裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

金曜日

公明党さん

「政教混同してはいかんとあれほど言っておいたのに、お前の様な子は
地球へでも行ってしまえ!」(声・八木光生)
*若い方すいません、古いほう(九重祐三子主演)のパロディで。

朝8時起き。
起きたからといってジョギングするわけでもなく、
ただ漫然とネットのぞいて過ぎる時間だが、
ここでいろいろと仕事に必要な妄想をたくましうする
大事な時間。

9時朝食、コーンスープに果物類。
青汁、サプリメント、漢方薬各種。
果たして効いているのかどうかよくわからんが、まあ
夏バテもせず風邪もひかず、睡眠もとれ食欲もあり
体調は良好なので効いているのだろう。

コミケ第1日目だが、私には関係なし。
コミケ前にコミケの準備はすませ、かつお盆進行で〆切は前倒しで
ほぼ片づいており、単行本(猟奇マンガもの)原作を書く以外は
さして大きな予定を入れていないので、逆に1日目2日目の今日明日は
時間を持て余しぎみ。

コマ劇場閉館にともない、新宿プラザも閉館だそうである。
思えば『スター・ウォーズ』日本初公開のとき、朝イチで
並んで観たのはここでだった。あの頃は『スター・ウォーズ』を
何回観たか、がSFファンとしてのヒエラルキーにつながるという
変な流行があって、結局、上映期間にこの会場には10回以上通い、
二回連続で観た回もあって私の記録は17回半(半てのは
デートに誘った相手と途中でケンカして半分までで出てきて
しまったとき)だった。

『ナイル殺人事件』もここで女の子を誘って観て、観たあと速攻で
フラれて映画館を出たとたん右と左に泣き別れ、だった。
うーむ、青春の懐かしさがつまってはいるがいい思い出はあまり
ない劇場なのかもしれない。それでも寂しい。

終戦記念日である。
何がなそれらしいことでもしてみようと、
福富健一『東條英機 天皇を守り通した男』(小学館)を読む。
東京裁判で最終的な勝利者は東條であった、と言うことを
山田風太郎はその日記に記し、かつ後年の『人間臨終図鑑』の
中でも繰り返している。私もその後いろいろ東京裁判の記録を
見るたびに、確かに、と思うようになった。
とはいえ、やはりまだ、戦後の日本でそのことを発言するには
勇気がいる。この本の著者は自民党の代議士で有事法制の
専門家だそうで、そういう人が東條英機のことを書くことで
またいろいろ突つかれると思うのだが、よく書いたなあと思う。

……だが、残念ながら内容的にはかなりいいことを言っていても、
書き方がよくない。著者の福富氏自身が東條のことを
「東條には凛とした厳しい武人の姿のなかに、人を包み込む
器量があった」
などと、地の文で絶賛している。これだけで、読者(本能的に
内容について中立でいようとしている理性的な読者)は
眉にツバをつけてしまう。
伝記文学の大家である阿川弘之が言っているが、
「伝記を書くとき大事なことは、その対象を褒めるときは
作品の中の人物に褒めさせること」
なのである。著者が直接褒めた言葉にはバイアスがかかるのである
(実はこの、著者自身の絶賛の部分がどれだけ多いかが、トンデモ本の
見分け方のひとつにもなっている)。
これがわかっていないのは、やはり著者がプロの文筆家で
ないからだろう。

昼は弁当、お菜は干物の焼いたの。
腹が減らぬよう、卵を落とした味噌汁を作るが、これが効果テキメン。
夕方までまったく空腹感感じず。

金成さんの迎撃オフの件で連絡とったり、アンドナウの会の
インタビュー予定のための質問事項作成したり。
で、原稿用の資料がアマゾンから届いたので読みはじめるが、
これがまた、非常に困った本。
某著名人(故人)の弟が書いたもので、その死について肉親が初めて
語った、というふれこみの本なのだが、肝心の死の部分になかなか
たどりつかず、と、いうより自分のことが中心で、自分の育った家の
複雑な環境がえんえんと語られる。それはそれで興味深く、
現代日本に生きるわれわれには、ほんの8〜90年前の大正時代の
日本の、現代からは想像もつかない環境と人間の考え方とに驚かされる
話ではあるのだが、資料にはほとんどならず。

タクシーで渋谷。風呂場の灯が切れたので東急ハンズで買い、
事務所に来た郵便物類を整理。
さらに東急本店で買い物。
バスで帰宅し、ごみ捨て場に直行。
出かけるとき、自宅にある大小の紙袋類を事務所に
持っていこうとして持ち、ついでに雑誌類を束ねたものも
捨てようとマンションのごみ収集場に行って、同じくゴミを
捨てに来ていた居住者の人と会話して、タクシーに
乗った時点でハッと気づいたが、紙袋類の方もごみ捨て場に
置いてきてしまった。
暑さでボケたか、と思ったが、帰宅してすぐ直行したら、
回収されることも他の人に持っていかれることもなく、無事あったので
ホッと。ホッとするほどのことでもないが、自分のバカさに
呆れていたところだったので。

で、資料脇に置いて原稿書こうとしたがやはりダメ。
今日はもう、仕事放棄。
酒、酒といいながら台所に立つ。今日は三品。
・鶏のハツ(開いて血抜きしてあった)を酒を大目に入れた湯で
サッとゆがいて、ポン酢で食べる。
柔らかくてプリプリしていて美味。
・トマトを薄切りして冷蔵庫で冷し、その上にセロリ、ニンニク、
キュウリ、パセリ、シソを微塵切りにしたものを乗せ、
ポン酢とゴマ油をかけ回したもの。野菜をとろうと試してみたのだが
これはもっとシンプルにシソとゴマだけの方が好み。
・豆腐の奴の上に白髪ネギ、針ショウガ、メンマ、焼き豚、ピータン
を乗せ、熱したサラダオイルを上からジャッと注ぎ、
醤油をかけてぐちゃぐちゃにして、刻み海苔をふりかけて食べる。
うまいうまい。

コロナビール一本、黒ホッピー二杯、沖縄の黒糖焼酎『天海』
ロックで二杯。鈴木清順『殺しの烙印』。
学生時代初めてオールナイトで見て、“オールナイト上映の
ために作られた映画みたいだな”と思ったもの。
宍戸錠の裸になるシーンでの、文字通り凶器みたいな肉体の
鍛えられ方はそれだけでキャラクターを語り尽くしている。
この映画が1967年。1966年の『白い巨塔』の田宮二郎の
肉体も研がれたナイフを思わせるものだったし、1967年の
『東京流れ者』での渡哲也の肉体のシャープさもなかなかのものだった
と記憶する。いずれも、苦行者を思わせる痩身である。
今の若手男優たちの肉体は、鍛えられていても、研ぎすまされたと
いうような、見たものをギョッとさせる凄みに欠けるように思うのである。
成長期に栄養を十二分にとってしまうと、あのような凄みは出ない
のかもしれない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa