裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

水曜日

ペ・ヨコジュン

『韓流ドラマこてん古典』

※ミリオン原作 朝日新聞書評委員会

朝6時、7時、8時と三回目を覚まし、いずれの目覚めの
ときも“あ、まだたっぷり寝られる”と嬉しがる。
「よく眠り、よく食べ、よく飲んでストレス発散」
の三つを行っていれば、なまじのスポーツなどより体に
いいのではないかと思うのだが。

8時半起床。
やはり広いベッドは快適である。
まあ、簡易ベッドのあのワイルド感も捨てがたいが。
9時朝食。
バナナヨーグルトジュース一杯、トマトジュース小カップ半杯、
バナナ一本。
少なくとも昨日から便通は大変によろしい。

昨日の某人からメール。
まだ緊張は続いているが、文章も落ち着いていて、
立派だな、と感心する。
むしろこっちの方が頭を冷静にさせられない。
何とか、何とか……。

昼はシャケと茄子・エリンギ炒めが菜の弁当。
ジャガイモの味噌汁を作って啜りつつ。
それからミリオンの原作書き。
アマゾンで注文していた資料が届いたので読んでみたが
これが全然使えないもので、さて困ったと関連する資料を
探していたら、関連はするが全く別の事件のことを思い出し、
それともうひとつのものを結びつけて、
ストーリィの結構がカチッと決まる。
そうなると、それを導いた最初の資料も、まるで使えない
ということにはならなかったわけである。

ガリガリと書いていくが、時間がどうしても足りない。
今日は朝日に行く前、渋谷の事務所に寄ってゲラチェックとかを
する予定だったがそれは明日廻しとなる。

書き上げてK子とYくんにメール、急いで支度して、
地下鉄で新宿、歩いて京王プラザ脇の大江戸線都庁前駅。
築地市場前まで、週刊新潮、週刊文春読みながら。
今回は夏枯れっぽく、一〜二冊を除いてあまり食指の動く本なし。
出席者も夏休みか、かなり少ない。
……ところがフタをあけてみると、花丸が三つカチあうものまで出る
大接戦。花丸と二重丸は何とか確保したが、一つ丸は大方を
橋爪先生に持っていかれる。
花丸は評判になることが予想されるので、ひょっとしたら
すでに出している候補より掲載予定が早まるかも。

市川さんにこないだの水パイプ写真を見せる。
今日の弁当の仕出し屋は明治5年創業だとか。
仕出屋とかうなぎ、ソバ類に老舗が多いのは、変化が少なく
競争原理があまり働かない業種だからだろうか?
あと、三鷹市図書館から先日の甘粕正彦本の書評を
音声起こししたいという依頼。Nさんに全部一任。

アラスカで雑談。書評担当編集者のNさん(女性)、
今度報道部へ異動。先輩の松本さんなどがかなりグロテスクな
現場の話をしてオドかしている。
グロばなしから怪談ばなしになり、橋爪さんが自分の体験談を。
私は下北の怪談噺の回のマクラに使おうと思っていた
(いや、どれも本人によると実話なのだが)話を二つ、
披露してどちらもウケたので喜ぶ。
思いがけず事前の確認ができた。

それからNアニキが加わってきたので、話が昭和プロレスに。
いや、凄い知識量と情熱。
朝日じゃなく東スポに行った方がよかったのでは。
帰り際にKシューに、松本さんをチャイナに紹介する会の
セッティング依頼。

ハイヤーで帰宅、最中にメディアファクトリーSさんから
電話、『血で描く』見本刷りが出来たので、明日受け渡しを、
という件。ではらんぶるで、ということにする。

帰宅して、メールやりとりいろいろ。
ふう、と息をついて、ホッピー飲みつつ、DVDで
『雨の午後の降霊祭』。
今を去る三十数年前、中野だったか池袋だったかで
この映画に出会い、無茶苦茶な衝撃を受けた。
ハリウッドでは絶対作れない、英国映画の雰囲気に
あこがれて、本気で一時、イギリスに住もうかと
思ったくらい、ハマったものだ。

映画のテーマ(原作は歴としたオカルト小説なのだが、映画は
そこを実にうまく回避してミステリにしている)は
狂気、なのだが、その狂気が、時計の歯車がある日ふと、
一個外れかける、というレベルでのものなのがかえってコワイ。
で、そのかけた歯車の動きが、次第に大きなものになってくる。
そしてラスト近くで一気に一線を超えるのだが、その超え方まで
極めて静か。
主演のリチャード・アッテンボローが自ら製作を手がけただけの
ことはある名作である(最初に観たとき、彼の鼻の形が日本人には
絶対にない形状であるのに感心した。変装して子供を誘拐する
役だが、どんなに変装してもあんな鼻をしていたらすぐ
わかってしまうと思う)。

役者としては他に、妻役のキム・スタンレーがアッテンボロー
との演技合戦を見せ(滅多に映画には出ない舞台の名女優。
私もこれと『ライト・スタッフ』でしか知らない)、
誘拐された少女の母親役のナネット・ニューマン(『ネモ船長と
海底都市』のヒロイン。監督ブライアン・フォーブスの奥さん)
の神経病的な表情も印象に残る。
何より事件をあばくウォルシュ警部役がキューブリックの
お気に入り(『時計仕掛けのオレンジ』『バリー・リンドン』)
のパトリック・マギーであるのがうれしい。

誘拐つながりだが、同じくちょっとサイコがかった英国映画の
名作『バニー・レイクは行方不明』も、どこかでDVD出して
くれないだろうか。もう、観たくて観たくて。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa