裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

木曜日

月に代わって箸置きよ!

 ご家庭でできるダジャレシリーズ(食卓で箸置きを手にとり、かざしながら言ってみましょう)。朝7時半起き。朝食、胚芽パンとヨーグルト。ヨーグルトはイチジクが切れたので、ラズベリーを使ったが、酸っぱくて酸っぱくて放棄。ジャム用だったか。トーベ・ヤンソン女史死去。こういう顔でしたか。この人、あくまで本業はマンガ家及び挿絵画家で、小説は自分の挿絵に添える形で書いたものだったとか。

 ハローミュージック(トラッシュフェスの企画会社)から電話。どうも企画書の形式とかそういう段階でぐちゃぐちゃしているので、打ち合わせをどんどん進めるべく進言。体調不良はやはり風邪のせいらしい。腕のつけねに小さなグリグリが出来、これがちょっと痛む。体力のみはあるので、それで風邪の症状が外に出られず、引きこもっちゃっているのであろう。12時、どどいつ文庫伊藤氏来。注文していた19世紀医学写真集など受け取る。スピロヘータや淋菌などのデザインのネクタイ、下着などを販売しているアメリカのHPに問い合わせの書き込みをしたら、速攻で“日本の販売代理人にならないか”と誘いが来たそうである。その業者の娘が、Xジャパンのヨシキのアメリカでのレコーディングコンサルタントをやっているんだとか。で、親父がスピロヘータパンツ売りかい。

 太田出版用の原稿、これも尻に火がついているのでやり出す。いろいろ調べねばならぬ資料があるのでめんどくさい。昼は新宿に出る。銀行で家賃を引き出したり、いろいろ手続き。しかし、最近の東京三菱の手続きの機械化進行には驚く。昼飯は京王線駅の立ち食いカレーですます。受け付けに注文を言うと、置くの調理場にマイクでそれを伝えるのだが、その口調が“タ・マゴデス”“カラーゲデス”と、奇妙キテレツな発音。同じことばかり何百回も言わせると、そうなっちゃうのだろうか。最近のJRの車内放送は非常に聞き取りやすく、国鉄時代の“ツーギャー、ウイノー”的な変な節回しがなくなった。民営化の功績だと思う。

 太田出版書き続け。なかなか枚数がいかないが、かえって文を綴ることの楽しさはこういうときに味わえるような気がする。とはいえ不捗、結局未完成のまま、8時に四谷荒木町まさ吉。井上デザインに頼まれた資料用のビデオを持っていく。乗ったタクシーの運ちゃんが、もう60格好の爺さんだったが、顔も笑い方もしゃべり方も、立川談生ソックリ。思わず名前を見て、小田桐でないかどうか確かめたほどだった。
「アタシ、こないだまで池袋のアパートに住んでたんですがね、隣の部屋のヤツがキチガイでね、よくアタシの部屋に怒鳴り込んできて、なんかわけのわからないことをわめきちらすんですよ。アタシも声が大きい方だから、そいつとしょっちゅうケンカしてたんですがね、こないだ埼玉の公団が当たったんで、そっちに引っ越して、あいた部屋に同じ会社のヤツが入ったんですわ。そしたら入った翌日、そのキチガイに刺されちゃった。たぶん、キチガイのことだから、隣の住人の顔がいきなり変わったんで、パニックしたんじゃないですかね、イヒヒヒ。まあ、アタシもさんざそのキチガイからかって楽しんでたから、そいつもかなり溜まってたんでしょうねえ」
 などと、話す内容まで談生チック。

 まさ吉に入ったとたん、井上くんに“疲れた顔ですね”と言われる。やはりかなり顔に出てるか。生ジョッキ2ハイ、ウリキムチや牛すじ煮で。ひさしぶりに納豆揚げも食べる。こないだのパーティの話や、共通の知人のワルクチなどで盛り上がる。家関係の法律に彼、やたら詳しい。聞いたら以前、それで裁判したことがあるらしい。日本酒冷やが入った段階でもう、目をあけていられなくなり、早々に引き上げる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa