裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

土曜日

♪人形の吸血〜

「わが吸血鬼一族は創業天保6年なのだ」
     『幽霊屋敷の恐怖・血を吸う人形』(山本廸夫監督)より

※人形劇フェスティバル観賞  帰京 パチスロNEO原稿

寝入ってから数時間後、2時半くらいに目を覚ます。
缶ビールを買ってあったのでこれでも飲むか、と
缶をあけ、つまみに、と持ってきたと学会メンバーの台湾土産を
鞄からとりだす。袋の裏に原材料として“主要原料:猪肉(牛肉)、
(海産)”とあったので、いずれ乾肉かなんかだろうと
思って鞄につめたのだが、袋を開けてみたら乾燥マンゴーだった。
他の珍味と一緒の袋に詰めているのだろうが、肉でも海産物でも
ないじゃないか、と呆れる。
マンゴーはおいしいがビールのつまみにはならず、あきらめて
またベッドに横になり、古今亭八朝・岡本和明の
『目白・柏木・黒門町 内儀さんだけはしくじるな』(文藝春秋)
を読む。五代目小さん、六代目圓生、八代目文楽の弟子たちが
それぞれの師匠のお内儀(かみ)さんのエピソードを語ったものを
まとめた本。
マスコミに顔を出し、名物お内儀と言われた小さん夫人、
四谷小町と言われた元・美人ながら亭主の浮気に悩んだ圓生夫人、
「苦み走っている」と言われたほどキツかった文楽夫人。
それぞれに個性的な夫人たちだが、落語家の内儀さんだけに
亭主の浮気には寛容かと思ったら、それぞれの形は違えど
大変なヤキモチ焼きばかり、というのが面白い。

あと、内儀さんの話ではないが小さんの
「落語は大衆のもんじゃねえ。マニアックで通人のものだ。
それが可笑しい、面白いという人間以外に聴かせて。笑わせようと
すると落語が崩れる」
という言葉(柳家小里んの証言)にかなり考えさせられる。
この言葉が名人と呼ばれる落語家の中では大衆派と目されている
小さんの口から出ているというところを考えねばなるまい。

8時半までに何度か寝て、また目が覚め、をくりかえし、
とうとう読了してしまった。
8時半、下のレストランで和定食。
納豆を食えるのを楽しみにしていたが納豆はなし。
サンマの干物、キノコの粕漬け、蓮の煮物、味付け海苔、生卵。
味噌汁がやたら塩辛いのに閉口して少し残す。
部屋に戻って荷造りをし、9時半、ロビーで迎えに来てくれて
いた佳江さん、一男さんと合流。
佳声先生と鈴くんをさらに拾い、飯田市立病院へ。
ここで佳声先生は今日、『五十鈴姫』を演る。

病院で公演するというのは珍しい。
どこかに娯楽用の講堂かホールでもあるのかと思っていたら、
受付のスペースの椅子をどかして、そこでやるのであった。
子供たち中心に、三々五々人が集まり、最終的には7,80人。

共演は『かたすく』という劇団。
落語を人形劇にして見せるという趣向だったが、ネタが『長屋の花見』
に『芝浜』。『芝浜』が子供たちにわかるのか? と驚く。
かなりかみ砕いた演出で、主人公に娘がいるなど、子供に共感を
持たせる設定にしているが、しかし、“長屋”“大家”“家賃”という
今の子供たちにとってイメージすらわかないものを、どう子供に
伝えるか、にもう少し工夫が必要だったように思う(子供の一人が
お祖母ちゃんらしい入院患者に“家賃って何?”と質問して、
“おうちに住んでいられるのに要るお金のことだよ”とお祖母ちゃんが
答えていた)。
西手新九郎だが、上記の小さんのセリフが観ながら頭を何度もよぎる。

終って佳声先生の『五十鈴姫』。
太鼓を使ったドロドロの音に子供たちも大喜び。
例によってのギャグも満載、これにはお年寄りたちも大喜び。
“どうする、アイフル〜”はさすがに古くなったが、
カッパが“どうだ、泳ぐのが早いだろう、スピード社の水着を
着ているからな”などと自慢するクスグリなど、いやはや。
劇団の子たちも興味津々で聞いていた。

終ってまた交流会。
舞台やカラオケ設備まである娯楽室で、佳江さんと
「ここでやればよかったのに」
と話す。
劇団の子たちとちょっと雑談。
大学で演劇をやっていた仲間が中心になって始めたもので、
落語ネタばかりをやっているわけではなく、どころか寄席にも
いったことがないという。いくつかサジェスチョンして
(人形の大きさなど基本的なところ)語り合う。

そこで佳声先生、鈴くんと別れ(他の人形劇を観ていくとか)
佳江さんの運転する車で一男さんと東京まで。
途中、そばでも食べましょうということになったので、
こないだルナのみんなと行った『おにひら』へ。
ちょうど“りんごん”(飯田の“よさこい”みたいなもの)
の最中でごった返していたが、幸いすぐ座れた。
お世話になりっぱなしなので、ここは支払う。

あとは梅田タクシーに便乗で、東京まで。
途中で濃霧が出て速度制限があったり、八王子トンネルあたりで
自然渋滞がちょっとあったりしたが、この復路においては
こんなものは渋滞のうちに入らず。
会話もはずんで、全く退屈せず東京までの数時間を過ごせた。
新中野まで送ってもらって、別れる。
このお返しには、なんとしても『化物婚礼絵巻』東京公演を
実現させねば。

帰宅が8時。
家に入ると、リフォーム業者が入って、K子の立ち合いのもと
天井の雨漏りを取りあえずホースで洗面器にたらす仕掛けを
取り付けている。業者が週末からお盆休みに入ってしまうための
取りあえずの処置。K子とバトンタッチで立ち合いする。

疲れたとは言ってられない。
シャワー浴びて、すぐパチスロネオ原稿。
お題は『ゲッターロボ』。70年代のヨーロッパを席巻した
日本アニメと言えばフランスの『グレンダイザー』とイタリアの
『ゲッターロボ』。個人主義の国・フランスで孤独のヒーロー
グレンダイザーが、大家族主義の国・イタリアでチームワークで
合体するヒーロー・ゲッターロボが人気を博するというのが
意味ありげで面白い。

10時半に原稿挙げて担当のSくんにメール。
すぐ受け取りの返事が来た。
えらいなあ。

たまったスパムメールの削除、連絡メールへの返答など。
一件、小さいことだが降りかかったトラブルに関し、勝利宣言。
明太奴などで気分よくホッピーやって、『山本ひろし物語』の
チェック続きなどやり、1時、就寝。

※上演中の佳声先生。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa