裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

火曜日

醜態離脱

 酔った飲み仲間などが終電で醜態をさらしはじめた途端、さっと他人のふりをしてそのグループから離脱すること。朝7時起床、入浴。朝食、クロワッサンとミカン、ミルクコーヒー。ミクやって出勤、9時45分仕事場着。黒酢ドリンク。

 FRIDAYゲラチェック、年末から正月にかけての新仕事打ち合わせなどに忙殺される。特に打ち合わせは5件控えており、これに全部、複数の候補日時を挙げて、12、13、14の三日間の間に詰め込まねばならない。しかも、対談など、すでに入っているやつの時間を外して。パズルみたいなもので、やってみると頭が混乱。カチ合わないよう、メモとにらめくらでメールする。おまけに気がついたがこの5件、いずれも新規のおつきあいのところなので、“じゃ、いつもの時間割で”ですますことが出来ない。一件終わるたびに店を出て迎えにいかねばならない。めんどくさいこ とである。

『創』K嬢から岡田さんとの対談時間の連絡。幻冬舎Nくんからも電話。昼は参宮橋で今年の初ノリラーメン。ニンニクペーストと豆板醤をぶちこんで啜り、スープは酢を足してほとんど飲み干す。食べ終わったら首筋のあたりがカッカとするほど熱くなって いたのに驚く。ニンニクと豆板醤と豚脂のパワー。ダイエット中とはいえ、たまにはこういうものを食わないと精神的にテンションが上がらない。

 帰宅、2時に時間割、某社某氏。最近の日記は某々だらけで読む方もいらつくと思うが、書く方もじれったい。とはいえ、イニシャルでも書けないくらいに、いろいろ地下水脈的な動きが多いということ。今回打ち合わせた某社某氏も、ついこのあいだ まで別の某社某氏であった。ま、そんなことはどうでもいい。

 2時に待ち合わせて、雑談からはじまりあれやこれやと。某氏も私も話し好きなので止まらなくなるが、しばらくしたあたりで、氏が姿勢を改めて、
「実は……」
 とあることを明かしてくれた。クリビツテンギョー(古いね)。なるほど、そういうことでしたかと身を乗り出して話し込み、サジェスチョンしたり業界内情を聞いたり、いろいろと。ふと気がつくと、4時間、話し込んでいた。

 某氏の曰く、これを最初に相談したある人から、これに関してはカラサワさんに具体的な動き方の指示を受けるようサジェスチョンされてきたとのこと。なんで私がこういうことに詳しいと思われたのか知らないが、まあ業界が長いので、似たような場合に起こりがちなトラブルに関しては確かに知識はある方かも知れぬ。事務的雑事で具体的にいろいろやっておかねば後で面倒なことのチェック、それに関する関連会社のリスト立て、もひとつは緊急に関係者集めて予定確認し合うこと、あとご祝儀のこと。この計画の結果がどう出るか、それはわからぬまでも、出版不況の続く中、業界全体に次第にコノママジャイケナイ的な危機感が充満していることの現れには違いない。終わって外へ出たとき、クタクタに疲れてはいたが、何か元気を分けてもらったような気がしていた。クリエイションの世界の末席を汚すものとして、変化は常に歓迎である。それはどんなものであっても(例え望ましくないものであろうと)思考と行動にダイナミズムを生む。楽しいことばかりの人生は振り返ってみたとき、索漠たるものに映るのではないかと思う。まあ、今回の変化が吉と出るか凶なのかはまだ蓋を開けてみるまでわからない。

 帰ってノドアメ舐める。二日続きのライブより喉を使った。鶴岡から電話。大塚ギチとオタク大賞の反省話をした件を聞いて、ギチの律儀な神経の使い方に感心。もっとも、なら装丁仕事投げ出すなよ、とは思うが、理論と実行はえてして一致しないモ ノデアル。

 世界一受けたい授業Kさんから連絡、私が他局のプライムタイムから引っ張りだこだと思っているらしく、放送がカチ合うことを怖がっているようだ。そんなに売れてはオランヨ。メールチェック。上記5件の打ち合わせのうち、複数日を呈示して先方に問い合わせていたのだが、うち3件が13日を指定してきた。当日は1時、3時、 6時と打ち合わせ。その合間を縫って〆切2本。大丈夫か?

 9時、家を出て東急ハンズ前で母と待ち合わせ、渋谷『華暦』で夕食。K子は9時半ころポーランド語終えて来る。タコがあったので切ってもらう。固いが風味よし。肉じゃが、焼き空豆、刺身、イカ一夜干しなど。相変わらずうまい。ことに一夜干しが、おろし和えで食べると抜群のうまみ。あとはおでん。生グラス二杯、日本酒三合 ほど。少し風邪っ気あり。母は鼻をグズらせていた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa