裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

月曜日

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━酒場

長い髪のオンナ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!

朝7時半起床。ノドまだタンからめど漸次復調。
9月になってもまだジリつく陽射し。入浴、洗顔、服薬、例ノ如シ。
母が旅行のため朝食は自室でとる。青豆スープ、スイカ、ジャムパン。

ホリエモン裁判の特番を流しつつ日記つけ。いきなり“じご〜っ”というような耳をつんざく音がして、見ると仕事机のわきを巨大なクマバチが飛んでいた。毎朝、猫を庭に出すのでその際にまぎれこんだのだろうが、しかしその大きさに唖然とする。ちょうど窓際のカーテンにとまったので、掃除機で吸い込もうとしたが、仕事机回り用の小型掃除機などでは吸い込めるものでない。なんとか窓をあけて、庭の方へお引き取りを願う。しかし東京もまだまだ自然が豊富だ。

アスペクトのPR誌原稿、談笑本にかまけていたら今日〆切。あわてて執筆、1700wを一気に書く。書き上げてメールしたのが1時33分。2時から時間割で松尾貴史さんとの対談なので急いで家を出る。タクシー飛ばして、なんとか間に合った。

対談は『ダイヤモンドzai』誌の松尾さんの対談連載。この雑誌はビギナー向けの株/投資マガジンらしいが、ノッケから“バブルのときの伯父の絵画への投資で私、死にそうな目にあってますから”と、雑誌の方針とはまるで違うようなことを言う。金に関してはそういう話題ばかりなのだ、私は。

話は(テーマに合っているかどうかはともかく)はずみ、時間割で対談すませたあとは仕事場で写真撮影。ゆうべ母がざっと掃除と片づけをしてくれたおかげで大変に助かった。松尾さんに『猫三味線』サンプル版DVDを進呈。

対談終って、すぐ次の原稿にかかる。『フィギュア王』原稿7枚半。
ネタ出しに苦心するが、書き出したからは好調。それでも8時過ぎまで4時間かかった。

帰宅、サントクで買い物。早煮昆布をもどしながら、NHKのプライム10で『渥美清の肖像〜知られざる役者人生』を見る。ダーリン先生出ているとのことだったがそこは残念、見逃した。肺結核療養のあたりから。

寅さんという生涯の当たり役を得ながら、それに囚われ、ありあまる才能の他分野での開花を阻止されてしまった後半生のドキュメントが興味深い。寅さんシリーズの山田洋二監督は
「寅さんに飽きたとか、そういうことを言われたことはないなあ」
と証言(ま、当たり前で監督の前では言わない)、若い頃のつきあいだった脚本家の早坂暁は、“もう飽きた”と言われたと証言。番組の作りから言って山田洋二は悪役的な役回りになってしまって気の毒である。

寅さんのイメージから脱却しようと自身のプロダクションで製作し、名匠今井正を迎えて作った映画『あゝ声なき友』に関して佐藤忠男が
「いい映画なんだけど、思ったほど面白くない」
と切って捨てていたのが面白い。
「寅さんのイメージから離れようとするあまり、渥美さんらしい自由奔放さがなかった」
……難しいところである。

どう考えても体が尋常な状態でない(表情も苦痛を耐えているように、異様とも言えるほど固い)最後の寅さんの撮影風景の取材を渥美がNHKに許したのはどういう心境だったのか。
「スーパーマン(役の俳優)が、街を歩いていたらファンの子供に“空飛んで”と言われたというンだよね。僕もファンには寅さんになって、24時間手を振っていなくちゃならないンだよね、でも、スーパーマンも実は人間で、二本の足は地面から離れない。僕も同じでね、ずっと手を振ってはいられないンだよ」
……俳優のジレンマを描いて秀逸な番組だった。

たまたま、飯尾憲士『自決』(集英社)を読んでいる。
『日本のいちばん長い日』で描かれた森師団長殺害事件の実行者の一人、上原重太郎大尉の姿を追って著者自身がかつての関係者の間を訪ねて歩く、一級のドキュメンタリー小説であるが、冒頭に映画『日本のいちばん長い日』のことが出てきて、ここでどうして上原大尉だけが仮名の、陸軍航空士官学校黒田大尉という名前になっているのか、
という疑問からこの作品は始まっている。それはいいのだが、そこで
「畑中少佐に扮した中年の俳優が構えた拳銃が火を吐き、上原大尉に扮した若い俳優が軍刀を抜きはなって斬りかかる」
とある。ここが“私的に”気になった。
畑中少佐役の俳優は黒沢年男、黒田大尉は中谷一郎である。この映画公開時(1967年)に、黒沢年男23歳、中谷一郎37歳。どう考えても黒沢を中年俳優、中谷を若い俳優と見間違うわけもない。実際にはこの森師団長殺害事件のとき、畑中少佐33歳、黒田(上原)大尉24歳だったわけでたぶん、著者の脳裏にその実年齢があるので、映画の記憶とそれが混乱したのだろう。思えば岡本喜八監督は“青年将校の反乱”というイメージを絵にするために、畑中少佐をかなり
若返らせてキャスティングしたわけだ。
「頬骨の張った陰険なメイキャップ」
などと言われて(確かにエラは張っている方だが)中谷一郎もさんざんである。

なんでこのことを記したかと言えば、ちょうど彼のことを原稿に書いていたからで、晩年の中谷一郎が、やはり自分の生涯の当たり役であるテレビ『水戸黄門』の風車の弥七役に自分のイメージを縛られて悩んでいたというエピソードを思い出したからであり、寅さんに縛られた半生を過ごした渥美清とちょっとカブって見えたからであった。私もいつまでも雑学の先生でいてはいけないだろうなあ。

9時ころから原稿仕事と入れ替わるようにして、酒。戻した早煮昆布でくーぶいりちー(もどき)を作る。細切りにした昆布、干し椎茸、茹でた豚肉、笹蒲鉾、ネギ等をごま油でざっと炒め、昆布と椎茸をもどした出汁を少し加え、薄口醤油と焼酎で味付けしながら煮る。かなりの薄味にしたが、ダシがしっかり出ているので酒の肴にもちゃんとなる。これと馬刺で、缶ビール1本、日本酒コップ一杯、ホッピー1本。

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