裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

火曜日

唐沢初日

“Shunichi”と書いてシュニチ、と呼ばれるのが嫌で“Shun-ichi”と
書いてパスポート申請したらこの表記は認められていません、と
突っ返されたのには腹が立ちました。

※『二人の主人を一度に持つと』通し稽古、初日

夢、殺人を犯した現場(喫茶店のような場所)に行き、
証拠隠滅をはかるが、逆に顔を見られてしまい、
「お前が犯人だ」
という手紙を受け取り愕然とするというもの。

夢はひどい内容だったが朝は元気に、8時半起き。
なんとか体調回復か。
いや、初日なのでテンション上がっているのか。

母の室で久しぶりに朝食。
バナナリンゴジュース、今日はリンゴが多いのか、バナナっぽく
ない味だった。

食べて(というか飲んで)急いで家を出、下北沢。
10時入りで、何とか幕が開く前に通しておかないといけない。
つっかえながら、思い出し思い出ししながらみんなやっている。
ハッシーは完全に演出家頭になっていて、タイムリミットが
刻々迫っていてもなお、音楽やきっかけを細かくつける。
これはえらいものだ。

予約などを携帯で確認しつつ。
この劇場、地下だがauの入りは案外いい。
なんだかんだ直して、ラスト、麻衣夢の歌で全員出るところの
位置まで確認終えたのが、5時。
まさにふう、という感じであった。

WBCの勝利とかで世間が沸いているときに、ほぼ、それとは
無関係にゲネでテンパっているというのも、それはそれで
いいかもしれない。

自分の公演で二日前まで紀伊國屋の舞台に立っていたなべかつ
さんも顔を出して、ハッシーと三人でミン亭で飯。
半ラーメンと炒飯。なべかつさんに奢らる。相済まぬことで。

で、人形の舞台の裏で少し休むうち、もう初日の幕が開く。
隆鍋錦さんなど来てくださっていた。
もう、全員がウロなまま冒頭から進行していくが、ここが
古典劇というものは凄いもの、基本のストーリィ設定がカッチリと
あるので、ダンドリがそれでもちゃんと進んでいくのですね。

乾ちゃんもテリーも、手探りながらもちゃんと自分の役を
作っていっているのはさすが、役者だなあ、と、舞台裏から見上げ
ながら思う。ちょっと冒頭でアクシデントもあり、楽屋でヒヤッと
したが、それでも何とか大過なく進行。それと麻衣夢の舞台根性には感服。

ただ、NCは自分の役は一番完成しているのに、
登場人物の名前は忘れる、ダンドリは吹っ飛ばす、もう、
彼とからむところのヒヤヒヤと言ったらなかった。
なにしろ、猛烈に怒って登場する、という場面で
「こんにちは!」
と明るく出てくるんだから。

他にも、楽屋に置いておくべき小道具が何故か舞台の上にあったり、
かなり大きなやりとりをスッ飛ばしたり、初日とは言え、
いや、ヒヤヒヤものではあった。
私もかなりダンドリミス、あり。
とはいえ、人形の後ろに隠れていると、いま、舞台上で何がどうなって
いるのかがほとんどわからぬ。
ここは各役者さんたちとのダンドリ合わせをしっかりやらないと。

しかしまあ、とにもかくにも、何とか2時間30分(!)でラストまで
こぎ着ける。受けも多く取れ、古典劇を演じるということで
役者さんたちも貴重な経験をしたのではあるまいか。

舞台上での挨拶、お客出しの後、本多さんのご好意をもって、
舞台上にビニールを敷いて、初日打ち上げ。
普段はルナはあまりやらない、
「あそこのセリフが飛んだ」
「あそこのダンドリが無茶苦茶だった」
という、お互いの駄目だしがやたらあったのも笑った。
例の“こんにちは!”のところ、楽屋で“いや、怒って出るのは
次のシーンだよ”と言われて、そうか、と思いあれで出てしまった
とのこと。
しかし、大変だったがみんなでひとつのものを形作る楽しさは
やはり、個人営業であるモノカキには、金にはならないが大いに
魅力と言わざるを得ない。

12時過ぎお開き。
家に帰って、さすがにバタンキュー。
明日やらねばならぬ原稿仕事は山積どころじゃない。

*通しより。麻衣夢のズメラルディーナ(パンタローネ家の女中)に
求婚するトルッファルディーノ(佐々木輝之)

Copyright 2006 Shunichi Karasawa