裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

日曜日

ニグロのさんま

 黒んぼさんなのにさんまが好物たぁ、粋だねえ(精進落としで少しヘビーなシャレにしてみました)。朝7時半起床。朝食、レトルトのチリコンカン、オレンジ。母に電話。案の定、日曜で一人ぼっちで寂しがっている。一昨日の、K子が追い返した客が、怒って電話をかけてきたとか。ちょっとイカレてる女性(霊感などあるらしい)で、ウチの薬局の客だという。自分は身内のつもりでかけつけたのにすげなくされたとK子にフンガイしているというから、何ョ言ってやがんだ、とこっちが怒る。勝手に身内意識などもたれてもいい迷惑だ。どんなエチケットの本を読んだって、葬儀の終わったその日に喪家にのこのこ顔を出すなどということが失礼に当たるのが常識以前のことであることは書いてある。第一、霊感があるなら新聞で訃報など見ないで、霊感で前もって当てろ、と思う。私のケンマクに母も呆れて笑っていた。

 仕事机の前に座るが、日記つけた以外はボーッとして過ごす。どうも、まだ本調子とはいかないようだ。先日の円谷英二追想のゲラ、留守中が〆切だったんであちゃあと思ったが、ライター兼編集のNくんからFAXあり、なをきさんと俊一さんのところはデザイナーさんを待たせているのでまだ間に合いますとのこと、手を入れて送り返す。向こうの機械の調子悪くてなかなか送れず、電話数回やりとり。あきらめたころ、何とか調子回復。

 あと、『大きなポケット』最終回は見事に向こうの編集部の好むような出来だったらしく、“終わらせるのは惜しい”という声もあったそうな。こういうのはアリガチかもしれない。別れる前の名残りにやったSEXで絶頂に達してしまった男女のようなもんであろう。昼は新宿へ出て、歩行者天国の混雑の中、アカシアでロールキャベツシチューとオイル焼きの定食。ここで昼飯を食べるのはならしで二ヶ月に一度というところか。それくらいの頻度だと、他のものを食べようという気持よりも、おなじみのロールキャベツにしよう、という気持の方が強く働く。だいたい、客の8割以上がロールキャベツを頼むそうだ。何かの雑誌で読んだ記憶で書くが、今の主人は、自分の代になってから開発したメニューであるビーフシチューが一番のお勧めと思っているのだが、やはりロールキャベツばかりが出る状況に苦笑しているという。モノカキにも、そろそろ別の分野のものをやりたいと思っているのに、定評のある分野の仕事ばかりがエンエンと来続けるという、アカシア的人間が多いことだろう。

 伊勢丹で買い物して帰る。湿気ひどく、倒れ込むようにして少し寝る。ネコが最近はこっちが寝ると寄って来て、頭突きをくらわせたり、体をコスリつけたりしてきて甘える。若いうちに子宮を取ると、いつまでも子猫のまま、というのはホントだな。夕方4時過ぎになって、急に仕事する気になって、バリバリとやりだす。雨が降り出して、逆に気圧が安定したのだろう。我ながら現金な体質である。週刊アスキー最終回原稿5枚弱と、SFマガジン9枚。SFマガジンの方、書いている最中にDちゃんから様子見の電話くる。7時半までにアゲて、メールできた。調子が戻ったか。それから夕飯作りにかかる。

 夕飯はキャベツと鮭缶のかやき、小ハマグリの酒バター蒸し、イモとタコの煮物。それと茶豆を茹でて。ビールがうまい! ビデオで、前回収録分のコンテンツ・ファンドを見る。西山さんや鈴木さんに比べてわがしゃべりの落ち着かないこと。岡田さんに比べてもダラダラしている。内容はいいこと言っているつもりなんだが、トークライブでのしゃべりとテレビ向けのしゃべりをきちんと使いわけていないのが原因だろう。それでも、最後に何かいいことを言っているような印象のみ残るところがまだ救いか。

 9時過ぎ、母から電話。なをきがさっき電話してくれて、うれしくて泣いてしまったとのこと。K子がお客さんを怒らせた話をしたら、なをき、“あの人は唐沢ウメ子の血筋だからねえ”と言ったそうだ。ウメ子というのは女傑で有名だったうちの婆さん。確かに怒ったときのK子は、あの婆さんの血をホントにひいているんじゃないかという言動をとる。私は両親が共働きで、この婆さんと一緒にいることの方がどちらかというと多かったが、K子と結婚したというのも、ひょっとして意識下に、この婆さんの面影を見ていたからではないか、と思うといささかオソロしい。

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