裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

火曜日

たばこかけご飯

究極のニコチン中毒だあ〜。

※テレ東打ち合わせ テレビ朝日打ち合わせ 平山先生打ち合わせ 川内康範イベント

朝6時に目が覚め、少し日記つけなどしてまた
8時半まで寝る。
起き出して朝食、メロン一切れ、パッションフルーツ半個。
パッションフルーツの香り馥郁、というより濃厚華美。

遅れている原稿、書きだすが今日は山のように予定入っている。
おとついの落語会、好評嘖々だったらしく嬉しい。
麻衣夢のお母様のミクシィアドレスを探って、扇子のお礼メールを。

オノに急用出来て事務所に来られないというので、早めに行って
IPPANさんに今日の川内康範イベント用の機材を受け渡し
しないといけないことになる。
昼の弁当、原稿書きで遅れて2時頃、食べようと思ったがもう
出ないといけない時間。未練残して家を飛び出て、タクシーで
渋谷へ。

事務所の機材を配線外し、ドアの外にソフトと共に置いておく。
盗られたりしないか、と一抹の不安があるが、まあこのマンションは
治安がいいから大丈夫だろう、と。

下の更級で冷したぬきを掻き込んで、東武ホテルへ。
テレビ東京某番組打ち合わせ。
この6月末から7月いっぱい、やたらいろんな番組への
出演が続くので、打ち合わせの席についてから、
アアこの番組であったかと認識する、というような案配。
サブカル系の人にスポットを当てるコーナーらしい。

いろいろ内容作りの質問などあり、次の打ち合わせに少しカブる。
そのまま席に居残って、次のテレビ朝日某特番打ち合わせ。
今日はやたらにこの東武ホテル、そういう打ち合わせの場になって
いるらしく、木の実ナナさんが来たと思ったら、次の人にも
「ああ、どうもしばらくです!」
と挨拶される。やたらスポーティなシャツ姿の人だったので
誰かと一瞬考えたが、『特ダネ!』の諸星先生だった。
普段はまったくイメージ違うのだなあ。
しばらくでした、とこちらも返したが、考えてみれば
番組でご一緒したことはなかったような。
談笑の真打披露宴のときか?

テレ朝はなかなかユニークな特番。
ざっと構成を聞いて、頭に入れる。
いつものことながらコメントのまとめ役。
ココリコの田中が一緒だが、彼は数年前、K子の仕事場に
取材に来たことがある。覚えているかな。

“4時半までに打ち合わせ終わらせてください”とオノに言われた
時間ピッタリに終り、ちょうど機材取りにきたIPPANさんととも
話が出来て、タクシーで新宿、西武新宿線改札のところで
平山先生と落ち合う。
今日は6時半くらいに阿佐ケ谷ロフト入りなのだが、その前に
平山先生が、私にちょっと引き合わせて頼みごとをしたい
人がいるという。

やがて現れたNさん、業界内では知る人ぞ知る方。
平山先生のことを“おやじ、おやじ”と呼ぶ。
平山先生、彼のことや、一緒に仕事したときの思い出などを
お話しになるが例によってとめどがない。
隙をうかがう、という感じでNさんのお話をうかがい、
現在のそこらあたりの業界の状況をお話し、
その中でどういうことを目標値に置くか、
最終目標の前に、やっておくべきことは何かなど、
いくつかをサジェスチョン。しかしウリもありいい材料もあり、
案外、今の自分の交際や仕事付き合いでいい具合にこれはいい協力が
できそうな気がしてきた。

6時、しゃべり続けているそのまま、平山先生を阿佐ケ谷にお連れする。
階下に下りるエレベーターに乗ろうとして、ちょっとあせった
先生、バッタリ転んで額をお打ちになったのに仰天。
あわててかけよって抱き起こしたら、その時もまだ、
「……それでさ、佐々木剛がさ」
と話し続けていらっしゃるのに、先生らしいと苦笑するやら
心配になるやらでもう、大変。
タクシーの中でも、息を切らせてしゃべっている。
口だけ別の生き物みたいだ。

阿佐ケ谷ロフトA、IPPANさんが入って細々と
世話を焼いてくれている。
マイミクの隆鍋綿さんに、平山先生を狭山までお送りして
いただくことになったので、そのお礼。
平山先生関係のイベントではこれが一番気掛かりなのである。
開田さん、しら〜さん、藤倉珊さん、はれつさん、片瀬さんなど
来てくれる。

今日は平山先生と、川内康範先生の最初で最後の一緒の仕事
である『正義のシンボル コンドールマン』について、
いろいろと話をお聞きする会である。
平山亨トークはとにかく、本筋に入るまでが長く、本筋に
入ってからもあっちへ跳びこっちへ跳び、なのが特長なのだが、
意外や意外、今日は脱線も少なく、こちらが訊きたいポイントを
即座に理解して話してくださり、長いつきあいの中で聞いたことが
ないような話もいろいろ。

詳細は後にまた本にまとめるが、
・伝説になっている、ある日突然
「川内じゃがテレビ朝日の社長はおるかね。今度コンドールマンという
番組をやりたいのじゃが」
と電話をかけてきた、という話は細部の違い(電話でなく、直接の
来社だったとか)はあるが、ほぼ、事実であったこと。
・脚本は『月光仮面』からのつきあいの伊東恒久さんが担当だが、
川内先生が大部分、口述筆記で直接ストーリィを作っていること。
・あの「命をかける価値もない……」という主題歌の歌詞は、
川内先生作詞だから通ったので、そうでなければ絶対テレビ局の方で
許可しなかったはず。
・主役の佐藤仁哉は川内先生自身がオーディションで選んだ。先生は
必ず受験者の目を見て、あれは目が濁っている、とかとNGを出し、
目のきれいさで彼が選ばれた。
……等々が確認出来ただけでも収穫。

あと、出演者がなんか微妙に豪華だったり、特撮シーンに手が混んで
いたり、監督が伊賀山正光クラスと大物だったのは、みな、東映側が
川内先生の作品なので、と赤字覚悟で製作費を出したから、だとか。
見返してみて改めて思ったのだが、怒りの炎でモンスターどもを
焼き尽くすドラゴンコンドルの横顔は、川内先生ソックリ!
森進一騒動のことがふと、頭をよぎらざるを得ず、苦笑。
梶原一騎と川内康範、二大怖い御大に平山さんがかわいがられた
秘訣は何か、なぜ最近はこういう怖い大物がいないのか、も
ちょっと触れた。ここらは大幅に追加取材が必要だな。

あと、川内イズムと平山イズムの違いもはからずも明確になった。
「後続の脚本家は、市川森市さんなんかが代表だけど、
安易に“正義”という言葉を使うことを嫌う。
ナチスだって正義という言葉をもってユダヤ人を虐殺した。
だからライダーのオープニングシナリオに、正義のためという
言葉があったのを“人間の自由のため”と市川さんが変更して、
僕はそれに感動したんだ(まあ、作詞なんかのときは字数の関係で
正義というフレーズは便利なのでよく使うけど)。
しかし、川内さんは仏教の信奉者であったせいか、絶対の正義という
概念が心の中におありになったのだと思う。だからためらわず、
正義という言葉をタイトルにまでおつけになった」

「コンドールマンの日本ハンガー作戦で、ステーキを食っている悪人を
餓えた子供たちがウインドウにはりついて見ているシーン、
川内先生のアイデアだけど、僕(平山)に言わせれば、今の子供たちには
餓えという概念は理解できないんだよね。本当に餓えた経験がないから。
僕の番組だったら、絶対ダメを出す。子供たちに共感を与えるシーン
でないといけない。だから、僕の作品の怪人たちは、
よく馬鹿にされるけどいつも幼稚園のバスを襲うんだよね(笑)。
視聴者たちに、一番身近な恐怖を盛り込まないと視聴率はとれない」
……この話にはちょっと考えさせられた。
なぜなら、われわれ兄弟(なをきはいまだにコンドールマンを心の
番組としている)がコンドールマンにハマったのは、まさに、
その、幼稚園から小学校といった年代の子供たちを置いてきぼりに
していた部分にあったからである。
われわれのオタク視点はその後のわれわれを形作るのには大いに
役に立ったが、ポイントをついてはいなかったのではないか?

時間通りに話が、オチまでつけられて(川内先生と平山先生が
ハリウッドで偶然に出会い、“先生、何をなさっているんですか”
“うむ、企画をちょっと持ち込んで、ハリウッドに風穴をあけようと
思ってな”と凄い気炎を吐いてからしばらくして東映で会って、
“先生、ハリウッドの風穴はどうなりましたか”“ウム、ハリウッド
の壁はなかなか厚いぞ、君!”というような会話をしたという話から
「見てみたかったですねえ、ハリウッドの川内先生。
ウォシャウスキー兄弟も『マッハGOGOGO!』なんかより
『コンドールマン』映画化すればいいんだよね!」
で、満場の拍手と共に幕となる。

今日の私なりの結論。
「平山先生にお話を伺うとき、ほぼすべてのヒーローを先生は
わが子のように可愛がって、自分と一体化してお話しになる。
ところが、このコンドールマンだけは、自分が育てた子では
あるけれど、生みの親が違うんですね。だから視点に距離がある。
客観的にヒーローを語る平山先生のお姿を初めて見ましたし、
それ故の、他の平山ヒーローを見る際の補助線にもなるご意見を
たくさん伺えました!」

その後、お客さんに挨拶回り。
開田さんにも、平山ファンらしい方々にも、神司会であったと絶賛される。
「平山さんのトークライブで話がループしない会を初めて見ました!」
とも言われた。いや、あれは五時からずっと話詰めで、少しお疲れに
なったくらいだったので丁度よかったのではないか。
あるいは、“転んで頭打って、詰まってたところが通ったのでは”
などと不謹慎なギャグも。

IPPANさんと隆さんが平山さんをお送りするのを見送り、
児玉さんやマド、オノ、T田くんなどとちょっと話す。
内容は十二分の出来だったが、店員さんなどのことで
やや、不具合あった模様。
マイミクのカンパンマンさんから、ちょっとお仕事のお話しを
いただく。オノと打ち合わせ日取り等、つめてくれるよう言っておく。
何かちょっと面白そうなお仕事である。

しら〜さん、はれつさん、片瀬さん、バーバラと私で、おなじみ
じげもん。ハツ塩ゆで、チョリソ、麦イカ湯引などでビール、
焼酎。今日のイベントのこと、コロンボのこと、と学会のこと、
平井和正版の『スパイダーマン』を読んでしまった世代には、
アムロ・レイも碇シンジもさして衝撃的ではない、という話など。
その他いろいろと盛り上がる。病気の知人関係で電話、いろいろ
心配。帰りは1時。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa