裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

土曜日

アニメ唄えば

I'm singin' in the “moe”
Just singin' in the “miku”
What a glorious feelin'
I'm happy again……

※単行本原稿(未完成) 『肉眼夢記』打ち上げ

朝9時45分起床。
携帯がコートのポケットに入ったまま
クロゼットの中だったので、鳴ったのに気がつかず。
あわてて母に電話して、朝食は入浴後にしてもらう。

10時15分、朝食。
イチゴとリンゴ。
アオマメのスープ。
『ぶらり途中下車の旅』、最後だけ。
食べ終わって、ゆっくりと入浴。

講談社現代新書『東京裁判』(日暮吉延)読了。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062879247/karasawashyun-22
東京裁判を、肯定論、否定論のどちらに与せず、ひたすら
“政治史としての”視点から見る、という著者のクールさにしびれる
(近影で見る著者はちょっとモデル風なイケメン若手学者である)。
敗戦国のなめねばならぬ苦渋としてとらえる従来の東京裁判イメージ
から距離を置き、実は日本が東京裁判を政治的利用していたという
指摘や、アメリカが必ずしも裁判の進行や方向性を自在に操れていた
わけではないという事実を新たな資料と共に提示しているのがいい。
さらには、大抵は東条英機らの死刑判決までで終わる東京裁判史の
通例をくつがえし、その後さらに三章もの文章量を費やして、
戦犯全員釈放までの過程を描いているところも新鮮だった。
判決から5年後の1953年頃には、巣鴨の収容所は無期懲役のはずの
戦犯たちまでが堂々と外出し、夜になると帰ってくるという、まるで
アパートか寮のような状態になり、外泊もアメリカの正式抗議にも
関わらず最大30日まで認められるようになっていた、
などという事実は初めて知った。

昼は昨日の鯨皮を煮た残りの汁を味噌と白醤油で味付けし、
ご飯をぶち込んで、卵を落とした鯨雑炊。
うまいうまいと平らげる。
鯨の脂で寒さもやわらぐ感じ。

4時まで原稿、なかなかの分量になり、まだ完成せず。
バスで渋谷に出る。
車中で携帯に電話、また『探偵ナイトスクープ』から。
事務所で見るからメールを送っておいてくれと言っておく。
仕事場、母が掃除に来てくれていた。

メール着到、見ると梁田貞(『城ケ島の雨』や『どんぐりころころ』
の作曲家)の楽譜についての問合せ。ここまでメジャーな作曲家で
あれば、彼が教鞭をとっていた日比谷高校に資料室があるから、
そこに問い合わせればいいだろうと電話して答えたら、どうも、
明日くらいまでにビデオを作らないといけないらしく、
日比谷高校は土日は休みなので……ということだった。
そこまで面倒は見きれん。

オノも出社したので、二人で神山町の居酒屋『福しま』へと向かう。
株式会社コダイの、実相寺昭雄追悼番組『肉眼夢記 実相寺昭雄〜
異界への招待』打ち上げ。実際の収録ではお会いできなかった
京極夏彦氏を含め、原知佐子未亡人、寺田農氏、池谷仙克氏、
また番組のドラマ部分出演者の方々と挨拶。コダイのスタッフのみなさん、
NHKのみなさんとも久闊を叙す。

『福しま』は、以前よく昼飯を食っていた店である。
夜に行って酒を飲んだことも何回かある。
まあ、何というか昭和な店であって、出てくる料理も極めて
家庭的、おでんと刺身、つくね串、それにウインナーソーセージ炒め
(ちゃんとタコにしてあった)である。
おでんの鍋が煮詰まらないか、刺身が温まらないうちにみんな
食べているか、店のお母さんが常時見回っている。
いろいろ注意されたりする。
ちょっと怖かった。

近くの席にお座りになっていた冬木透先生といろいろお話が
出来たのが収穫。本多猪四郎監督のお話などもうかがえた。
実相寺監督論に関しては私の意見に何度も
「いや、あなたの言う通りだ」
と賛同してくださる。要は
「天才として見るより、変人・奇人として見た方がわかりやすい」
ということ。いや、最高の変人、最良の奇人ではあったが、
「天才というもてはやし方だけでは実相寺の本質はわからんよ」
ということで冬木先生と意見の一致を見る。

打ち上げも終わりあたりでやっと京極さん(さすがに人気で
周辺に挨拶に来る人が絶えない)と話が出来る。
某氏のこと、それから某企画のことなどで盛り上がり、周囲にも
ウケた。

終わって店を出る。ご飯物がないので腹が空く。
大晦日に入った蕎麦屋でちょっとタグって、とか思ったがもう閉店。
仕方なく駅の方まで歩いて英寿司。のり巻きでネギトロ、うにきゅう
など。焼酎仕上げにやって、やや酔い気味。
タクシーで家に帰って、すぐベッドに潜り込んで寝る。

※打ち上げの写真。京極さん、役者の赤星さん、語る冬木先生。

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