裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

土曜日

大したもんだよカエルのしょんべん、宮本亜門だよ屋根屋のふんどし

一部趣味の方なら舌なめずりもん>宮本亜門のふんどし

※『世界一受けたい授業』収録 『プロント・プロント』原稿 『週刊新潮』コメント 『奇想天外シネマテーク』

朝9時起床。
入浴後回しにして朝食。
ブロッコリスープ、オレンジ。
母の室に異臭あり。
ゆうべちょっとマンションのロビーにもただよっていた。
聞いたら、電気ストーブをつけたままうたた寝して、
毛布を焦がしたそうである。
化繊が焦げた刺激臭だった。
命にかかわる、今後徹底して気をつけろ、と言うが
本人至ってノンキなもの。
このマンションはうちと母の室のみが独立した別棟みたいに
なっており、類焼で訴えられたりする危険はないと思うが、
それにしても。

ぶらり途中下車の旅に、建築家の建てたユニークな自宅が
紹介されていた。吹き抜けがあり、大きなベランダがあり、男の夢
といった感じの住宅。だが、奥さんに意見を聞くと、
「いえもう、寒くて寒くて」
と、ヘキエキの様子なのに笑う。
私は現代建築家という連中は日本から美観を奪った罪で全員
投獄してやりたいと思っている男なので(ここらだけ美輪明宏と
同意見)ちょっと痛快だった。

最近、この『途中下車』の前番の、5分番組
『オススメッ』が最近ツボ。なにげなく三遊亭白鳥が出ていたり、
メジャータレントではないが、どマイナーでもない、中間の
芸人さん俳優さんが、自分の故郷や、また仕事で行った先の
名物を紹介する、というだけの番組で、今日はジョーダンズの
山崎まさやだったが、先週は米倉斉加年だった。何か微妙。

自室で日記つけなど。
やがて12時半、着替えてロビーへ。
日本テレビ『世界一受けたい授業』収録。
雨降りでちょっと憂鬱。
オノは来たが迎えのタクシーが来ない。
どうも渋滞で遅れているらしい。
ちょっと待つうちやってきて、通りがメチャ混みなので
裏道を通ってきた、と言う。で、青梅街道と新宿のあたりが
渋滞しているが、その道でいいか、と訊く。他にここからでは
汐留に抜ける道がないので、それで、と指示。
ところが走り出したらやけにスムーズ。運転手さん拍子抜け。

汐留日テレタワー、ひさしぶり、か。
控室に通されて、弁当(今半のすきやき弁当)で昼食。
台本読む。マワシ(収録)時間は45分だが、それにしては
打ち合せで出たりしたネタが全部詰め込まれているって感じで、
ギュウギュウ過ぎぬか心配。

メイク室で柴田理恵さんに挨拶。去年の生前葬のことなど。
やがて本番。生徒は次長課長、花田景子、梨花、ほしのあき、
高橋英樹、細山貴嶺など。ほしのあきが全然露出のない服だった
のに目が行く。これが“売れてくるに従い、グラビアアイドルは
バラエティ出演時の服装に露出が少なくなる法則”か、と感心。
ギョーカイ用語ではこれを“着込む”と称するそうな。
「あの子も最近、着込んできたねえ」
というと、“売れてきた”という意味なのだとやら。

堺校長も上田も温かく迎えてくれて久しぶりだがリラックスした
感じで授業できる。これは珍しいだろう、と思ったネタをみんな
知っていたり、逆に手慣し足慣らしのつもりのネタにみんな
首をひねったり。以前言われたことだが、雑学授業は他の先生の
授業と違って、生徒役もいろいろ噛んでこられるので、
出演タレントにはおいしい時間らしい。久しぶりに呼ばれたのも
それが原因か。

収録、ギュウギュウかと思ったら全部ネタをやって、ぴったり
45分内に収まる。私の方で慣れたのか、私のテンポを読んで
台本が作成されたか。押えのためにアドリブ部分、台本通りバージョン
も吹き込んで、収録終了。放映日は2月2日だそうなのでよろしく。

車出してもらい、事務所へ。
今日も、郵便入れを明けたら、配送物がなだれのようにドドッと
あふれ出してきた。
返事等必要なもの分類し、日記アップ、メールなど連絡事項いくつか。

5時、新宿までバス。ここらで雨は止みかけ。
今夜はまた池袋に出るので、メシは簡単に、と、ちょうど京王デパート
でやっていた全国駅弁大会。凄い人出である。要するに駅弁コミケで
ある(と、いった理解ではいけないのだろうな)。
人気弁当は長蛇の列、すでにこの時間には売り切れになっている
ところも多い。並んでいないところがちょっと気の毒になる。
駅弁ごときで整理券貰って並ぶほど、私の人生の残り時間は多くない、
という思いもあり、いろいろ見歩いた揚げ句、小樽駅の
『おたる海の輝き』弁当(イクラ、蒸しウニちらし)と、
長崎の『ながさき鯨カツ弁当』の二種類を買い込む。
前者は四人待ちくらい、後者は全然列なし。

地下鉄で帰宅、少し睡眠をとろうかと思ったが、その前に、と
プロント・プロントの原稿書き。ネタ五つのバランスを考える。
途中で腹が減ったので、『海の輝き』(このネーミングはどうか)
と、『鯨カツ弁当』を半分ずつ食べる。どちらもさすがに美味い。

もう少しで原稿アガリ、というときに、週刊新潮からコメント
依頼の電話。最初は適当に話していたのだが、途中で熱が入って
「そもそも○○とは……」
「この時代には……」
とサブカル文化史みたいなことまで話し始めてしまい、1時間以上、
しゃべり続けてノドがちょっと痛くなった。おしゃべりだね。
使われるのはホンの数行ではあろうが。

おかげで出ないといけない時間が来てしまったが、せっかく
やり始めたのだから、と、『プロント・プロント』コラム
最後まで書き上げて、急いで家を出て、タクシーで池袋。
運転手さん、私より10歳年上だが、政治論大好きらしく、
また記憶力のよい人で、昭和30年代のエピソードなどを
よく話してくれる。
「池田総理が“所得倍増”ってブチ上げたときにですね、
浅沼稲次郎の社会党が演説で繰り返したのは、“国民が毎日一本、
牛乳を飲める社会を”だったんです。子供ごころにはそっちの
方が具体的にイメージできて、“そんな夢のような時代が来るのか”
でしたけどね、今思うと、そのスケールっちゅうか、目標の
ショボいところが社会党っちゅう党の限界だったんでしょうなあ。
庶民の目線、庶民の目線って言いますけどね、実は庶民の目なんちゅう
のは自分の周囲3メートルから先には出ないんです。そんな
ことでこの国際社会は乗り切っていけません」
野にも政治評論家あり、という感じ。

文芸坐、少し遅れて入る。
河崎カントクと、そのグループみたいな人たち三人。
神保町のミュージックガーデンの人、とか。
私含めて全員黒服なので、ちょっと異様。
IPPANさん、今日はバーバラもオノも来ないので
一人でチラシ折り込みしている。

河崎カントクから新企画を聞いて、ちょっと“へえ”。
ついにソッチの分野のものを撮りますか、という感じ。
制作発表が29日だそうなので、まだオフレコ。
もっとも、分野はソッチでも、やはり河崎作品。
聞いての第一声は“バカだね”である。

やがてすぐトークの時間。
カントクは何も打ち合せしないで45分、話が保つかどうか心配
だったようだが、こっちの予想通り、アッという間に
時間は過ぎ、カントク、“え、もう?”というくらいだった。
長嶋という選手の、世界を“長嶋空間”に落とし込んでしまう
パワーの凄さをアツく語り、『スポーツマン金太郎』は『一刀斎は
背番号6』のインスパイアだと語る。私は怪獣映画との
類似を指摘し、『一刀斎〜』は『キングコング』なのではないか、と。
「猫が野球チームにある日入ってくる映画が撮りたい」
とカントク。私は、ホヤがある日高校の野球部に入ってくる青春小説
がある、と教える。いや、冗談ではなく、ホントにあるのだ。
http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~makizoh/uruuru/hoya_review.html
↑青春小説『ホヤわが心の朝』(福田紀一)

映画は『ミスタージャイアンツ勝利の旗』(1964)、
『一刀斎は背番号6』(1959)、『野球狂の詩』(1977)
『巨人軍物語・進め栄光へ』(1977)の四本。
カントクは最初の一本だけ観て、私は二本だけ観る。
いやあ、凄かった。しかし、バカ映画的内容というより、
むしろ『勝利の旗』の昭和39年の、『一刀斎』の昭和34年の
風俗の方が今の私には興味深い。
『勝利の旗』はたぶん、本当に長嶋や王の自宅で撮影しているんだ
ろうが、その調度などのレトロぽくて懐かしいこと。
ベッドの頭のところの棚には必ずラジオがある、とかいうあたりが。

逆に『一刀斎』の、東京タワーが立ったばかりの、リアル
『三丁目の夕陽』的な、オリンピック前の東京風景は“知らなかった
東京”という感じで新鮮。向いの家との距離が人二人が並ぶくらい
しかない、下町の空間なども凄いが、東京タワーのセットが
チャチなのにも笑う。資料が立ったばかりでなかったんだろうが。
そして、主人公が対決を望んで状況した合気道の達人が、
“増上寺の森を切り崩して、あのような赤白の趣味の悪い塔を
建てる東京にいるのがイヤになった”という理由で旅に出てしまう
というのが面白い。
「あの森は毎晩、空が赤く夕焼けに染まる頃、カラスたちが帰る
ねぐらだった。人間にカラスのねぐらを奪う権利があるのか」
という意見も、当時にははっきりあったのである。
それにしても、木村恵吾という監督は狸御殿映画くらいで
しか知らなかったが、演出のテンポのよさ(ことに前半)、
ことに女性たちの描きわけ方の見事さに大感心した。
『勝利の旗』などと見比べてもはっきりわかるが、
当時(昭和30年代)、最も都会的でセンスのある映画を作って
いたのは、東宝ではなく実は大映だったんじゃないのか?

2時半、IPPANさんに挨拶して辞去。
すっかり雨、あがる。
いつもはみんなで焼肉のいろは、なのだが、今日は一人ゆえ直帰。
タクシー値上げでいくらかかるかドキドキしていたが、
深夜値上げ率が3割から2割になったせいもあり、
それで相殺されたか、そんなでもなかった。
帰宅、メールなどいろいろチェックしつつ、半分残った弁当二つを肴に
ホッピーで。ホッピーを割る焼酎が切れていたのでテキーラで代用。
『海の輝き弁当』で客を呼び込んでいたベテラン調理師さんが
「このウニ、生なの?」
というお客の質問に、
「駅弁で生ウニなんか使っているやつがあったら、防腐剤を
しこたま加えているってことです。本当においしいウニは
蒸しウニなの。ウニのうま味が一番引き立つんです」
と言っていたが、パッケージの写真は生ウニ使っているじゃないの。
いや、私も蒸しウニは好きだが。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa