裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

月曜日

みなとみいら

ミイラ男、横浜にあらわる。

※『乾恭子退団記念ライブ』

夢で、快楽亭ブラックがなぜか三遊亭円楽を襲名。
その襲名披露興業で人情噺を彼がやったんですが、
夢の中でそれ聞いて泣いた。

山深い雪国で馬方をやっている若い男。
荷駄を引き、峠を越えて、毎日山道を往復している。
ある大雪の日、馬方は峠で泣いている女の子を拾った。
親に捨てられたのか、寒さと飢えで泣きじゃくっている
その子を馬方は家に連れて帰り、世話をする。
女の子は暖い囲炉裏の火と食べ物で元気になったが、
雪の中に長いこと放置されていたためか、左手の小指と薬指が
凍傷で欠けてしまった。
それからは馬方は彼女を自分の妹のようにかわいがり、
彼女も実の兄のように彼を慕い、数年が過ぎた。
指こそ欠けたままだが、女の子はいつの間にか、近隣の村でも
評判の美人になった。
兄の馬方は、妹と歩くときは、妹の指の欠けた手を人目からかばう
ように、いつも手を握ってやっていた。
だが、馬方はある日仲間の喧嘩に巻き込まれて怪我をし、
仕事ができなくなってしまう。
女の子は、兄さんのために、江戸の吉原に身売りをする。
もちろん、知られると反対されるだろうから、内緒で人買いに
連れられて村を去る。金と置き手紙を兄に置いて。
兄はその手紙を読んで泣き伏す。
一年後、体の回復した兄は、妹を探しに江戸に出る。
吉原でほうぼうを訊ね回った末に、彼女が某大店で人気の花魁に
なっていることを知る。指欠け太夫と評判だという彼女を、兄は
客を装って買い、部屋で再会する。
「妹をこんな苦界に落とした兄を、許してくんろ、なあ」
「いえ、お兄ちゃん、あたいはここで客と女郎として出会えたのが
嬉しいんだよ」
「そらまた、何でだ」
「あたい、お兄ちゃんが……でも、村じゃそんなこと出来ないけど、
女郎と客なら、情を通じられるだろ」
「お、お前……おらのことを……」
絶句する兄に抱きつく妹。
「おら……おら、お前があんまし奇麗になったんで、今でもお前があの
妹とは信じらんねえ。だが、この手だ。いつも握っていた、この手だけは
変わらねえ……」
と、目を閉じてその手をまさぐる兄。
「うん……お前、どうしただ? 最初から指は二本無かっただが、一本も
ねえでねえけ。なんでこんな手になっちまっただ」

と、そこでふと目が覚めると、自分のイチモツを握りしめていたのだった。

……夢の中で、「ああ、やっぱりオチは快楽亭だなあ」とガッカリした
ことであった。

朝、9時半起床。
咳やゼイゼイはないが、やはり胸苦しく息苦しい感じ。
足のむくみもあり。
無理してストレッチなどしてみる。
ちょっと気分よくなる。

朝食、バナナジュース、トマトスープ、ミルクティー。
紅茶はミルクを入れたのがおいしく、コーヒーは(入れ立てなら)
ブラックが好み。

某氏から電話あり、去年に立てた企画が、間にたった人の
都合でちょっと延びそうとのこと。ちょっとならいいが、
話ではかなり延びそうな具合である。
不景気の影響、とも一概に言い切れない。
某氏にもあやふやなところがあるので、その本人からの連絡を
もらえるよう、言っておく。

そんなこんなで気分もモヤつき、体調も芳しくなし。
足のむくみがかなりひどい。
昼食はシャケ弁、おいしくいただく。

少し休む。ここ数日、昼寝をして体力の回復をはかっている。
4時近くまで寝て、出かける仕度。
6時15分ころ、阿佐谷ロフトAへ。
『乾恭子祭り』である。
さすがに客が陸続と入ってくる。

知り合いは鈴木希依子ちゃん、麻衣夢、シヴさん、由賀ちゃん、
麻見さんなど過去の共演者、ゼファーさんやサキちゃんのパパさんなど
『黄昏〜』を見てくれた人たち、舞台監督の早川さんご夫婦、
それに私関係でS崎くん、A木くん、しら〜さん、はれつさん、
隆鍋隆さん、むっじーなさんなど。
オノ&マドも来た。

コントを字で解説するのも野暮だからいちいち説明はしないが
いや、さすがに気合入りまくり。中でも、いぬきょん自身、
一番好きな演目と言っている『おままごと』は、親川が相手という
オリジナルキャストだったせいか、最高のテンションだった。
あまり笑いすぎて、咳がぶり返し、呼吸困難になってしまったくらい。
なんと豊田くんがコントデビュー。アガりまくっていた。
音響と照明をミヤッキーがやっているのもなにげに豪華。

もちろん、これで乾恭子の顔が見られなくなるわけではない。
3月の舞台にも出てくれるわけだが、しかしいぬきょんが抜けた
穴をどう埋めるか、これが急務であることは確かだ。

希依子ちゃんとちょっと仕事の件で話す。
藤田由美子ちゃんにもお願いの義これあり。
いろいろと広げていかないとね。

ロフトAで軽い乾杯のあと、土間土間へ行って打ち上げ。
早川さん、親川などと、『黄昏〜』論でちょっと盛り上がる。
早さん曰く
「ウィルソンは怖さで唐沢さん、アクションで親川、中間で
バランスとれているのがハッシー」
と。

ハッシーは珍しく、用事がある、と1時で帰る。
いぬきょんも終電があるので、と帰宅。
残ったメンバー(親川、早坂、麻衣夢、ファンの人二人、
菊ちゃん琴ちゃん、A木くんら)で3時までグダグダ話し、
さらにはラーメン食いに行く、という最悪のパターン。

ラーメン屋でも劇団の人間の常の、妙に酔うと真面目な演劇論に
なってしまい、これではいかん、柔らかくせねば、と思って、
話の合間に
「セックスー!」
とかはさむ。
「だから、あそこの芝居は……セックスー!」
「セックスー! セックスー!」
……他にお客がいなかったとはいえ、よく追い出されなかった
ものである。
4時半、タクシーで帰宅。
まあ、咳やゼイゼイもなし、体調も回復したってことか。

*写真は麻衣夢の日記から無断拝借。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa