2日
日曜日
修道院、修道院、たちまちあふれる神秘のちから〜
子門真人の声で読む(歌う)こと。朝、何回か目覚めたりまた寝たりを繰り返す。レトロチックな夢を見た。70年代テイストで、どこか港町の運河沿いを、まだ若い倍賞美津子みたいな顔の歌手が、裾の広がったジーパン姿で歌いながら歩く。歌うのはもちろんフォークソングだ。ときどき色が飛んだ感じになるのも、レトロ。ちなみに私は70年代になった頃、70年代が嫌いで嫌いで仕方がなかった。忘れもしない1970年11月25日、なをきが盲腸で入院した病院のロビーで月刊少年マガジンを読んでいた小学校5年生の私は、その誌上で、赤塚不二夫の、妙に“時代に迎合したような”ギャグ漫画『鬼警部』、池上遼一の、妙に“現代的に屈折した”ヒーローもの『スパイダーマン』を読んで、
「ああ、60年代はよかったなあ」
とため息をついたものだった。笑いも、正義も、単純さを失い、混沌の中に溶け込んでパワーを失ってしまう、そんな時代がやってきたことを、12歳にして早くも悟り、これからは懐古の中に生きていくんだな、自分は、とぼんやり考えていたものであった。そのとき、二階の病室から降りてきた母が、一緒に帰りましょう、一人だと怖いわ、と言った。その病院は私たちの家から歩いて三分の場所だったのだから、いくら夜道だって怖いことはないよと言うと、母は眉をひそめて、
「だって、テレビのニュースを見てごらんなさい。三島由紀夫が割腹自殺したのよ」
と答えた。……うちの弟と三島由紀夫は、同じ日に腹を切ったのであった。自分でというのと、第三者によって、という違いはあったが。
朝食、おなじみ豆のサラダ。果物は昨日花菜で貰ったミカン。産経新聞文芸時評欄に載っていた作家・井伊直行氏の写真がダイエットした岡田斗司夫氏ソックリで、一瞬“うわ、岡田さんもうここまで”と思った。読売新聞書評欄大原まり子氏、やはり主語使いカラッ下手。二回読み返してやっと意味が通じた。私に読解力がないため、 ではないと思うんだが。
Web現代原稿用の取材のため、渋谷駅まで歩く。コギャル撮影のメッカであるハチ公口交差点、撮影クルーが3組もいた。井の頭線改札近くのベルギーワッフルの店で青汁を飲む。以前はここは青汁専門スタンドだったが、5年くらい前にワッフル店に吸収された。とはいえ、青汁の味は当時のままの、軟弱になっていないストロングスタイル。さしもの私も一息に飲み干すのは躊躇するほど。帰宅ついでに東武地下で買い物。最近、本と食材しか買い物をしていない。
原稿書きだし、3時半に11枚、書き上げる。しかし読み返すとどうも構成が弱い気がする。前半を大幅にカットし、4時半に再書き上げしてメール。首尾は整ったものになったと思う。ふと気がつくと、昼飯を食い損ねていた。外に出て、東急本店まで行き、夕食用の食材を買い込む。
特撮ライターの萩野友大さんから恵贈を受けた双葉社『帰ってきたウルトラマン大全』を読む。力強い帰りマン賛辞と、冷静に脚本の構成や演出を批評するそのバランスが見事な一書。当時の新聞や雑誌での関連記事、またその時代の音楽状況などを記して、作品が作られた“時代”の雰囲気をとらえようとしている工夫が大変いい。われわれロートルオタクが本当に語り残さねばならないのはこの“時代の雰囲気”というやつだろう。こればかりは体験した人間でないと語れない。以前お酒の席をご一緒させていただいた富田義治監督のインタビューが載っていて懐かしかったが、しかし一番笑ったのが石堂淑朗。不良老人そのまま、というか。
「(ザニカについて)僕カニ座だからね。カニって毛が生えてていかにもスケベったらしいんだよ。カニ座って嫌だなあと思ってたのがまずあるんだよね」
なんてコメント、なんの説明でもなければ意味もない。
「『E.T.』のときに吉本隆明までがいい映画だって言って、みんなが感動したっていうけどね、俺はなんであんなインチキなイメージ作って何喜んでやがるんだって思ったね。俺、宇宙人嫌いなんだよ。なんの具体性もなくてね。そんなのいるわけないのに。だから宇宙人が好きな奴が嫌いなんだ。宇宙人大嫌いだというか憎んでるん だね」
もう、最高。自分の作品見ている連中を大嫌いだと言い切っちゃうんだから。
缶コーヒー飲みながら、『Memo・男の部屋』原稿書く。8時半までかかって、どうやら4枚アゲ。執筆所要時間2時間。案外手間くってしまった。内容盛り込みすぎで削るのに四苦八苦したため。それから料理にかかる。本日はポルトガル風豚肉とアサリのトマトソース煮込み。塩胡椒し、白ワイン(切れていたので、日本酒に少しトカイワインを混ぜて用いる)とパプリカにつけておいた豚肉を、ニンニク・タマネギと一緒にオリーブオイルで炒め、アサリを殻ごと投入。口が開いたところでトマトソースで味をつけ、蓋をしてしばらく蒸し煮にする。本当はコリアンダーを風味付けに使うのだが、K子が嫌いなので仕上げにパセリのみじん切りを。トマトソースをごく少量にしたところがK子のお気に召した模様。それとガーリックライス、ソーセージのボイル。
DVDで『サインはV』、やっと全日本大会。高視聴率をとっていた番組独特の高揚感が画面からストレートにつたわってくる。実況アナウンサー役はおなじみ羽佐間道夫だが、解説者役がお茶の水博士・勝田久。生でこの二人の顔が並ぶとは。羽佐間道夫のアナウンサー口調が、見事に60年代の放送局調で、うまいなあ、と思っていたが、調べてみたらこのヒト、実兄がNHKの本職スポーツアナウンサー、羽佐間正雄だったのであった。2話だけ見て、その後同じくDVDで『新・八犬伝』。たった三話の収録だが、とにかくもう一度、あの映像が見られるというだけで涙、涙。玉梓の怨霊は第一回から出ていたのだね。もったいないのでこれも一回分だけにする。缶ビール小一本、日本酒お椀に三杯。あまり飲まなかった。