裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

金曜日

ワールド・イズ・能登・イナフ

うまい魚を食いたいのなら世界は能登だけで十分だ、という観光客の言葉。
            (旅行中につき日曜までの日記はメモ程度の短縮版になります)

朝食、ニンジンとポテトのスープ、バナナ。『オトナアニメ』のゲラチェック、案外ナオシ多く時間かかる。11時半家を出て、12時に仕事場着、講談社『モウラ』ゲラチェック、その他雑用。

12時半、タクシーで羽田。能登行き便は2時5分なので楽勝、と思っていたら凄まじい渋滞でかなり余裕なくなり、あせる。しかも運転手さんがすさまじい鼻声で、なんて言っているのかわからない。なんとか25分前に到着。ロビーで立ち食い蕎麦を食って昼食、このあいだの札幌便でのカタキをとる。

と学会Hさん、FKJさん、それとパイデザ夫妻に挨拶。おや、みなさんも行くのですか、という感じ。お互い、今回は誰と誰がメンバーで総勢何名のツアーなのだかだれも知らずサプライズ旅行となる。使用機までのバスに乗ったら輪島がいたので驚く。里帰りか? マネージャーと、知人の会社が倒産したとかいう景気の悪い話をしていた。

飛行機チョイ揺れ、サービスに温かい飲み物がなくなる。こぼしたときのことを考えてだろう。1時間ほどで能登空港到着、乗合タクシーでさんなみまで。運転手がちょっとたよりなかったが、なんとか無事、到着。ただし、ショートカット(山の中の道を突っ切る)はしなかったので30分ほどかかった。小学生たちがずらりと送迎デッキに居たが、輪島を迎えに来ていたらしい。講演旅行なのか。

さんなみで船下さんご夫妻と久闊を辞す。
「NHK見てますよ」
と言われて驚く。さすがNHK。金沢からの組がくるまでお父さんお母さんの車に便乗して、縄文真脇温泉センターまで。露天風呂で息をつく。上がって雑談、見るとこうでんさんと岡さんがやってきた。さっきまで半島をドライブしてゴジラ岩など見てきたとか。合流して、こうでんさんが宿までわれわれをピストン輸送してくれる。宿にはもう金沢回り組のK子、開田夫妻、しら〜、I矢くん、のび太くんH川さんが到着していた。

さて、その後いろいろガヤガヤして、Hさん見ると、さすが某電話会社務めで、この能登の状況でもネットがつなげるとか(私のエアエイチではダメである)。『ポケット』の挨拶文を送るのを忘れていたので、これで送ってもらうことにする。持つべきは最新機器に詳しい友達。

で、そうこうするうち夕闇迫り、さんなみの宴。いつぞや『華暦』で同席した、輪島出身のK子の簿記仲間のWさんも加わり、にぎやかである。メニューはあまり詳しく書いて人のうらみをかうのも何なので、簡単に書くが、恒例の海餅、魚の串焼き(今回は鯵)、もずく、胡麻豆腐はいつもの通り定番で。刺身がエビ、サザエ、と、ここまではこれも定番だが、それに今回はナメラバチメがつく。ナメラバチメと聞いてヌメロサンク(シャネルの5番)をつい連想したが、後で調べたらキジハタというハタの一種らしい。この刺身も絶品だったが、その皮を細切りにしたものがちょこっとだけ、刺身の脇に盛られていた。ちょいとだけだったがこれが絶品。柔らかくて“ナメラ”の語源だろうがぬめりとしていて、何で味付けしてあるのか、風味舌の上でとろけんばかり。

秋だからキノコ類が出るかな、と思っていたら、こうでんさんに言わせると“コケはまだちょっと先”なのだそうで(この地方ではキノコのことをコケと称するらしい)、漬物にしていたキノコを枝豆を擂った擂り割り汁の実にしたものが出て、この汁がうまいのなんの。さらに、お造りは追加でアオリイカ、ノドグロの目の下50センチはある大物の刺身、さらにオコゼの刺身が出た。その他、自家製豆腐や自家製ふな鮨(アジで作る)やキノコのキムチや、さっきのオコゼのあら汁などが出て、もう満腹。新米のご飯にパイデザの平塚くんなどはいしりをかけただけで掻き込んでいた。

しかし、最高のご馳走は、庭に出て、空を見上げたときの、満天の、降るような星の光景だったかも。草の上に寝転がり悠久の銀河を眺める。わが人間性の卑小さや人生の短さを思い、それらすべてを抹消してすがすがしいまでの宇宙の摂理に合一したくなる。

宿にもどるとデザートに能登栗のモンブランの小さいのが出て、それでお客さんにもらったというギリシアのメタクサを味わう。俗世もまた捨てたものでなし、か。こうでんさんとお父さんに『猫三味線』DVDを進呈、サイン求めらる。ワイノワイノと騒ぎつつ、11時半くらいまで。イビキがうるさいとて、K子の指示で奥の離れにしら〜などと追いやられる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa