裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

土曜日

お水は答えを知っている

「ありがとうとかいくら言っても、金を出さなきゃ相手にしてくんないよ」

※検診 札幌行き

朝7時起床。
急いでシャワー浴び、旅支度済ませる。
昨日の日記など書いてアップ。

8時15分、家を出て病院。
予約入れているというのは気分よく、待たずに診察。
数値も大変結構とK先生。
心臓の大きさがほぼ正常なくらいに戻り、
血糖値、尿酸値など入院時えらいことになっていたものも
改善されているとのこと。
退院してから、外食を控えるくらいで、あとはほとんど
健康に留意していないのにこうよくなるのは、やはり薬のおかげ
だろうか。K先生も効くとなると薬を増やすのに躊躇ない
先生で、また一種類、ミリ数が増やされる。
9月のカテーテル検査入院は10月に延ばしてもらう。
9月は一ヶ月公演と、本二冊の書き下ろしがある。

一階ロビーに併設されているナチュラルローソンでエッグマフィンと
牛乳、果物を買い、そこの喫茶コーナーで朝食代わり。
食べ終って調剤してもらい(今日は自費なので2万以上! もっとも次回、
新しい保険証と領収書を持っていくと差額を返してくれる)
タクシーで中野駅、そこから中央線、山手線乗り換えで
浜松町。モノレールで羽田。

札幌のでんたるさんにどうです、と誘われての札幌飲み会。
このところちょっとオーバーワーク気味だったので、
ちょいと仕事の息抜き兼ねて一泊旅行。宿など全てでんたるさんが
手配してくださったのである。
ちょいとしたオダンつきの小旅行気分。

羽田のラウンジで少し時間つぶし。
薬のむのに腹に何か入れないと、と、と思い、ラーメン香月の
塩ラーメンを食べる。立ち食いラーメンなりの味であるが、
私は同じ空港内にある『味の時計台』(こっちはちゃんと座って
食べる)より、この香月の立ち食いラーメンの方が好み。

で、薬のんだら薬効あらたか、飛行機に乗り込む前にちゃんと
トイレに行ったにもかかわらず、機内で席を確認してすぐトイレに
かけこみ、さらに出発前にもう一回、着陸寸前にもう一回、
トイレにあわててかけこむ騒ぎ。

札幌着、8月も後半ではあるが空あくまで高く青く、太陽はジリジリ
と強い日差しを降り注ぐが湿気なくさわやか。
スカイライナーの窓から外を眺め、改めて夏の北海道、値千金と
いう感を新たにする。

札幌着、東急裏のホテルR&Bに投宿。
でんたるさんにメールして、ふう、と一時間ほど仮眠取る。
6時、出て地下鉄ですすきの。
改札ででんたるさんと、でんたるさんの医院の女の子2人と
待ち合わせ、羅臼料理『はちきょう』にてカンパイ。
最近テレビ等で紹介され、人気のこの店、でんたるさんをしても
6時半から7時45分まで、という中途半端な時間しか押さえられ
なかったというにぎわいぶりである。

店員さんが全員坊主頭、というのがまた凄いし、名物の“つっこ飯”
(ごはんの上にエイサ、エイサという掛け声と共に嫌というほど
イクラを乗っけてくれる)も評判通りのボリュームだが、
秘かに感心したのが、どんな料理にも、ここの店ならではの
一工夫がしてあること。

北海道というのは魚介類も野菜もおいしいところだが、
素材の良さに頼り切るせいか、“どこで食べても同じ”というくらい
地域々々での個性に乏しい(これは北海道出身の作家とか文化人にも
なぜか当てはまる)。早い話がオホーツク沿岸の街の“名物”を見ると、
ずらりとどこの街も“ホタテ”“ウニ”“ホッケ”“イクラ”で
あり、他にないのか、と言いたくなるくらい区別がつかない。

ここの店も素材は他と同じなのだが、まず食べ方が違う。
まず、醤油が3種類(昆布だし醤油、青唐辛子醤油、タマネギ醤油)と
揃っており、刺身などを食べ分けることが出来る。
さらに刺身にはワサビに並んでホースラディッシュが添えられ、
加えて漁師の食べ方でワサビでなく唐辛子で食べるやり方も教えてくれる。
また、じゃがバタのバタはたらこバタであり、それにさらにチーズが
乗り、サーモンの北海漬けを和えて食べる工夫がしてある。
しまほっけの塩焼きは“皮がパリパリですので、ぜひ皮までお召し上がり
ください”とサジェスチョンしてくれるし、ジンギスカンは普通の
タレでなく塩で食べる。さらにキンメダイの“ゆに”。
湯煮である、と了解するのに一瞬かかった。こちらで言うところの
酒蒸しであるが、目の前で骨をブツブツと切ってくれて、よく骨髄の
コンドロイチンが溶けだすようにしてくれ、最後にそのスープを
お飲みくださいとスプーンをつけてくれる。

……素材はどこの店でも努力する。店員の坊主頭とか、漁師町風の
飾り付けとか、つっこ飯のエイサエイサはそれこそ二の次である。
まず、料理にひと工夫、ひと手間がある。
ここの店、いま札幌でなかなか予約がとれない店のトップクラス
だそうだが、それだけの繁盛もむべなるかなと思った。
居酒屋だけの話ではない。

女の子たちとの話もはずむ。一人はUFOの大ファンで、ぜひ
矢追純一さんのサインが欲しい、とか言っていた。
そこで女の子たちとは別れ、ボブさんと合流して、先日もハッシー
たちと行ったバー『バード』。またカルバドスの50年ものご馳走に
なり、巨峰のブランデーかけ、ドラゴンフルーツ、イチジクとチーズ
など。ギネスをたのんでみた。

そこで飲んだあと、今度はボブさん行きつけのワインバーへ。
「カラサワさんはどんなワインが好きですか」
と言われたので、スペインワインが最近は、と言ったら、いい感じ
のが出てきて、みんなにも好評だった。
そこの店に、常連さんでボブさんの知りあい(先輩)がいらした。
聞いたら、荒巻義雄氏と知りあいだそうだ。
「われわれ北海道出身のものにとっては当時数少ない、道産子出身の
SF作家で、荒巻さんの存在がだいぶわれわれを励ましてくれたんです」
というようなことを話す。

そこでボブさんと別れ、でんたるさんとちょっとススキノを歩いて、
タクシーで帰宅。お世話になった。
ルナ札幌公演をぜひ、成功させてお返ししたいもの。
かなりアルコール入ったので喉渇くと思い、近くのコンビニで
オレンジジュースと炭酸を買ってホテルに戻る。
このホテル、エコを標榜していて、歯ブラシと歯磨きも使用を確認
してからフロントで手渡し、パジャマもエレベーター前のタンスに
あるものを使う人だけ取っていく。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa