裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

木曜日

関白でもいい、たくましく育って欲しい

今朝の夢。
新宿西口地下を高速のゴーカートみたいな車椅子で疾走する
(『野良猫ロック』か?)。西口地下だからそこらじゅうが
ホームレスだらけで、中には宴会みたいなことをしている
グループもいる。その合間を走り抜けるのはゲームみたいでもある。
亡くなったホームレスの死体と段ボールの家などはマジックハンド
つきの作業車がてきぱきと片づけており、システム化されているなあ、
と感心。

朝9時半起床、眠くて眠くて。
一日中眠っていたいくらい。

『燃えよドラゴン』で、ブルース・リーを鉄の義手で苦しめた
悪の武道家・ハン役でわれわれの世代に忘れられない印象を与えた
香港の悪役スター、シー・キエン(石堅)、4日に死去、96歳。

日本の誇る悪役スター、天津敏に容貌がソックリで、
赤影を(今度こそ原作に忠実に)リメイクする際にはぜひ、
シー・キエンに甲賀幻妖斎を、と思っていたのだが。

ブルース・リー、ジャッキー・チェン、マイケル・ホイ、
チョウ・ユンファ……。彼の共演者を見るだけで華々しい
香港映画の黄金街道が見渡せる。
香港映画のトップスターたちが光り輝いていたのも、彼の個性が
脇で映画を締めていたからだろう。

晩年はテレビで、好々爺を演じて人気だったという。
悪役スターは日本でもどこでも、その“年期”を努め上げると、
今度は好々爺を演じるものらしい。
そっくりさんの天津敏も、晩年はNHKの朝ドラ『火の国に』などで
いいお父さんを演じていた。

ブルース・リーと同じく、われわれの瞼には、あの鉄の爪をかまえた
ハンことキエンの姿は永久に焼き付くだろう。

さらにもうひとつ、訃報。
「恋が着せ、愛が脱がせる」
というコピーをご存知だろうか。
80年代伊勢丹のポスターにあった文句で、
しばらくそのポスターの前で立ち止まって
「うまいなあ」
と感心していたのを思いだす。
こないだやった婦人公論誌の“愛の名言”座談会でも紹介した。

そのコピーを作った人、眞木準氏死去。62歳。
もっとこういうコピーを作って欲しかった。
「でっかいどう、北海道」
「イマ人を刺激する」
といった駄洒落系コピーも、そりゃ嫌いじゃなかったけど。

お二人に黙祷。

朝食如例。
今日はマチソワなので弁当は握り飯にしてもらう。

入浴し、下北へ。
抜き稽古して、準備する。
初日に来てくれた芦辺拓さんも、客で来てくれたQPさんも、
佐藤歩ちゃんの少年探偵スバルの半ズボン姿が大変お気に入り。
芦辺さん、“スピンオフした話を書きたい(スバルはこの舞台の
オリジナルキャラなのだ)”とまで。

今日は昼夜ともアクシデント多々。
昼はさて、そろそろ出かな、と思ったら、目の前のスクリーンが
上がってない、というアクシデント。途中で琴重ちゃんが
上げてくれてことなきを得たが、最後のシーンではスクリーン
が上げる途中で幕を噛んで、中途半端な上がり方のところに
出なければならなかった。

夜は、一回弁士席から追い出されて、あわててまた戻るという
シーンでなんと弁士席が倒れてしまうというアクシデント。
ドタバタの大慌てで直したが、それでお客さんの半数は
ギャグで倒したんだ、と思ってくれたよう。
舞台はナマモノですなあ。

合間に、乾恭子ちゃんが早めに下北沢に着いてしまった、と
いうので、近くで待ち合わせて、ラーメン屋で話す。
私の病気話、彼女の学校話。
お笑いのやるお笑いと、演劇人のやるお笑いの違いなど、
いろいろまだ試行錯誤しているよう。

夜の部で、客席に高須力弥氏の姿。終演後の挨拶で壇上に
上がってもらう。NC赤英と並んでの歴史的な(笑)
W“イエス、高須クリニック”をやってもらった。

バラシのあと、新台北で高須さん囲んでの乾杯。
ハッシー、岡っち、マド、菊、琴などのメンツ。
12時ころまでなんやかや。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa