら、“カラサワさん”と声をかけられる。見ると、元・立川企画のM社長。悪相は変わらず、といった感じだが、“お元気ですか?”と腰低く話しかけられたので、こっちもオトナの対応。“最近、公演とかに入ってます? と言うので、“家元のにはちょっと足を向けてないんですが、一門のにはちょくちょく”などと無難な話を。このM氏、会うと必ず小野ひとみのことを訊く。かなり実力は認めているらしい。CDとか出すそうです、と言っておく。
別れてYくんと、撮影。呆れたことに、原稿で名前を出した店は消滅していた。まあ、ちょっと書き換えれば済むことだが。後に入った店の写真を撮って、数分で終わる。カスみたいな作業になって、Yくんには申し訳なかった。新宿まで山手線で戻る途中、新橋で人身事故があったためというアナウンスで少し停車。脇の席のカップルの女性が“自殺の処理って手首とか拾うんだよ”と言って彼氏が気味悪がっていた。
時間があったので少し新宿の喫茶店で休む。曾野綾子『夜明けの新聞の匂い』など読んだり。6時、小田急線改札でK子と待ち合わせ、急行で町田まで。『虎の子』のジャイアンさんご推薦の焼肉店ツアー。町田は『八起』のある相模大野の一駅手前である。焼肉線か。町田駅前でキミさん、ジャイアンさんと落ち合って、住宅街にある焼肉屋『明花(ミョンファ)』へ。本当に、通りを離れた、住宅街に目立たずポツンとある店なのだが、町田では知る人ぞ知るといった焼肉屋さんらしい。おじさんおばさんの夫婦二人でやっているみせだが、近くの家族連れやカップルでかなりにぎわっている。すじ肉の煮込みで乾杯、この煮込みの味が大根にからんで素晴らしく、これ から先に期待感がふくらむ。
塩だれで揉んだタン、豚とろ、テッチャン(ホルモン)、ミノ、レバなどにカルビとハラミ。タンが佳品、さらにキミさんが焼き方奉行となったホルモンが絶品。いい素材が入ったときは塩ホルモンやレバ刺しもあるというが、ちょっとでも不満があると、全部タレ、焼きレバにしてしまうという。木曜日だと生で食べられるレバが入ると言うので、キミさんは6月(冷麺が始まる)の木曜に店を休んで来よう、と言う。私はユッケの味に感動。肉というものから雑な要素を取り除いた末に、純粋なそれをタレが一艘際だたせている。そして、ジャイアンさん最大のお勧めが葱ミソ。韓国ミソに刻んだ葱がからめてあるだけなのだが、これがムチャクチャにウマイ。思わずご飯を頼んで、そのミソで食う。鼻息が荒くなる。ね、ウマイでしょう? と言うジャイアンさんの口調や表情は誰かに似ていると思ったら、北野誠であると気付く。ハーレーのマニアで、一ヶ月前にデカいハーレーを買って、さすがに日用では使えないので、すぐ小さいハーレーを買ったとか。
店のおじさん、町田は神奈川の陸軍士官学校など、軍事施設関係の窓口として栄えた街であることなど解説してくれる。天皇陛下が士官学校の卒業式に、この町田駅で降りられた話とか。私の顔を見て、“あれ、テレビによく出ている人じゃない?”と言う。キミさんもジャイアンもそうだそうだと言って、いつの間にか“よく出ている人”にされてしまう(あ、そう言えば『ウッチャきナンチャき』は結局二回出ただけで最終回になってしまった。当然と言えば当然の内容だったと思うが)。話がはずんで、結局真露の小瓶、追加々々で五本あけた。まことにおいしい酒で、肉に合ったがそれにしても飲み過ぎ。帰りの電車の中はほとんど寝て過ごす。