裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

土曜日

JALも気から墜ちる

 心身症の人を機長にしちゃいけない。朝8時起き。朝食、ポテトカレーサラダ。午前中に好美のぼる解説7枚を書き上げる。荷物が届いたので見てみると、おとついの晩、ネット古書販売のオヨヨ書林から買った本類である。間一日というデリバリーの早さに驚嘆。どういうシステムでやっているのか。

 ネット書籍販売といえば最近話題のbk1だが、ここで試みに私の著作を検索してみたら、何と43冊、取り扱っているという。今、そんなに私の本って流通 していたかしらんと思い、見てみたら、とうに絶版の筈の『森由岐子の世界』などが2週間程度でお届け、などとなっている。確か版元でも在庫を処分した筈なのだが、ホントに買えるのだろうか? 買ってみようとしたのだが、何故かアドレスのアルゴリズムが違う、という理由でハネられる。

 本日、自宅で鶴岡法斎と対談なので、少し対談環境を整備する(掃除とも言う)。そうこうしているうちに昼メシを食う時間がなくなったので、食欲もこの暑さであまりないことでもあり、パルコの裏の鯛焼き屋で鯛焼き買ってきて一個齧って代わりにする。12時、鶴岡来。エンターブレイン編集のNくんが遅れて、炎天の下で待ちぼうけくったといっておカンムリである。20分遅れでNくんと、テープ起こしやってもらっている早稲田の学生さんが連れだって、来る。早稲田くんの方は怒った鶴岡にも置いてきぼりをくらったらしい。彼、こないだの第一回分の対談のテープ起こしをやってもらったのだが、しゃべったこっちが驚くほどよくまとめてくれていた。しかし、こっちもバテてテンション下がらないよう、一回の対談は1時間半まで、としているのだが、90分で原稿用紙140枚分しゃべっていたのには呆れる。鶴岡、“一カ月に六冊、本が出せますね”。

 対談は前回とほぼ、同じペース。前半でまとめのような結論に達してしまう。この2回が総論的なものだったので、次回から、少しコラム的に個々の自分のハマった作品のことなど話そうよ、ということになる。1時から3時まで、嵐のように現れて、嵐のようにしゃべりまくり、嵐のように去っていった。

 そのあと、珍しくまだ仕事する気になり、お盆進行用の週刊アスキー、一本片付ける。日本語関係ネタだったが、これは勉強すればするほど面白い。『創』の新連載は日本語をテーマにしたもので、決めたときはそうとも思っていなかったが、非常に楽しみになってきた。その『創』の篠田編集長と松沢呉一がネットで激しくやりあっている。松沢氏のやり口というのは私とのときも竹内義和氏とのときも全く同じで、トラブルの経過を、自分に都合のいい一方的な方向にネジ曲げてえんえんと書き散らかす。なにしろ一晩に一○○枚近く書くことができるというのだから、こっちは反論する気もなくなるし、極めてトリトメのない論旨なので、そもそも何が書いてあるのかを読み取るまでが一大事なのである。まあ、論争のテクニックとも言えない粘着気質の変態文なのだが、これも一種の才能(金にならない才能だが)なのかも知れん、と最近はいささか感心して見るようになってきた。篠田氏の反論で、松沢氏のバトルパターンが分析されれば面白い。

 一日中エアコンの効いた中で仕事していると、執った水分が汗にならず、身体の中にダプダプとたまる。サウナに行き、1キロ半、水を絞り出す。絞ったあと、サービスでオロナミンCをコップに半分量、もらって飲むのだが、このウマいこと。そこから新田裏に出て、K子と寿司屋で待合せ。アラのスープなど飲ませてくれる。他にヒラメ、ウニ、赤貝など。帰りのタクシーの中からなをきに電話。オフクロが、何か二人が仲たがいをしているのではないか、と心配して今朝、電話をくれたのである。なをきと、“誰がそんなこと言っているのだ?”としばらく話。まあ、鶴岡の“俺は最近とり・みき派”みたいな言動はお互い、しているからな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa