裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

金曜日

チャーリーと千葉麗子と工場

三題噺みたいだな。

※日テレネタだし 『男の部屋』コラム

朝7時半起床。
入浴洗顔如例、9時15分朝食。
キウイ一切、リンゴ五切、オレンジ三切。
コーンスープ。

日記つけ。
エベレスト初登頂者(初帰還者である、という説もある)
エドモンド・ヒラリー氏死去の報。
“ヒラリー卿”と書いている記事があったが、ナイトの称号は
ファーストネームの前につくのでエドモンド卿でないといけない。
では同じくナイトの称号を与えられたU2のボノはどうするのか、
とか思うが、ボノはアイルランド人なのでサーはつかない(同じ
理由でアメリカ人のスピルバーグやブラジル人のカルロス・ゴーン
にもサーはつけない)。ヒラリーはニュージーランド人であるが
ニュージーランドはアメリカやアイルランドと同じ旧植民地でも
英連邦なのでサーをつけてもいいのだそうである。
なんだか屈辱的な感じがするが。

なお、ヒラリー・クリントンは自分の名前はエドモンド・ヒラリーに
由来する、と主張して、夫のクリントンの自伝にもそう書いて
あったが、ヒラリーが生まれたのが1947年、エドモンド卿のエベレスト
登頂が1953年で、計算が合わない。最近になってやっと引っ込めた
らしいが、そもそも姓から名前をつけるか?

明日の収録準備ちょっと。
最新ネタをいくつか欲しいというので
これの選定。ネタよりも最新ニュースのうちどれを採用するかに
悩む。昼は母の室で最後の雑煮。
ウチの定番雑煮は餅二切れ、鴨肉、大根、ニンジンという
シンプルなもの。ポイントは三つ葉と柚子のヘギ。
国立民族博物館長の石毛直道氏の本に、アマゾンだったかアフリカ
だったかの原住民の村落に滞在して現地調査しながら新年を
迎えたとき、持ち込んでいたパックのご飯を搗いてつぶして餅(まがい)
にして、あとは醤油と現地の素材だけで雑煮を作って祝うという
エピソードがあった。そこまで苦労して、初めて日本人の
アイデンティティは保てるのである。
正月もマックでOKという今の日本人は大丈夫かね?

ネタ選定とまとめ、結構時間がかかって4時過ぎになる。
気圧のせいもあるが鬱っぽい。
夕方まで、という話だったがなんとか間に合った模様。
バスで事務所。車中書評用読書。
事務所、やはり出てよかった。オノも帰京や母の看護で
この数日出ていなかったので、郵便受けから郵送物がハミ出して
いる状態だった。

書評する本に対する比較で読まねばならない参考書籍を
書庫から持ち出してくる。FAXもかなりたまっていたので
いくつか対応。
それから、本日〆切りの『Memo・男の部屋』コラム原稿。
最初のネタでは、どう文章を切り詰めても4行オーバーする
ことがわかり、後半のくだりを捨て、前半ネタをふくらませて
まとめることにする。

8時45分、書き上げてメール。
バスで帰宅。車中やはり読書だったが、凄まじく背の高い、
顔も浜口京子ほどには可愛い女子中学生が、所属する部の
マネージャーらしき子(こっちは対照的に凄く小柄)と、
トレーニングのことから恋人のことまでをずっと話し続けていて、
そっちの方が面白いので、読むフリをしながら聞き入っていた。
何か彼女には特別トレーニングプログラムが組まれている
らしく、体格からいって、おそらくそっち方面でかなり期待
されている子なのだろう。そのうち、テレビや新聞で彼女の
顔が大写しになるかもしれない。憶えておこう。

サントクで買い物、白菜と豚肉・カボチャの蒸し物と
ホタテのホワイトソース焼き。
ニンニクのみじん切りをバタでよく炒め、乱切りにしたホタテも
くわえて塩コショウをよくして熱を通す。耐熱皿(自宅にはないので、
ケーキ用のアルミカップ)に入れ、ホワイトソースと粉チーズを
かけてオーブン(もないのでガスレンジ)に入れ、5分ほど焼く。
日本酒にもワインにも合う手軽な肴。ツブ貝とかの方が好みかも。

DVD『X博士の復讐』。タイトルからしてなげやり極まるが、
かのエド・ウッド脚本、監督は『双頭の殺人鬼』(1959)を
撮ったケネス・G・クレイン。
クレインは『双頭の殺人鬼』でも日本を舞台にして珍妙な
日本風景を見せていたが、よほど日本が好きなのか、またあれで
とスポンサーから注文されたか、今回も日本ロケをして、
奇っ怪至極な日本風俗を見せてくれる。『双頭の〜』は59年
だからまあ、変な日本観も仕方ないかという感じだが、この
『X博士の復讐』は1970年製作であり、それでまだこれかい、
と呆れかえってウレシくなる。

ストーリィは例によってエロの冒険者さんのサイトで見ていただきたい
http://santo.cocolog-nifty.com/sf/2007/08/xthe_revenge_of_8f93.html
が、その投げやりなこと前作をはるかに超える。
そもそもの基本設定が
「NASAでロケット打ち上げの責任者だった植物学者ブレイガン博士
が過労でノイローゼになり、休暇をとって日本にやってきて、
食虫植物のモンスターを作り出す」
というのが凄い。なんで植物学者がロケット打ち上げの責任者に
なっているのか、というあたりでもう、大笑いである。

軽井沢のホテルに行く道には浅間山の噴火で岩がぼんぼん飛んでくるわ
(でも日本人は火山噴火に慣れているからへいちゃら)、ホテルには
せむしの管理人がいてパイプオルガンをひいているわ、海女たちは
おっぱい丸出しだわ、作り出した植物人間はまるでショッカーの
怪人なみのチャチさだわ、山狩りをする軽井沢の村人たちが
口々に“ナムアミダブナミアミダブ”と唱えているわ、音楽がまるで
バラエティの伴奏みたいな安っぽさだわと、どこを切ってもB級、
Z級の味がして、この手の映画マニアには涙が出るお宝作品。

植物人間は、ハエトリソウと、やはり動物を食べて生きている
ペシュキュローサという海中植物(でも説明ではイソギンチャクの
一種と言っている。イソギンチャクは植物ではないのだが)を
接合させて作り出すのだが、このペシュキュローサを調べに
博士が上野の科学博物館に出かけるシーンがある。その中の
水棲生物展示を見て、日本にペシュキュローサが棲息している
場所を知るのだが、この博物館内はセットではなく本物だろう。
よくこんな映画に撮影を許可したなあ。

B級ものを見た後は超大作を見よう、と『史上最大の作戦』の
前半1/3くらいを。冒頭で、『ゴールドフィンガー』で
国際的スターになる前のゲルト・フレーベ(この映画にはこれも
国際的スターになる前のショーン・コネリーも出ている)が
コーヒーをロバで運ぶさえない役で出てくるが、この役名が
カフィークラッチュ軍曹。カフィークラッチュとはドイツ語で
“コーヒーブレイク”である。別の資料ではKaffe kanne軍曹に
なっているものもあり、これはコーヒーポットのこと。
どっちにしても役から後付けした名前だと思う。

結局、2時まで起きていてしまった。
就寝前にメールチェック。編集部からの報告でちょっと吹くもの
あり、ニヤニヤしながらベッドに入る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa