裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

金曜日

ロボトミ秀吉

 二度と朝鮮征伐など出来ないように手術だ。朝7時半起床。朝食、バタロールにカキフライをはさんだもの。イチゴ数粒。イチゴはトチオトメだが、イチゴっぽくないサクサクした歯触り。ただし甘味は大したもの。KSD事件関連の見出しを目にするたびに、SKDを連想して、ダンサー逮捕か、などと思ってしまう。先日の守容疑者は裏モノのやがもんさんにウリふたつというくらいソックリだったが、今回の小山議員というのはまた、と学会の風来末さんにモロ、相似形である。

 Web現代原稿を書きはじめる。週刊のあわただしさよ。今回はちょっとヤバ目のネタかもしれない。母から電話あり。日曜に上京する豪貴とのメシのこと。ちょっと話して切ったが、その直後また電話があり、“長男なんだからおまえがおごりなさいよ”などと、細かい指示を出す。ここらあたり、変わっていない。K子に“おれたちがおごるんだって”と話したら、
「甘やかすんじゃなーい!」
 と一蹴。

 昼飯に、昨日見た『ホテルスプレンディッド』の影響でイタリア料理が食べたくなり、急遽スパゲッティを茹で、トマトソースで煮た肉と和えて、即席イタリア風料理を作る。即席のインチキイタリアンであるが、食べたいと思ったときに食べたいものが食えることで感じられるうまさというものもある。

 2時、時間割で村崎百郎氏と『ウルトラグラフィックス』対談。年末からこっちにかけての猟奇犯罪の数の多さに、ちょっとまとめるのが追っつかない。世田谷一家残殺の被害者というのは東大出だそうだが、なにかスカトロ男優のような顔をしているという話になる。村崎さんウレシそうに、
「そう言えば、公文式(被害者一家がその塾をやっていた)というのはコウモン式と読めないか」
 よくこういうことを考えつくものである。

 4時半、写真撮影終えて家に帰る。Web現代残りを仕上げて、なんとかまとまりをつけ、メール。出来はともかくも、書きながらの満足感はある原稿だった。急いで中野に向かう。タクシーで新宿まで出て、あと中央線で、と思ったが、金曜日で交通が混雑を極め、少し神経痛める。それでもなんとか、開演には間に合った。一応、今年最初に足を運ぶ公演なので、ご祝儀のお酒と、前座さん三人にお年玉(形だけだけど)。受付のブラ汁、手にケガをしていたので、“おっ、一家残殺犯人!”とお約束の突っ込み。みんなに言われているだろうと思っても、こういう決まりは一応済ませておかないと気分が落ち着かない。

 ブラ談次の開口一番(近日息子)のマトモさに、K子が世にもツマラナサソウな顔をしていた。その後が元気いいぞう。浅草にくらべればだいぶオトナシイ舞台だったが、その方が客はコボレずに笑ってくれる。その昔、超放送禁止落語会で、まだ田村真一郎だった彼を見たときは、文字通り天才だ、と思ったものである。その後、ホントウに天才らしく、われわれの理解を軽く超える芸風に突っ走ってしまった。こないだの浅草で、ついにその芸がぐるりひと回りしてコッチに帰ってきた、と、ヨロコビに打ちふるえたものである。

 次が山本竜二。毎度々々のすさまじいまでの変態ビデオばなし。去年、いきなり電話がかかってきて、“センセ、今度ね、ボク、アロマ企画でホモ盗撮もの撮ったんですワ。宣伝したいんで、センセの御存じのホモ雑誌、紹介してくれませんか”と言ってきたので、K子の映画のときに取材してくれたところなどを紹介したが、それきりになってしまった。どうしたのかと思っていたら、その件に関するオソロシイ内幕ばなしも話してくれる。森総理みたいなのと横山ノックみたいなののヘビーなカラミが撮れたんだそうだが……。

 中入りはさんで、松元ヒロと快楽亭。この二人がマトモに見えるのだから、いかに凄い会であったかがわかろうというもの。松元ヒロ、ニュースペーパーにいたときはこのヘンさが際立たなかった。確か鈴木邦男さんがゲスト出演していたときに招待されて松村克弥監督などと下北スズナリでの公演を見にいったことがある。そのときもヒロさんが一番印象的ではあったが、ああいう、かっちり作る舞台は変な個性の人はダメである。ネタ的にはベタなものなんだが、この人がやると妙におかしいというのが不思議。。快楽亭は芸術祭受賞式後初めての高座で『イメクラ五人回し』。

 楽屋に挨拶に行き、アロマの社長、それから鶴岡に紹介され、いま警察に目をつけられているという某・元ロリコン写真集出版者の人と名刺交換。アロマの社員の人でUA!ライブラリーまで買っているという、私のファンの人がいた。なんか、妙にウレシイ。中野のちゃんこ屋で、談之助さんなども加わり、打ち上げ。竜二さんに、盗撮ビデオの顛末など聞く。開田裕治さんは〆切をやっとアゲて駆け付けたそうで、二日間で五時間しか寝てない、と言ってモーローとしていた。このちゃんこ屋はもと二子山部屋の力士だった主人がやっている店で、その当時の写真も飾ってあるが、力士というよりはプロレスになった方がいいような美男のソップ型。声はのど輪の稽古でツブれた、お相撲さん声。ビール瓶の口ををコップの中にワッと突っ込む注ぎ方が名物で、これは相撲部屋での注ぎ方なんだそうだ。三木助の死の真相なども聞く。なるほど、と納得できる理由。12時、解散。談之助さんとタクシー乗り合いで帰る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa