裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

土曜日

My God! のMy God! の小猫ちゃん

♪困ってしまってJesus Christ!,Jesus Christ!

※日本トンデモ本大賞

朝7時起床。
多少後頭部が疼くのはアルコールが残っているためだろう。
大事の前に仕方ない。

メールチェック。
おやおや、な報告一件あるも、これは仕方なし。
しかし、それならそれで早く言えよ、てな部分も。
胃がムカついて食欲なく、せっかく用意した朝食も食べずに
支度。いろいろとカバンにつめて、舞台用の服も用意して。

コンビニで現金作って、タクシーで池袋。
何か忘れてきたんではないか、という思いがずっとしている。
車中でひえださんから電話。
志水一夫さんが、体調が回復せず、本日欠席とのこと。
そうなると台本にも一部、修正が必要になるな、という
演出家としての大変だ、と、友人として大丈夫か、という大変だ、が
一瞬交錯するが、とりあえず友人としてはお見舞いメールを
一本打ってまずはこれで今日は勘弁、とし、あとは演出家として
台本の修正を考える。

豊島公会堂、梅雨の晴れ間(どころか、暑いくらいの好天気)
の日光に照らされて、何かキッチュな建物に見える。
玄関前にと学会メンバー、照明の小川さん、権藤さん、その助手の
助ちゃん、オノマド、ボランティアのT田くん、モナぽさん。
そしてルナのメンバー。
楽屋にとりあえず荷物を置き、舞台上、地下、客席、二階席などを
チェック。すでにホワイエでは段ボール箱を開けて物販の準備に
みな、余念が無い。
受付をやってくださるTさんが『希望』というホールの銅像の
股間(紐パンみたいな赤褌)に仰天した顔をしていた。

表口、裏口どちらも真ん前がコンビニという非常に便利な立地。
さすがに朝飯抜きでは持ちそうにないので、表口前のコンビニで
リンゴとチーカマを買って、噛りながら仕事をする。
菊ちゃんが“そうやって歩きながらリンゴを噛っているとカッコいい、
ニューヨーカーみたいだ”
と言ってくれるが、ハッシーが脇から付け足して
「カンボジアのニューヨーカーみたいだ」
と。着ているシャツが佳声先生からプレゼントされた蜘蛛の巣模様
というアヤシゲなものだからなあ。
山口監督たちもいらして、脳玉人の模型を二階通路からつり下げて
いた。会場の外には、すでに当日券を求めて、20人以上の人が
並んでいる(最終的に50人近くが当日券で入場)。

すなむしさんたち警備班が、物置や非常口のドアをいちいち確認。
開田さん(記録班)がカメラを手に会場のあちらこちらを撮影。
マイクテストの“テス、テス、ワン、ツー、ハッ、ハッ”が会場に
流れるのを聞いて開田さん、
「これ聞くと開幕前って感じで燃えるんだよね!」

会場に全員を集めて、今日は初めて顔を合わせる人も多いので
紹介し、伝達事項いろいろ。
地下と一階を限りなく往復する。
私とコンビで司会役を務める本郷さんが、会場のドアの
小ささに感動して、
「昭和27年(完成年)の日本人の平均身長はこれくらい
だったんですねえ!」
と。女性楽屋でもその話になったそうで、
「私なんか昭和27年だったら大女と言われますよ」
と言うと、乾きょんが
「じゃ、私は?」
と訊いてきたので
「あなたは“外人さん”ですよ!」
と即答したとか。

ゲネで立ち位置やマイク位置、机位置などをI矢くんの
指示で決めていく。だが、壇上で指示するI矢くんの声が、
客席にいるとあまり聞こえず、これは今年は音で苦労しそうだ、
という予感がちょっとする。
杉&鉄の二人、坂本頼光さん着。
しら〜番長と楽屋にお通しする。頼光さん、今朝の8時まで
今日のネタアニメを作っていたとかで、楽屋で眠りこけていた。
杉ちゃん&鉄平も到着。鉄平くんにバイオリン生演奏で
2進法解説ビデオの伴奏をお願いする(今年はと学会結成16周年。
去年がUFO60周年〜1947年のケネス・アーノルド事件から〜
だったので、15周年記念をコロッと忘れていた。去年の
イイノホールに比べ、今年は会場がちょっとレベルダウンする。
それで来場したお客さんに不満を持たれないため、記念式典的な
性格をどうしても持たせなくてはならなかった。何とか16周年を
祝うアイデアはないか、と頭をひねった末に、2進法で言えば
16は10000、というキリのいい数になると思いつき、
そのために2進法解説部分をプログラムに加えたのである。
最初は私が朗読で練習やったが、これは解説を書いてもらった
植木不等式さんに変更。

近衛さんにハッシーの着付け頼んだが、ハッシーも疲れている
と見えて、その衣装(陰陽師。貸衣装で“神主風”というのを
IPPANさんに借りてきてもらった)のまま、地下楽屋の
畳の上に大の字になって寝ている。神主殺人事件みたいだ。
菊ちゃんはメイクでホンモノの平安女性みたいになっている。
岡っちはまだホラリオンのチラシが上がってきていないので
イラついていた。

「何か忘れている」
という予感大当たり、山口監督の『Pマン予告編』の
DVDを家に忘れてきたことに気がつく。
もっとも、これは持ってくるべきと思っていて忘れたのではなく
以前に手渡されたのを、まさか本チャン用とは思わず、チェック用
デモテープとばかり思っていたのである。

ゲネが終わった頃合いを見計らい、タクシー飛ばして新中野に
戻り、トンボを切って池袋に戻る。40分くらいで行って帰れるかと
思ったが、1時間かかってしまった。
到着は12時5分くらい。すでに客入れ始まっている時間だが
まだなので、何ごとかと思ったら、音響調整にやはり時間がかかって
いるとのこと。

すぐに着替えて、司会の準備。ケロロ軍曹のコスプレの声ちゃん、
中国(台湾?)の貴族夫人ぽい衣装の本郷さんに並んで、私は
黒づくめの背広姿。菊ちゃんが
「なんだ、コスプレしないんですか〜?」
と言うので、これがカラサワシュンイチのコスプレなんだ、と
言ったら笑っていた。

……今日の日記は開幕前の舞台裏の様子を詳しく記述してみました。
開幕後のことは、観客のみなさんの日記に詳述。ミクシィ日記から
拾った主な御意見御感想を要約させていただく。

◆開演前の稗田おんまゆらさんの爆笑緒注意。恒例のシュプレヒコール
「みなさーん! 最低ですかー!」
「最低でーす!」
がいい。

◆開会宣言前の寸劇。オープニングで水を手渡してくれた女神コスプレの
お姉さんが美人さんだな、と思ったら劇団の女優さんだった。
『聖闘士星矢』のアテナみたい。

◆タイムキーパーの声ちゃん、第一回から可愛さが全然変わってない。

◆司会の唐沢俊一氏曰く
「今年はバターとトンデモが不足しております」

◆皆神龍太郎氏による基本説明。以前にもこの大会に参加された方、と
挙手を求めたら、ほとんどがリピーター。

◆『と学会結成10000周年記念』とスライドが出て“?”と思ったら
16周年を2進法で表記したものだった。昨年の第15回の節目は
“つい忘れていたので今回強引に記念にする”(司会の唐沢俊一氏の
MCより)。

◆『と学界結成秘話・山本ひろし物語』。チープ感あるものだったが
さすがプロの演技と撮影で楽しめた。
「山本さんってSFマガジンでSF小説を連載するのが夢なんですね」
というのが
「自作のロリコン小説にロリコンイラストを描いてコミケに出すのが
夢なのね」
までエスカレートするのが大爆笑。

◆陰陽師による神事。神事という事で観客も起立させられるが、
立った瞬間すぐ“お座りください”(おいおい……)。
舞台上では九字が切られ、会員たちの業を暴いた後、巫女さんに
悪霊をとり憑かせて祓う。その呪文が“ふぉるしふぃえいぶる
ぱらのまふぇのみな”なのに会場爆笑。
そして巫女さんは、某ホラー映画のようにブリッジしたまま
会員のほうへスパイダーウォークで縦横無尽に迫っていく。

◆『と学会エクストラ』
・キリストの聖遺物にまつわる陰謀論。ここでの聖遺物というのは
「ちんちんの皮」。
・トンデモ文房具。癒しのボールペンとかもんじゅの燃料棒を模した
ボールペンとか。一番会場が食いついていたのは、萌え文具
『ぷれい★ステーショナリー』(笑)。
・変なまんが。聖アオカン、チャンピオンのディナー、映画版御用牙等。
意味わからない作品ばかりだがトークの妙もあって非常に面白かった。
・明木先生の発表は毎回安定して面白い。ケロロ軍曹の中国版と
『はれぶた』の中国版が今回のネタ。無駄にガンプラ知識のある
ケロロ翻訳者。はれぶたの翻訳が難しい言葉遊びをうまく訳した
訳者すげえ。
・『チャージマン研』 が一番ウケていたような。

◆大賞発表は作品が小粒という以外に、会長の説明にも運営委員の
ツッコミにも整理されてなさがただよってイマイチ。マイクの音量
のせいか聞き取れない部分も多し。体調不良なのか永瀬唯氏が
椅子から転げ落ちるというハプニング。

◆宣伝ワクの『Pマン』、明日のトイフェスでクライマックスシーン
撮影してその日に完成記念上映というのがスゴい。

◆杉ちゃん&鉄平くんは、今年は宣伝という枠で登場。
「ベートーベンがパソコンを買い求める為秋葉原に赴き、石丸電機と
オノデンとソフマップとヨドバシカメラをハシゴする」
というパワーアップしたネタを披露。ブラボーの声があがっていた。
出来ればアンコウ家族も入れてほしかった。

◆圧巻は今年の演芸ゲストとして登場した活動弁士の坂本頼光。
『サザザさん』のネタはカオスすぎてとてもとても書けない。
神と言っていい。『ゴジラ対鞍馬天狗』も、古い役者たちの声帯模写が
凄くうまい。これで28歳というのはまさに神。よくこういう芸人を
見つけてこられるもの。

◆トンデモ本大賞、『「富を「引き寄せる」科学的法則』だったが、
著者は19世紀の人。賞をどうやって送るのか?

◆今回はネタが小粒だったが、他の演芸が盛りだくさんで楽しめたので
満足だった(ほとんどの意見が同じようなものだったが、一人、“変な
方向に行っているのでは……”という指摘あり)。

◆豊島公会堂、椅子が狭く、ロビーが狭く、トイレの数が少ない。
また、暑かったせいか、けっこうオタク臭がきつかった。

……皆様、ありがとうございます、と感謝の念多々。
司会と裏方兼任で大変だったが、実に楽しい会だった。
オタク臭の問題は、痛し痒し。天気がよかったことが裏目に出たか。
あと、永瀬さんは本当に具合が悪そうで心配だった。

終わってサイン、長蛇の列になる。
出ても握手待ちの人がいたり。
おかげで招待のみなさんにほとんど挨拶できず。
休息時間に飯塚昭三ご夫妻と、どどいつ文庫ご夫妻&ちんちん先生に
挨拶できたのみ。NHKのYくん夫妻は地下楽屋に私を探しに
来てくれていた。山本会長と名刺交換してもらう。
「僕、ネットスターの大ファンなんです!」
と会長が言って、Yくん喜んでいた。
杉&鉄は今年も100枚近くCDを売ったとか。
『トンデモ音楽の世界』も、予想を上回る予約数。
クリエイティブの人たちも興奮していた。

クリエイティブの人も楽工社のH社長も、とにかく頼光さんに
ビックリした模様。Hさん、
「唐沢さんの連れてくる人たちって、みんな変! 変!」
とちょっと自分のテンションの方が変だった。

松原由賀ちゃんも来てくれていた。
バラシ終わって、撤収。
山手線で秋葉原。この時点ではアキバが翌日、あんな事件の
現場になるとはまるきり予想つかず。
すぐに会長の音頭で乾杯になり、みんな例によってハイエナの
如くにワッと料理の方へ。

笹公人さんなどお客で二次会参加の方々に挨拶、
途中で渡辺克己さんも駆けつける。
そこらで、のび太くんがセットして、プロジェクターで
『山本ひろし物語』を上映。
楽屋裏で働いていて見られなかったスタッフのため。
やはり、裏ネタみんな知ってるこっちでの上映の方が大ウケした。
上映後、出演した役者陣をスクリーン前に立たせて紹介、
みんな揃って山本会長に
「ごめんなさい」
とやる。会長笑って、
「このDVD一枚くれれば許します」
と。なお、観客の感想の中に
「本人出演のビデオ」
とカン違いしているものがあった。一目で違うってわかるでしょうが。

9時にお開き、植木さんに予約とってもらって新宿へ移動、
『上海小吃』へ。いろいろ話弾ませながら紹興酒。
またまた揚げパン、大人気。
マドが楽工社のK山さんと意気投合。
K山さんはものしずかな人なので、こんな面白い人とは
気がつかなかった。

次第に夜も更けて、そろそろ疲れから精神状態のハイも頂点。
細かいダメ出しで、某担当手伝いが大変そうだから来年は人を増やす
必要があるのでは、という発言にちょっとキレて
「そんな甘っちょろいこと言ってるからダメなんだよ!」
とわめいたりする。演劇の公演で、若手役者たちが一人でいくつもの
用をこなしながら、しかも開演と同時に役者となって出演する、
というような状況を見ていると、そういうヌルマユ的な
考えに腹が立ってくる。緊張感を持って全員が徹底的に忙しい、
という状況の方が物事はうまく進むのである。

珍しい私のキレにハッシーとオノともやしが凄く面白がって
眺めていた模様。
タクシーで帰宅。
この運転手がまた、床屋左翼的なことをこっちに吹っかけてくる
ので、酔余のイキオイで論破してしまう。
オトナゲないことかな。
3時就寝。狂騒極まれる一日であった。

写真提供:FKJさん、大沢南さん

Copyright 2006 Shunichi Karasawa