裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

日曜日

キメラ拓哉

 ジャニーズ事務所の美少年たちは遺伝子操作で作られている! 朝から雨。気圧低迷、こちらも最初からありとあらゆる予定を投げてかかる。モノカキとして不便なことであるが、まあ、考えてみるとこういう日があるから死なないで済んでるのかもし れん。

 朝食8時、リンゴとポンカン。クノールスープが寒い日なので美味い。年賀状のクジのアタリをK子が分類している。当たりはたった7枚だったが、中に劇団関係者が2人もというのは凄い率。PAN PAN PISTOLSの八幡薫さんからのと、タッタタ探検組合の谷口有さんからのと。一番劇団員から来た数の多かったのは当然うわの空・藤志郎一座なのだが、全滅。しっかりしなさい。と、言われても困るだろ うが。

 不思議に編集者からのは、この先あまりお仕事しないだろうという人や、会社やめちゃった人からのものがアタリ。現在進行形のお仕事している編集者で当たったのは北海道新聞K氏のみ。あと二通に関しては誰だったか、あるいはどういう編プロだっ たか、さっぱり思い出せないところからのもの。

 11時出勤。仕事場も薄暗く寒々しい。オイルヒーターがこのさなかに動かなくなる。コンセント抜いて再度入れてみたり、いろいろしていたら治った。昼はオニギリ (シャケ茶漬けの素)と黒豆納豆、根深汁。

『月刊Will』なる雑誌から電話インタビュー。
「あなたが両親から受けた教育」
 というテーマで何か話せというので、
「私は幼児期から足が悪かったが、わが家では父母ともに、そういう私を一切特別扱いせず、人前にも出したし、使いもさせ、ビッコとかいう差別用語もかまわず口にした。おかげで耐性がついて、思春期などにそのような悪口を投げかけられても一切気にせぬようになった。最近の家庭では子供の心を傷つけまいと神経質になるあまり、かえって、世間に出て初めて、周囲が自分に優しくないということを知って萎縮してしまったり、キレてしまう子が多いのではないか。あの扱いには今も感謝している」
 みたいなことを述べる。受話器の向こうの編集者の態度は非常に丁寧であったが、しかし問題は自誌がどういう雑誌であるかという説明もなく(いくら花田紀凱氏編集とはいえ『月刊Will』がそんな知名度の高い雑誌とも思えない)、またこのインタビュー記事がいつ発売の第何号に載るのやら、ギャラが発生するやらしないやらの説明も一切なしということ。偽インタビューじゃないか、と思ったくらいだった。

 雨降り続き仕事も手につかぬが、まったく仕事せぬわけにいかず、年末に行った米沢嘉博さん、藤津亮太さんとの鼎談(『鉄人28号』について)のテープ起こし原稿に手を入れる。いつも思うのだが、こういう時の私というのは後で起こしたものを読み返してみて、自分で感心するようなことを必ず言っている。問題はそれを全くその後忘れてしまっているということであるが。

 おぐりゆかからメール。あのオタク大賞でオタクたち(私含ム)に囲まれて必死に頑張ってパンクしちゃった姿を見て、それからずっと心痛んでいたのだが、今日のメールの中に
「オタク大賞司会、出来ればリベンジさせていただけないでしょうか」
 という頼もしいお願いの一行があったのに膝を叩く。彼女を推挙した私の目は曇っていなかった。もちろん、それはオタク大賞スタッフたち全員の希望でもある。なにしろ、やっと、開催4回目にしてオタクたちに正面から“語り”で対抗できる女性司会者が見つかったのだ(児玉さとみさんは別。あの時は私や岡田斗司夫があまりの濃さに引いていた)。……実は彼女の認識がここまで改まるに至っては、その影で『電車男』もかくやのオタク美談があって、今日初めてそれを知って私の方で驚いた。その件でちょっと大塚ギチにメールする。何か、いいドラマを見せてもらったような気分で嬉しくなってしまった。若いオタク世代も案外やるじゃないか。

 7時半、仕事場を出て帰宅。家で食事会。開田夫妻、みなみさん、中西さん。中西さんの持ってきたワインは『件』。新耳袋レーベルだそうである。もっとも、ラベルは関口宏の番組なみにおどろおどろしい(@安倍晋三)が、味はボジョレーヌーボーのような軽いフランスワイン。あと、みなみさん持参の日本酒などと共に、春巻き揚げ、牡蠣の白菜巻き、ラムチョップ、石狩鍋風シャケ煮込み、牛スジ丼など。牛スジ丼をおかわりしてしまい、母に怒られる。もっとも、今回のはお客様用に、スジばかりでなく精肉も少し混ぜて煮込んであるが、私は牛スジだけの方が好み。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa