裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

月曜日

アニメタル・ジャケット

「 口でクソたれる前と後に『萌え〜』と言え! わかったかウジ虫ども!」
                           (ハートマン軍曹)

※『ラジオライフ』インタビュー 『熱中夜話』打ち合わせ 『東京中低域』ライブ

朝8時半起床。
曇天、いまにも降り出しそうな空模様。
日記などつけて、9時、朝食。
キウイ、ミニメロン。
コーンスープ。
母といろいろ今後の話。

やはり雨だと自分の調子つかめず。
雑用ばかりで(まあ、大事な雑用なのだが)昼は
あっという間に過ぎる。

山口さんから、大賞上映ビデオについて頼もしい報告。
一方で大賞で流すPR用DVDがマドから出来上がってくる。
こちらも素晴らしい。
昨日気がついたが、来年の大賞が6月第一週として、
私は5月19日まで『トツゲキ倶楽部』公演に出演中なので
あった。またまた火を吹きそうなスケジュールを
自ら選ぶことよ。

こないだ快楽亭と、そろそろ本決定になったという某師の
“円生襲名”の話をしたが、今の若い人にはピンと来まい。
そもそも名跡とかいう概念を今の子は持ち合わせていないのでは
ないか、と思う。個人主義教育はそこまで日本人の感性を変えている。
知り合いの女性で中村児太郎のファンだった子がいるが、
児太郎が福助を継いだとき、
「児太郎みたいなカッコいい名前を、なんで福助なんて変な名に
変えちゃうの?」
と文句を言っていた。それは今の感覚では絶対正しい。

伝統芸というのは、基本的に“上が死んでくれないと自分が上へ
いけない”世界である。従って、師匠の死というのは、
哀しい反面、どこかに解放感と、
「あの名前はさて、次に誰に行くのか?」
という好奇心が手伝って、妙にハイテンションなものになる。
落語家の葬式に何度か顔を出したことがあるが、いや、
にぎやかなものだった。

三遊亭円丈の『御乱心』の中で、悪役にされている円楽に、
唯一同情したのは、師匠の円生の通夜の晩に大笑いし、円生の
名跡の行方などを話題にしているている円楽を円丈が憎々しげに
見て、師匠の通夜の晩くらい悲しめ、と言っているところである。
あれは円楽にとっては落語の世界のしきたりを守っているに
過ぎない(円生自身、噺のマクラで落語家の葬式とは、
湿っぽくなってはいけないものだと言っている)のだと思う。

昼は焼肉弁当。
カルシウム分を摂取するためご飯に小魚ふりかけをかけて。
雑原稿カリカリ書いているうちに、もう3時。
地下鉄で新宿に出て、バスで渋谷。
事務所でTくん来て、『ラジオライフ』特集記事インタビュー。
引き続き単行本の話。
なんと営業からの要望で発売が早まり、これまで第一次締め切りと
言っていた期日がデッドエンドになったとのこと。
刊行が早まるというのは良いことではある。
とはいえ、他の仕事との兼ね合いもあって、全部それらを
調整しなおさなくてはならぬ。
内心、悲鳴をあげる。

それから地下のベラミに行き、NHK『熱中夜話』打ち合わせ。
……の筈が、十分過ぎてもダレも来ず。
おかしいなと思い、オノにメールしたら電話来て、
相手は東武ホテルで待っている、とのこと。
お互いの“いつもの場所”という言葉への認識の違いがあった
らしい。

あわてて東武に行き、無事打ち合わせ。
とはいえ、その後での待ち合わせがあるので15分ほど。
田中公平さんとか、アツい人がいるのでなかなか
構成が大変だったようだ。
2時間回し×2回なので、なかなかの長丁場となりそう。

タクシーで下北沢。麻衣夢ちゃんと、6時10分の待ち合わせ
ギリギリになる。
雨はまだ降ってないのが幸い。
下北沢440まで。
会場に行くまで、道々域員の人たちと会うのはいつものこと。

入場を待つ間、松本さんと三人で雑談。
今日は前売の人たちの後に入ったが、こないだとほぼ同じ
場所のソファ席に座れた。
月曜のライブのことなどいろいろ麻衣夢と話していたら、
同じテーブルを共有している女性客から、
「あの、唐沢俊一さんと麻衣夢さんですよね?」
と話しかけられてビックリ。
『御利益』を観に来てくださったお客さんだった。
ルナと域は全くつながりなく来てくれているという
ことなので、そういう人とたまたま同じテーブル席につく、
というこの西手新九郎にちょっと驚く。

東京中低域のアルバムに『十一種』というのがある。
もちろん“ジューイッシュ”のシャレだが、メンバーが11人、
という意味も込めている。
今回から、新メンバーが一人加わって、12人編成になった。
編成ったって全部バリトンサックスであるが。
いやあ、バリサクって楽器は、一人増えるだけでもこちらで
感じる音量、迫力まるで違う。文字通り、こっちの体が揺さぶられる
ような快感を覚えた。

麻衣夢曰く“中低域さんのライブはいつもシュール”。
今回も途中でバリサク電話相談室なんて企画があったり、
後関さんと田中さんのコラボ演奏が雑談でいつまでたっても
始まらず“早く演奏しろ”と指示が出たり、やりたい放題。
しかし演奏の盛り上がりは、お客さんが台風接近下の月曜にも
関わらずぎっしりだったこともあって最高だった。

終わって水谷さんに麻衣夢ちゃんの新譜『JEWEL』差し上げて
他の域員さんたちにも挨拶、雨がまだそれほどでもないので
東北沢に久しぶりに足を伸ばして、『和の○寅』。
気になっていた件も聞いたがおお、という展開。
安いシャンパンで乾杯。

それから石川の酒『いきな女』(手取川)ともう一種、
仕上げは焼酎『悪の美学』で。
突き出しの中に、茹でソラマメと阿多福豆の取り合わせがあったので
茹でソラマメの方をまずぱくりと食べて驚いた。
ソラマメでなく、チーズに色をつけて、ソラマメの形に固めたもの
だった。あと、カンピョウもあったので、ワサビおくれ、と言ったら
「お、粋だね」
と。昔、行きつけだった寿司屋で覚えた食べ方。
カンピョウにワサビはお気に入りのつまみなのである。

あと、カツオを賽の目にしたものをニンニクチップと酒盗で和えた
共和えとか、イカの刺身でカラスミをはさんだものだとか、
いかにも酒の進みそうなものに、岩ガキ。
それと、ご飯大好きな麻衣夢のために土鍋で炊いてもらった
アサリご飯。
この店も通い初めてもう5年以上。料理の質がずっと右肩上がりで
あるのは驚く。

ワイワイ言いながら食べていたら、遅くなって入ってきた客が、
外人さん。常連らしい。聞いたらウズベキスタンからの政治留学生。
「へえ、ウズベキスタン。名前は?」
「ジョン、デス(もっと中央アジアぽい名前かと思っていたので
ちょっと拍子抜け)」
日本語、ペラペラとはいかないがうまくて、会話はずみ、
しまいには一緒に写真を撮った。
写真でもわかるようにモロに外人顔のジョンだが、私の顔を見て
「本当ニ日本人デスカ。店ニ入ッテ顔ヲ見タ瞬間、“ア、外人ガイル”
ト思イマシタ」
と言い放った。そんなに日本人離れしたご面相なのか、自分は?

12時半近くに帰る。
台風やっとそれっぽい降り方になってきた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa