23日
火曜日
アッシジだよ! 全員集合
「清貧でいるかー! 童貞守ってるかー!」(聖フランシスコ)
※浦野光さんインタビュー プチ食事会
出版社だか新聞社だか、二階分が吹き抜けになっている天井の高い
ビルの中を歩き、エレベーターに乗る。エレベーターにはすでに
工事関係者(と、いうか工事人夫さんたち)が乗っている。
目的の部屋が何階か忘れてしまったので、3階、4階、5階と順に
見て行くが、どの階も人気がなく、廊下に奇怪な装飾がしてある。
同乗者が、これらの階はこのビルの住人も滅多に降りたことのない
幻のフロアだ、と言う。やっと(何階か忘れたが)目的のフロアにつく。
部屋いっぱいの大きさの、土がコの字型に盛られた模型がしつらえてある。
僧籍にある作家が、自己の内面を探求するために四国の田舎に行き、
トンネルを掘ってこのコの字コースをとって掘り進んだのだそうで、
その軌跡を小説にしたので、それを読んで書評を書けと言われる。
この模型はその様子を模したものだという。
なるほど、その模型のそこかしこにはのぞき窓があり、
その作家の人形が掘り進んでいく格好で中に置かれている。
……いかにも脈絡のない、夢っぽい夢。
9時半起床。
入浴、歯磨如例。
メールいろいろ。
イベント会場下見の件など。
11時、母の室にてブランチ。
塩鮭、納豆、エノキダケの味噌汁。ご飯一膳。
シャケが塩辛くて美味。ほうじ茶をご飯にかけてお茶漬けに
する。お茶お代わりしてキウリの漬物。
タンカンとバナナのデザート。
今夜菊田貴子が粕汁を食べに来る。
新聞を読むが、ほぼ詠みたいと思う記事はすべて、すでに
ネットで朝、ベッドの中でチェックしたものばかり。
いや、朝でもなくてゆうべ就寝前のチェック記事ばかり。
紙媒体に愛着も未練もあるし必要性も理解しているが、しかし
それでも、実際問題これではかなわん。
12時、家を出て新宿。小田急線で海老名へ。
続けてきた声優さんインタビュー、今日は『ウルトラセブン』の
ナレーションでおなじみ、浦野光さん。
幸い快速急行に待たずに乗れ、乗り換えもなくスムーズに
海老名へ。乗客を見ていると、着席しているほぼ7割の
人々が眠っている。この電車内での居眠りは日本人の特徴だと
言われているが、外人さんも堂々と居眠りしていた。
もっとも、確かに眠気をさそうようないい陽気だ。
45分ほどで海老名着。車中ずっと知人の某のことを思う。
駅でIPPANくんをちょっと待つ。
海老名駅は巨大なロータリーとショッピングセンターが
併設されており、手土産を買いに行こうとしてちょっと迷う。
案内嬢みたいなお姉さんが偶然通りがかって教えてくれた。
果物を買い、包装してもらう。
そこからタクシーでワンメーターほどの、これまた巨大な
マンション。5棟の住居棟と、共同の温泉施設がある。
時間がちょっと早かったので、マンション付属の公園の
ベンチで日向ぼっこしながら、出版までのダンドリを
話し合う。ぽかぽかしていい天気。
浦野さんのお宅は某棟最上階のお部屋であった。
浦野さんご自身が出迎えてくださる。
丘陵地帯までが一望できる素晴らしい展望。
引退後の住居としてはこの上ない場所である。
お話をいろいろ伺う。
浦野さんはすでに声優からは引退をされているが、
お声は全く衰えていないというか、素晴らしい美声。
普通に話している中に、ちょこっ、ちょこっと
ポパイやグラハム・カーが混じる。
ずいぶん昔のことでお忘れのことや記憶があいまいな
ところもあったが、これは、仕事があまりに忙しすぎた
人の特徴。それに、ウルトラマンもウルトラセブンも、
「絵なんか見て吹き込んだことないですよ。それどころか
ブツ切れに台本が上がってきて、少しずつしかやれないから、
番組全体のムードも把握できない。“この先どうなるのよ?”
と訊いても、“それは今撮ってるとこだからわかんない”
というような具合で……」
なんて話の方が、かえって当時の状況がよくわかって面白い。
一番興味深かったのは『世界の料理ショー』のスティーブの話と、
降板の話だった。これはDVDボックスなどのパンフであかされている
エピソードなのだろうか。ネットでは見当たらない。
チェックしてみないと……。とにかく、ちょっと衝撃的ではあった。
4時過ぎ、タクシー呼んでいただいて、辞去。
二人とも興奮していろいろしゃべっていたら、運転手さんが
「いい声してますねえ! 声優さんですか?」
としみじみという感じで私に言った。何故かタクシーの運転手さんには
よく、こう言われる。普通、言われて悪い気はしないのだが、
今回は何しろ美声中の美声の方にインタビューしてきたばかりなので
恥じ入るばかり。
帰りの電車の中で、本の構成のことなどいろいろ打ち合わせる。
やはり具体的になってくるとテンションが上がる。
実作業はヒーヒーものなのだろうが。
追加質問などのことを話す。
新宿で別れ、帰宅。
O社Kさんから電話あり、別件の話、打ち合わせを木曜でどうかと
いうこと。資料も何もまだ用意していないのだが、これはすぐ
準備しないといけない。
メール連絡などいろいろ。
菊、最初7時ころ来るというはずが何回かドタバタ変更、
結局9時半になる。
それまで原稿、いろいろひねくる。
9時半、自転車で菊、来る。
さっそくビールついで乾杯。母の手製のシャケ粕汁、
ウェスティン豚、茄子の冷製などなど。
ちょっと昼間の疲れか体が重いのは風邪気味か、日本酒が例によって
回りすぎたか。
話ははずむが、母が泡盛に酔って饒舌になり、いい男談義になり、
独演会みたいになった。先代(11代目)の團十郎の写真集など
菊に見せてゴキゲン。若いねえ。
結局なんやかや話して1時半まで。
日本酒のせいか、ノドがやたら乾く。
自室でライオネル・ジェフリーズの追悼など書いて、結局就寝2時半。
*浦野さんと。