裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

木曜日

あまくだり寿

「このたび大蔵省から『地球防衛軍のヒトビト』作者として天下りしました」

※某企画打ち合わせ

朝9時起床。うつらうつら状態で見た夢、二本(と、数えるのか)。
一本目、私は双子の兄で、有名政治家の息子であるが、故あって海女の
村にかくまわれている。弟の方は泳ぎが苦手で、何人かの海女に
抱きかかえられて海に入るがいやがってわめいている。
私は泳ぎの才能に恵まれ、銛を片手に水中に入ると、陸上より
素早く動ける(この泳ぎは大変気持ちよかった)。腹が空いたので、
アワビでもとってきて焼いて食おうと潜っていくが、アワビがどういう
場所に成育するのかは知らない。
……二本目。ハッシー(橋沢進一)が出てくる。
私と彼は二人とも落語家である。
二人で競作落語を作ろうと頭をひねるが、向うが『粗忽長屋』の
パロディで『鎖骨長屋』というのを思いつくのでくやしがる。
夢の中でもダジャレか。

起き出してヨーグルト。
日記つけ、メールなど。
11時、母の室で朝・昼食。
ホットドッグ1個半、ミルクコーヒー。
タンカン一個。
昨日から、この朝・昼食時に重曹水を飲んでいる。
氷水に重曹をスプーン一杯ほど入れ、レモンを搾り入れて飲む。

原稿書き。翻訳ソフトを3つほど使う。
どうも一個だけだと、ぴったりと意に沿う単語が出てこない。
アニメ監督の某氏から電話、新企画の設定に関する相談。
そういうことなら、と、と学会例会に招待する。

11時昼食だと夕方近くなって、空腹を感じてくる。
鮭トバの切れ端を噛って何とか腹の虫を抑える。
4時半、家を出て新宿。らんぶるにて、O社L社打ち合わせ。
最初にここに呼ばれた某件はとりあえずペンディングらしい。
副次的に発生した某企画の概要メモを渡す。Sさん、直接の
担当ではないのだがさすがに詳しい。それだけにポイントポイントで
面白がってくれた。さて、どうなるか。

1時間ほど話して別れ、京王デパ地下で買い物。
アサリ剥き身とサクラエビ釜揚げを買う。
帰宅して、明日の取材関係がらみ連絡。
原稿に一部手を入れて。
メールいろいろ。
仕事を依頼した方から、”親の介護があり、スケジュールが読めなくて“
という断りが来る例が増えている。どこも大変なのだな、と思う。
私のところだって、いつそういう状態が来てもおかしくない。

9時半ころ、済ませて食事の用意。大根の千六本とアサリ剥き身の
煮物、釜揚げサクラエビのおろしポン酢和えなど。
黒ホッピー三杯。
DVDで『吸血怪獣ヒルゴンの猛襲』(1960)。
ロジャー・コーマン政策のB級映画として有名(邦題も邦題)だが、
モンスター映画というより、沼の瘴気と暑苦しさが人間性をむしばんでいく
片田舎の男女関係のドラマとして見れば、かなりの完成度。
巨大ヒルの吸血行為(しかもすぐには殺さず、捕えた犠牲者を洞窟の
巣の中で生かしておいて、徐々に血を吸いつくしていく)の暗喩は
あきらかで、思えばかの『ジョーズ』だって、原作はそういう話なのである。
主人公のブロディが田舎町に溶け込めず、そこのドロドロとした人間模様が
描かれたり、奥さんが若い海洋学者と浮気してしまったり、そういう人間の
心の奥底にある暗い理不尽な部分のアナロジーとしてあのサメは出現
していた。スピルバーグの凄いところ(若いところ)は、そういう
ドロドロを全部ネグレクトして映画をスカッとした怪獣パニックもの
にしてしまったことで、これは大正解だったわけだが、しかし、
一方でそのドロドロを映画化したらどうなったのだろう、という
好奇心も当然のことながら湧く。そういう人は本作を見ればよろしい。

オープニングテーマからしてアンニュイであって、その、金のかけて
ないあたりが何となくオトナの映画という感じであり、今の私なら
『ジョーズ』より、低予算でこういう映画を撮りたいと気持ちの方が強い。
あ、ひとつアイデアを思いついてしまった!

Copyright 2006 Shunichi Karasawa