6日
水曜日
岩波書店中耳炎第二版
タイトルに意味はない。朝7時半起床。朝食、野菜スープとリンゴ。スープに入れた野菜はカリフラワ、豆モヤシ、エリンギ、クレソン。それにソーセージ。K子は風邪で熱っ気があるので今日は一日寝てる、と布団に入る。そう言えば昨日は火曜だったのにフィンランド語講座も休んだ。この人がフィン語を休むというのはなかなかのことである。見たところはそうつらそうでもないのでまあ、大丈夫か。
日記つけ、あと談生さんの掲示板に、こないだのロフトのトークに対する批判が掲がっていたので、プロデューサーとして一言、返答しておく。寄席という形式が、すでに理解の外、という人がほとんどなのだろうが、落語会と寄席は似て非なるものなのである。落語会の隆盛は必ずしも寄席の復活を意味しない。
ネットを回る。怪獣マニア関連のサイトで見つけた、中国の海賊版怪獣図鑑の怪獣名がなかなか恰好良くて面白い。ネロンガが容電龍、エレキングが電子金龍、銭幣龍がカネゴンで貝基拉がペギラ。音でいくやつと特長で命名するのとがあるらしい。ナメゴンが大蛭龍というのが面白い。あれは向こうじゃナメクジでなくてヒルか。上下拉門(上下、はタテにくっつけて一文字)がガラモン。この上下拉という表記にOKと書くとカラオケになる。以前サンフランシスコの韓国街などでやたら見かけた。
昼は昨日の残りの山菜オコワをK子と分けて食べる。あと、根深汁。講談社Web現代、原稿を書く。資料をあさるうちに、いろいろと新知識が得られて勉強になる。ノーザンクロスから電話、表紙デザイン案二ツ送られる。マイストリートからも電話で、初出の件など。講談社ホットドッグの担当だったMくんはすでに退職してしまっていて連絡つかず、ぴあの方の『大学ぴあ』も、問い合わせたら自社でそういうモノが出ていたことも今の社員さんたちは知らないそうな。
K子元気回復、部屋の掃除を始める。私は6時に原稿アゲてメール。ついでに前回原稿に少し訂正を入れ、紹介サイトをひとつ増やしてメール。タクシーで新宿に出、埼京線で板橋へ。板橋内蒙古飯店なるところで、羊の脚を食らおうという会である。主催者は植木不等式氏で、参加メンバーは主に私の担当編集さんたち。講談社YくんとIくん、世界文化社Dさん、廣済堂のIくん、以前ブックTVのときお世話になった大日本印刷のNさん。それに談之助夫妻が加わる。板橋なるところ、昔上板橋東映にはしょっちゅう通っていたが、この二十年、降り立ったことがない。渋谷住まいの身にとってはえらい遠いところ、という印象があったが、何のことはない、埼京線で新宿から二駅。あっという間に到着する。車中混み合っていてつり革にブル下がっていたら、隣に立っていた三十代前半のサラリーマン風の人が、
「あの、もし間違ったらすいません、ひょっとしてカラサワシュンイチさんですか」
と訊ねてくる。ハイそうです、と答えると、ウワッ、と驚き、実はいま、カラサワさんの本を読んでたところなんです! と、カバンから『カルト王』を出す。これにはまさに驚いた。同じ車両に乗り合わす、くらいならありそうな偶然だが、それがすぐトナリに、しかも当人の著作を持っているそのときに、というのはまた、西手新九郎にしても出来過ぎである。しかも、出した本がまたマニアックな。これから行った先に、その本を作った編集(大和書房時代の廣済堂Iくん)がいるというのも凄い。
板橋の駅で遅れてくるNさん、Dさん以外のメンツ、揃って、植木さんのリードで内蒙古飯店まで歩く。まだ7時だが、すでに通り全体が眠っているような感じ。たどりついた店も、私たち以外は客がいない。広間にモンゴル風のテント“ゲル”があって、その中に席がしつらえられている。なかなか結構な趣向。酒はモンゴルウォトカのジンギスカンというのを頼もうとしたら切れていたので、塞外(モンゴル)茅台というやつ。カギみたいな金具がついており、それでキャップをあける、というあまり意味のない仕掛けがほどこしてある。味は台湾茅台に似て、ややまろやか。それを空けたあと、植木さんがまたモンゴルのディープな焼酎をとった。大衆的汾酒、といった感じの味で、香りはいいが、どこかケミカルぽい酔い方をする。
で、料理だが、羊の脚(モモ)の丸焼き(焼羊大腿)、同じく茹で肉、それに餡餅(シャルピン。中に羊のミンチが入っている)などなど。丸焼きはかなり塩胡椒を揉み込んでから焼くらしく、ちゃんと奥の方まで味がついている。きわめて柔らかく、羊特有の臭みもまったくない。うまいうまいと平らげる。茹で肉の方は塩茹でしたものをタレで食べる。モンゴル料理だからもっと香草などをふんだんに使うかと思っていたら、きわめてシンプルな味。茹での方が羊っぽい。何にしても豪快な料理で、骨にかぶりつきたくなる。肉の間にチーズをはさんだキエフ風カツレツみたいなものも食べた。残念だったのは羊の水ギョウザが切れていたこと。十人総掛かりで、食った飲んだ。10時くらいまでいたが、その間、客は結局われわれのみ。大丈夫か、この店?
http://page.freett.com/uchimongolhanten/index.htm
新宿からタクシーで帰宅。帰ったら庵野秀明監督の結婚相手、やはり安野モヨ子だと本人(庵野氏)がバラしていた。山口にきらら博で行ったとき、飛行機の中で安野さんを連れている監督と偶然同じ便に乗り合わせた。あれはやはり親元への紹介のためだったのか。オタクの結婚はおめでたいことだが、何か取り合わせが似たような鬼才同士で、平凡にも感じる(手塚真と岡野玲子のときのようなツマラナサである)。