9日
火曜日
ブンジャカの徒
「男のくせに音楽などにウツツを抜かして……」(体育会系男子・談)
※神保町訪問
円谷英二の落としダネだという人に会いにその家に行く。
おそろしく古いボロ屋だが、大きいことは大きく、映画の資料で
埋め尽くされている。大宅壮一みたいな白髪頭をふりながらその人は
日本映画の現状を憂いて、“これからの日本映画は飛行機映画と
肉食映画をもっと作らないとダメだ”と言う。飛行機映画はわかるが、
肉食映画てのは何ですと訊ねると、
「○○と言うアメリカ映画では主人公が牛タンを一本食うが、
日本映画ではせいぜい半本だ。これをハーフタン映画と言う」
などと力説する。
……などという夢を見て朝10時起床。
好天気でポカポカ。
メール通信少し。
アボカド一個と豆乳小ワンパック。
原稿書きにすぐかかる。その中の記述に必要なデータで、
某国の某所から某所まで、自動車で行くとして、いったいどれくらいの
時間がかかるものか、地図を見たり、その距離を日本の地図に
当てはめて見たりするのだがピンと来ず。
ネットでさんざ検索して、やっと当該の地の間を行き来した
人の記録を見つけて、最初に思ったのと大して差がなかったことを
確認し、ホッとする。
12時、昼食。
炒飯とセロリサラダ。炒飯はカロリーを低めにするために、エリンギを
細かく刻んで米と一緒に炒めている。言われないとまるでわからず。
テレビに映る某コメンテーター氏の暴言に思わずチャンネルを変えて、
変えてからこれは向うのキャラ作りの思うツボなんだろうな、と
苦笑。一人が怒ってチャンネルを変えると、十人がその発言に喝采して
いるはずである。
自室に戻って仕事続き。
戦記マンガ家の飯島祐輔氏死去とのこと。
52歳。心臓か脳出血か、幕張メッセのワンフェスに向う電車の
中で昏倒し、そのまま不帰の客になったとのこと。
私は不勉強にしてこの方の作品を読んだことがない(執筆分野が特殊
だったということもある)。
だが、以前、同じくマンガ家の居村眞二氏が亡くなった(05年没)ことを
数年遅れで知り、詳細を知ろうと調べて偶然、氏のブログを見つけて、
ときおりのぞいてはいた。私より一歳年上である。年齢からか、
最近の日記には健康と死についての記述が多くなっており、
いささか考えさせられる。最後のブログは亡くなる朝の”メッセイテクル“。
昨年の日記には”しかし幕張は遠い。地の果てである“などという記述もあり、
確かに遠い道のりになってしまったのだな、と思う。
もうひとつ訃報、立松和平氏。私よりこれは11才年上。
昔は野坂昭如だとか寺山修司だとか、モノマネをされる作家が
いっぱいいたものだが、最近はとんといなくなった。
その数少ない一人が立松氏だった。
三遊亭円丈に『横松和平』という作品があり、売れない漫才師が
立松和平のようなレポーターになりたい、と、ひたすら立松和平の
モノマネをする、というだけの話なのだが、これがとにかく
可笑しかった。一番驚いたのは、立松和平の本名がホントに
横松ということだったが(横松一夫)。
こういう作品が成立する、ということは彼の喋り方を通じた
キャラクターが本当に人口に膾炙されていたということだろう。
彼の思想に完全に同意をするわけではないが、それは別として、
あれだけのキャラクターを確立したのは凄いと思う。
黙祷。
そう言えば今日は志水一夫氏の誕生日なのであった。
ミクシィが機械的に報せてくるのである。
日記の昔の記述を確認しようとミクシィで探していると、
その件に“夜帆@楽利多マスター”名義のコメントがついていて、
つい、他の彼のコメントを探して、そこらの日記を読みふけって
しまうこともある。50代になる、ということはそういうこと
なのだろう。
死というものが急速に身近になってくる、ということだ。
3時半、地下鉄で神保町まで。車中、ゲーテの『ファウスト』を
旺文社文庫版(佐藤通次・訳)で読んでいたら、赤坂見附で
乗り越しそうになってしまい、あわてて飛び降り、本来はそこから
半蔵門線ホームに歩いていくのだが、ちょうど発車寸前だった
銀座線に本能的に飛び乗ってしまい、走り出してから気がついて、
隣の溜池山王でおりて戻った。いやあ、この歳になってゲーテに
熱中するとは思わなかった。この旺文社文庫、中学からの
愛読書だが、作中のファウストと同年代になって、素直に感情移入
できるようになってきて、一層オモシロイ。
神保町で用事数件。カスミ書房さんはじめいつものところへも。
ボンデイか新世界菜館、もしくはいもやの天丼へ、という気も
無きにしもあらずだったが、ダイエットダイエットとつぶやいて
おとなしく都営新宿線で新宿に出て帰宅。
それにしてもあたたかく、オーバーは着なかった。
くたびれたのでストレッチして少し休む。
ベッドで『江戸演劇史』続き。
文章は昨日も書いた通り非常に詠みやすいのだが、座頭や琵琶法師
などに触れたところで表現が全て“目の不自由な”となっているのが
不自然で気になる。“盲目の”でいいだろうし、何も差別用語には
当たらないと思うのだが?
結局帰宅後は仕事せず。
10時、金目鯛の酒蒸しとキウリの漬物で酒(ホッピー三杯)。
あと、パックご飯に読者から貰った名古屋のあんかけスパのソースを
かけてあんかけ飯。スパよりこっちが好物なのである。
NC赤英主演の『2009円宇宙の旅』のDVD(Oさんの神編集もの)
を見て、不思議な感覚に。
志水さんといいNCといい、妙に死んだ人のことを想う一日だった。