裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

水曜日

ブロードウェイ・メロディーとブルーザー・ブロディーは似ている

ような気がする(弱気)。

※フィギュア王原稿 書評委員会

朝9時起床。
朝食の報せ、待ってもらってまず入浴。
5枚刃ヒゲソリ、さすが凄まじいツルツル感が剃髭後あるが、
ツルツルが気持ちよくて撫でているうちに、伸びてきているのも如実に
わかる。あ、と思うとまた剃りたくなってくる。

朝食、9時半。
バナナとイチゴのヨーグルトがけ、茶碗蒸し。
草思社が民事再生法適用申請とのニュース。
昨日の新風舎倒産のニュースはまあ、むべなるかな、だったが
草思社までとは。中小出版社の中ではベストセラーも多く出しているし、
話題作を常に供給していたところなので驚く。
そう言えば『倒産社長の告白』という本なども出していたのが皮肉である。
本来、これくらい話題の本を出している出版社がつぶれるというのは
業界全体のシステムが異常である、ということ以外の何ものでもない。
再販委託制度をもう一度洗い直し、きちんと“商売”ができる、
正常な業界に出版界を建て直す時期だろう。
『出版再生』(紀伊国屋書店)なんて良書もあるのだから。

まだ北海道のオノにスケジュール予定メール。
イベントの多さに頭がクラクラする。
月曜日にシアターχで柳下美恵さん(柳下毅一郎氏夫人)に会い、
いろいろ無声映画関係の面白そうなイベントにお誘い受けたのも原因。
ところでそのオノが北海道でアップした表日記のトップが、何か
変なことになっていたのであわてて修正。同じ書き込みが五つ以上も
アップされていた。

フィギュア王原稿。
前から書きたかった内容なので楽しく書く。
昼はイカのかき揚げ弁当。あふあふと食べる。
4時半、原稿書き上げてメール。
K子にも資料のYouTubeアドレスと共に送る。

ヒラリー・クリントンが逆転でニューハンプシャーでオバマに
勝利、とのニュース。なかなか面白い。選挙が面白いのは
どちらの陣営も徹底的に選挙戦にドラマを持ち込み、
エンタテインメントにさせているからである。
選挙はアメリカ人にとり大きなオマツリであり、あまりに
これに全力を傾注しすぎて、最近はいいかげんに連中も
少しネを上げ始めているらしい。しかし、これ以上テンションのあがる
娯楽はまず、あるまいからなあ。なにしろ賭けの担保が世界の安全と
景気なのである。

ホッピービバレッジに注文したり、メーリングリストに書き込んだり
しているうちに時間が迫って、あわてて家を出、地下鉄。
朝日新聞社書評委員会。
新宿で大江戸線に乗り換えるつもりが乗り越してしまい、
本郷三丁目まで行って乗り換えようと思うがこれが
大失敗、やたら遠回りになる。
結局20分以上の遅刻。別に支障なかったからいいようなもんの。

地下鉄車中で講談社選書メチエ『近代日本の右翼思想』(片山杜秀)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062583968/karasawashyun-22
読了。著者は近代政治思想史の専門家でありながら音楽系の
評論もやっていて、『伊福部昭の宇宙』(音楽之友社)にも
執筆している。本書にも伊福部昭の親戚である思想家・伊福部隆彦
をとりあげている。音楽に詳しいせいか、文章にリズム感があり、
読んでいてこちらに躍動感が伝わってくる。
次々に紹介されていく右翼思想家たちは、あとがきで著者自ら
言っているようにマイナー系、境界線系、それもかなりギリギリの
ところに位置するような人々も多いが、それだけに、
こんな思想家がいたのか、という驚きと興味(以前なら荒俣宏の
範疇だったような人も多い)があり、さらにメジャー過ぎて逆に
思想界から軽視軽蔑されている安岡正篤などの再定義なども興味深い。

とはいえ、一編々々は面白いのだが、これを右翼思想通史として
読むと、ちょっとつながりに無理があるのではないか(特に第四章
の、右翼思想と身体論、てのひら療治などの結びつきにもっていく
のは)と思える。これは、各章がもともとは別個に書かれた論文や
講座記録であったものを、無理にまとめて通史としようとした
ことからくるものだろう。その、いささか無理なつなげ方
(各章のサブタイトルが“世の中を変えようとする、だがうまく
ゆかない”“どうせうまく変えられないならば、自分で変えようと
思わないようにする”“変えることを諦めれば、現在のあるがままを
受け入れたくなってくる”“すべてを受け入れて頭で考えることが
なくなれば、からだだけが残る”)がまた、面白くもあるのだが。

書評委員室で弁当。高級弁当というのは酒の肴みたいなおかず
ばかりで、飯はほんのちょっと。これは宴会向けのものだろう。
希望本の落札、まずまず、というところ。ちょっと気になる本が
あったが、この人が欲しがるだろうな、と思う人がとっていった。
私の方でも一冊、
「これは唐沢さんが落とすかな、と思ったらやはり落とされました」
と言われたのがあったが。

終わったあと、10時ころまでアラスカで雑談。
T氏が、“ブッシュをある程度評価している人は全アメリカ
で現在オバマだけかも”と言っていたのが興味深かった。
あと、アジアにおける日本マンガの、文化侵略的席巻について
ちょっと話し、しまいには銀座のベトナムラーメンのことなどに
なる。ハイヤーで送られ、自宅で、腹が減ったので、
ミニステーキとガーリックライス作って食う。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa