裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

水曜日

ええい食材な小僧め、名を、名を名乗れ

 赤胴鈴之助人食い土人退治の巻。朝7時半起き。小雨で肌寒い。体調はよし。コンコルド事故のニュース見ながら朝食、シイタケ炒めサンド。コンコルド就航のときに作られた映画『コンコルド』(まんまの邦題)を思い出す。イタリア製のマカロニ・パニック物で主演もジェームス・フランシスカスという二流どこ、機長役が記憶では『大空港』で爆弾犯人役だったヴァン・ヘフリンだったと思う。実にどうもパッとしない映画だったが、目黒の名画座で観たとき案外楽しめたのは、売り込みに必死な英国航空が全面協力して空港設備や工場・研究所をロケさせ、リアル感抜群だったからだろう。私が編成局長ならすぐにもこの映画を深夜放送するが。

 ほんやら堂に鶴岡が乱入。あいつもヒマだね。あそこの掲示板の人たちはナイーブだからあまり刺激しちゃいけないよ。と、思っていたら当人から電話。ただし話の内容は佐藤有文のこと。何なんだ。佐藤氏と言えば最近見つけた、エヴァの元ネタ探しのHPで、氏の『地底魔人ドグマ』を紹介(ただし『トンデモ本の逆襲』に依って) して曰く
「“ドグマ““地下の巨大な秘密基地”“人工的に造られる不死身の巨人”“培養カプセルで眠る大量の美少女のクローン”・・・・・・なんだ、そのまんまじゃねーか」

『ダ・カーポ』ゲラ戻し、昼飯はパルコでトンカツ定食。これが案外後まで腹にもたれて往生した。こっちの胃の疲れのせいだろうけど。3時半、六本木二十世紀FOX でアニメ『タイタンAE』 試写。CG使いまくりのロケットや宇宙空間描写と、三十 年くらい前のハンナ・バーバラアニメから大して進歩していないような人間(&宇宙人)の二次元セルキャラ。このキャラデザインでまず、日本のアニメファンたちの大半、いや九割方は引くだろうなあ。ヒロインなんて、ディズニーの『ムーラン』のNGみたような顔だし。声はドリュー・バリモアだけど。製作スタッフに『戦闘美少女の精神分析』を読ませねばアカンか。

『SFマガジン』の映画レビューでも、制作者にSFスピリットがない、とケチョンケチョンだったが、しかし、私はこの、徹底して重みのないツクリがいかにもアメリカのアニメじゃないかと、逆に懐かしささえ感じた。キャラ絵からもわかるように、これは『宇宙怪人ゴースト』とか“ネンリキ〜”の『ミクロ決死隊』に連なる作品、大金かけて作ったサタデーモーニングなのだ。ロケットが出てくるからSF、宇宙人が出てくるからSF、とスピリットをいちいちもとめないで、“お子様向けのマンガ映画にしちゃなかなか楽しめるよ”と、笑って見ればそれなりの出来なんだが、どうもこっちはSF映画、というだけで傑作(でなければ怪作)にあらざれば許すまじ、とマナジリを決して見るクセがありますからな。まあ、『アイアン・ジャイアント』と『サウスパーク』にはさまれちゃどうしようもない。

 帰り道、ふと見ると“青墅”という和菓子店がある。鴬餅が名物の店である。“ほう、これが圓生が『圓生百席』録音のスタジオで毎度食べていた好物の鴬餅か、と、一番小さい箱を買ってみた。私もミーハーなるかな。明治屋に寄って買い物し、タクシーで帰り、さっそく鴬餅をつまんでみる。京須偕充『圓生の録音室』に説明されている通り、普通の鴬餅と違って青黄粉でなく黄粉で餅をまぶしたもので、甘味も抑えられていて上品な、結構なお菓子だった。

 留守録一本、☆社から、△社で文庫化の話のある××という単行本(発行元の○社は☆社の子会社である)、これはぜひウチの方で文庫にしたいのですが、という話。そんな気があるならハナから言ってくれよお。また両社の間で折衝をせねばならぬ 。アタマが痛い。

 8時半、渋谷駅前で待合せ、近くの居酒屋へ行こうと思ったが満員、ぶらぶらと青山方面まで散歩する。宮益坂にあった馬肉料理の“はち賀”が閉店していたのに驚いた。創業一○○年目にして、店主の都合だそうである。以前はちょくちょく人を誘って行っていたのだが、渋谷に越してからは中途半端な距離なので足が遠のいていた。もう一度行っておけばよかったと惜しくなる。もっとも、馬刺は最近どこでも食べられるようになったし、この店の他のメニュー(桜鍋、馬カツ、馬コロッケなど)はさして足を延ばしてまで、というほどのものでもなかった。骨董通りの方まで歩いて、いわし料理の傳八。帰りにラーメン。

・オタク的疑問。ビラ星人のあの四ツ目のデザインは、便器の腰掛けの裏側がモデルなのではないか?

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