裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

木曜日

立てば芍薬ニラレバご飯

 タイトルに意味はない。朝8時起き。半にロビー集合。ここのホテルの朝食バイキングを食べるのはイヤだ、とK子が主張するので、ちょっと歩いて通りにある東急ホテルのレストランで朝メシ。例によってバカばなし続けていたので、回りの客は変に思ったかも。

 こちらの代表的新聞である『北國新聞』に“人生の道しるべ”なる人生相談欄があり、兄が会社をやめて引きこもりになってしまった、という妹からの相談が載っている。“(兄は)現実逃避を始め、兄の部屋には、アニメのキャラクター人形がずらりと並んでいます。深夜一人で人形をこつこつと作り続ける姿を想像すると、身内ながら不気味な気持ちになります”何とか兄を現実世界に向き合わせたいのですが、という手紙に、天台宗の坊さんが答えている。“何でもいいから自分にやる気を起こさせるものに専心させればよいのです。アニメのキャラクター人形を作るのなら「俺にもこれだけやれるぞ」という実行プランを立て、百体でも二百体でも作ればよいのではないですか。それをあなたに約束されるのも良い方法です”・・・・・・違うよなあ。加藤礼次朗、“作るからいけないんだ、ブリスターでとっておけばいいんだよ!”いや、これはマジにその通りで、フィギュアを作るのは一人きりの作業だが、ブリスターのコレクションで難しいコンプリートを達成しようと思うなら、同じマニアとの連絡とか、情報交換など、他人と交わらざるを得ないからね。

 ホテルのチェックアウトが10時なので一旦帰る。桜井さんから、おみやげのお酒が届いている。荷造りして宅急便で出し、身軽になったところでみんなで桜井さんのお店訪問。ゴチちゃんは新婚夫婦らしく、いろいろ食器とかを買っていた。そこで三者それぞれ別れて別行動。私は古本屋回ろうと思ったが朝っぱらからは開いてない。喜久屋書店という大型書店で、地元の出版物、いくつかあさる。加賀の文化的蓄積のことを昨日書いたが、ここの書店の品揃えと上品さ(書棚のデザインと色がまず、落ち着いていていい)に感心。店内の明るさもおさえ気味にして、本を読んで目が疲れない程度の明るさにしている(ずっと以前の紀伊国屋もそうだったが、客を呼び込むために、無暗に明るくしてしまい失望したことがあった)。そして、店内いたるところに椅子があり、そこに坐って自由に本を読むことが出来る。もちろん東京にもそういう書店がないことはないが、ここまで自然に、すべての店舗作りが本を中心に機能している書店は滅多にない。

 睦月さんは文学館に、K子はダイワデパートで友禅のゆかたを買いに行く。K子と待ち合わせてタクシーで金沢駅。小松のハニベ岩窟院まで行く。小松まで電車で行きそこからタクシー。5ケ月ぶりの再訪だが、なんでもこないだ大地震があって、かなりヒビなどが入っているとのこと。何かキケンぽい。しかもこないだは2月で乾燥していたが今の季節、なかは水があちこちからしたたり、内部に靄がかかっているような雰囲気。ただし、その分涼しくて(今日はピーカンの快晴で暑い々々)天然の冷房が効いている。中に新作で“17歳地獄”とかがないかと思ったがまだ出来てない。加藤夫妻も大喜びで“中野貴雄連れてくればここで絶対映画撮るよお!”と言っていた。確かにいつ落磐でこのキッチュな日本版タイガーバームが消滅してしまうかわからず、中野貴雄の手でフィルムに記録を残しておけばふさわしい記念になるかもしれない。

 睦月さんはここの頂上の涅槃像を見たがっていたが、工事中で上がれない。“また来なきゃ”と残念がる。そんなに残念かあ? もっとも、売店で休息していると、こんな場所にも三々五々、人が訪れる。家族連れもいるが、大抵は若いカップルで、ここの水子供養堂にお参りしているらしい。中に来院ノートがあったが、いずれも繰り返しここを訪れているようだ。その中で語りかけている水子の名前が“小次郎”“ひいろ”“ルイ”エトセトラ。こういうネーミング感覚のカップルが、水子供養などという古くさい信仰に素直に従うところが人間の面白いところだろうが。

 行きのタクシーの運転手さんが、“帰りも私を使名してください!”と言っていたので、それを無線で呼んで小松空港へ。帰りの便までかなり時間が空いた(K子には“乗り遅れ恐怖症”があるので彼女をコーディネーターにするとやたら早く駅や空港に行く)ので、レストランでビール飲みながら話す。三日間ダベり続けてもまだ話すバカネタのあるのが感心なんだかどうだか。帰路は格別話すこともなし。ANAの機内サービスのスープはやはりJASよりうまいことがわかる。浜松町からタクシー。

 帰ってメール、仕事関係のFAX等整理。やはりお盆進行初期の平日三日空けるとみな殺気立っているな。体力、さすがに落ちているので、今日は何もせず。9時、K子とソバ屋へ行くが満員、おでん屋の方へ行く。夏バテ的症状で食欲なし。最後の小松空港でビールのつまみにとったゲソバター(あんかけやきそばのあんだけみたいなもの)のせいか、下痢気味。おでんいくつかとウドンのみ食って帰り、棒のように倒れ込んで寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa