裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

水曜日

ゲバラ、ゲバラ、ゲバラ、ゲバラ、ボールペン

「(革命の行く末が)見える、見える」

※書評原稿 事務所整理 書評委員会

今朝の夢。
不景気で、吸血鬼に転職しようとする男。
しかし吸血鬼仲間の会合で、
「今は吸血鬼になったってロクに血も吸えず、軒端の柿の実
なんかを食ってみんな生きている」
という話を聞いて愕然とする。

9時半起床。
ゆうべの酒がまだ残り、ベッドの中でぐずぐず。
しまいには寝たきりになるのではないか。
朝食、バナナジュース、ニンジンのスープ。
かたおかみさおちゃんに、ニンジンは二日酔いにいい、と
勧められていたがさて。

テレビでオバマ就任式の模様。
厳寒の中、並んでいてはトイレにもいけないだろうが、
みんなどうしているのか。

雨もよいで(まだ昼の時点では降ってないが)、気圧乱れ、
眠くて仕方なし。
入浴の後、少し横になり、資料読み進むうちに少し眠る。
そろそろ尻に火がつきそうな予定いくつもあり、それからの
心理的逃避もあるか。

昼は豚丼弁当。
がつがつかきこんで、原稿、朝日新聞。
500字原稿(実際は520字)というのは、書き上げるのと
ほぼ、同じくらいの時間を字数調整(ここで一字削って、
向うを一行足して)に費やす。

担当Nさんにメールして、タクシーに飛び乗って渋谷。
大内さん、青山さんが手伝いに来てくれていて、本の整理。
文庫の棚をチェックして、少し量を減らす。
語学の辞典類なども始末。
パソコンを使うようになって、最も手に取ることの減ったのが
辞書類である。

オノとスケジュール打ち合わせして、5時に渋谷を出る。
寸前に、D社Mさんから電話、原稿執筆予定確認。
気がついたらもう1月も終り間近である。うーむ。

大江戸線で築地市場前。
到着した6時あたりで、雨がポツポツ。
朝日新聞書評委員。もう任期も終盤なのであまりとらないように
と思うのだが、ついつい。
今日の弁当は珍しく中華で、維新號のもの。
店名の號って何かと思ったら、雑貨店のことだそうな(維新號は
開店当時は中国食材雑貨店)。『ゲッターロボ號』って漫画が
あったが、ロボット雑貨店か。

8時半からアラスカで、Oさん、Kさんなどと雑談。
イギリス談義が面白くて、つい時間経つのを忘れる。
10時、ハイヤーで送られる。
夜景楽しみつつ、新中野。
冷蔵庫に残っていた豚シャブ用の肉を煮て肴にし、
ホッピー。
ビデオで大川橋蔵主演の『海賊八幡船』。
1960年に作られた痛快海洋スペクタクル。
何しろこの映画のために本当に八幡船を4隻も作ってしまうのだ。
その他、堺の港や村上水軍の根拠地のセット、エキストラの数も
ものすごく、よほどの大作だったのだな、と思われる。
主演の橋蔵の若々しさと美青年ぶりもいい。
沢島忠の演出も、これは当然のことながらテンポ抜群。
集団劇を取らせれば天下一品の人ではないか。

にも関わらず現在再評価の機会がなかなかないのは、いきなり
冒頭から
「メクラ船じゃ!」
と怪老人(進藤英太郎)が連呼し、周囲の人々が
「キチガイだ、キチガイだ」
と叫ぶという、テレビで絶対放映できないセリフのオンパレード
であることが原因だろう。
おまけに途中には人食い土人まで出てくるし。
ネットの映画評には、この土人たちのシーンがかなり情けないと
書かれているところが多いが、『キングコング対ゴジラ』の
ファロ島島民よりリアルっぽいと個人的には思う。

後に東映動画作品などで定番的に使われる
「父だと思っていたのは実は育ての親で、実は自分はまったく
別の運命を背負うべき人間だった」
という、冒険ロマンの基本設定もあるし、ライバルとの、
ケンカを通じての男の友情なども描かれて、新しさは全くないが
安定感は抜群。役者では大阪弁のコメディリリーフ、田中春夫が
やはり達者。敵を裏切って味方につく海賊・陳赤龍役で高桐真が
出ていたが、全くわからないメイクだった。
女性陣のうち、主人公のライバル、岡田英次(これも顔が岡田英次
とはちょっとわからない)の愛人・謝花(シャハナ)を演じた
気賀沢光子という女優は、エキゾチックな美女だが
いろいろ調べても映画出演歴がこれ一本しかない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa