裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

土曜日

ソルボンヌ稽古(素朴な駄洒落・20日〜22日稽古日記)

20日(土)
朝8時半まで寝る。
日記など
朝食9時半。
東京三世社原稿書き始める。
これだけいろんな資料を段ボールに詰めてしまっている
のに、ちょうど書きたいテーマに関することが載っている雑誌が
手元にある、という不思議さ。
オノにメール。
今、某社の企画のテープ起しに忙殺中。
もひとつ依頼。
昼はサイコロステーキとほうれん草のおひたし。
その後自室に戻るが、3時ころまたちょっと母の部屋で少し話す。
三世社原稿、6時過ぎても終らず。
今日は別件もあり、稽古は休む旨、ハッシーに連絡。
書き上げて、むくんだ足を横になって少し休ませる。
8時、新宿でトツゲキ倶楽部反省会。
北の家族の、靖国通りに面している見せが歌舞伎町店だと
思ったら違った。本当に歌舞伎町の中にちんまりとあった。
土曜の超混みの中、ビールで乾杯したあと、なかなかつまみ類が
運ばれてこない。入院の話をしたらみんな驚いていた。
市森くん曰く“顔色が稽古のときよりずっといい”と。
肝心の横森さんは仕事ということで来られず。
反省の弁をそれぞれ一人づつ述べる。
私の反省
「役作りというのがどの舞台でも基本であり反省の材料になりますが
私の場合、今回は最初からキャラクターで買われた身のため、
役を作りようがない。私のままでいいと言われて、とはいえ、
私は怪獣の研究をしているわけではないので、どう演じていいか、
いや、演じなければいいのかが最後までつかめないところが
ありました。キャラクターに助けられ、また苦労させられた舞台でした。
できれば次に呼んでいただける場合には徹底して作る、若い女の子
がゾロゾロ寄ってくるような、そんな役をやってみたく思っております」
あと、高見こころちゃんや助川くんなどと話す。
2時間あっという間に過ぎ、みな二次会に行くらしいが私は
仕事もあり体調整備もあり、そこのみで帰って、
杉鉄のCDなど聞きつつ寝る。

21日(日)
巨大な人間型ロボットに乗り込んで宇宙創世の謎を記した書の
ありかを求め銀河を旅する主人公たち、という夢を見る。
アニメみたいなストーリーだが、なぜかその創世の書の題名が
『なみきたかし作品集』。
朝9時半ギリギリまで。
雨の日は眠くて。
長谷部安春監督、死去の報。
ええっ、もう77歳だったのか……と訃報に接して愕然。
日活ニューアクションの監督として、常にアナーキーな映画を
撮っていたイメージがあったので、実年齢とイメージがマッチ
しないのであった。

日活ニューアクションとは、『ニッポン映画戦後50年』の
須賀隆によるとゴダールの『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』
に近い、体制も反体制も認めないアナーキーな若者たちの自滅的な
死を描く作品群であって、その象徴が梶芽衣子と、藤竜也の
ヒッピー崩れみたいな不良たち。
昼間からゴーゴーバーに入りびたっているという、生活臭皆無な
連中である。『女番長野良猫ロック』で、新宿地下街をバギーが
ぶっとばすというシーンの破天荒さには、大学時代名画座で
椅子から転げ落ちそうになったものだが、それ以上に藤竜也の
バカ笑いの虚無感がこちらの印象に残ったものだった。

それ以降の長谷部作品には、正直なところ、あまりノレないでいた。
『野良猫ロック』では非現実的なまでに誇張されたキャラクターたちが
暴れまくる場所として、開発途中の新宿西口という“無法地帯”が
うまく機能していたが、他の作品では、キャラクターと設定(場所)の
カラ回りが目だって、意あるところはわかるのだが、という感じで、
どうも違和感ばかりが先に立つのが、長谷部作品の感想だった。
実写版『あしたのジョー』なんて、その最たるものだったろう
(この映画も唯一光る冒頭シーンは開発中の新宿を徘徊して、
ホモに言い寄られたりするジョーの姿だ)。

テレビに活動舞台を移し、“食うため”にあらゆる作品に加わり、
『野良猫ロック』のバイクアクション経験を活かした『ワイルド
セブン』、さらには『恐怖劇場アンバランス』や『スペクトル
マン』まで撮ってしまう(スペクトルマンと対決するニヒルな
殺し屋・流星仮面は今見るとモロに日活アクションぽくて
カッコいい)どん欲さで、エンタテインメントの極意のような
技術を身につけ、そして『探偵物語』『あぶない刑事』、『相棒』
と、代表作を連発した。
末期日活の、どこへ噴出するかわからない闇雲なエネルギーを、
ある意味テレビの枠組みの中に封じ込めることに成功した
希有な例であり、かつ、どんなにテレビ向きの話を作っても、
そこにどこか剣呑な匂いを残すことを忘れなかった、貴重な監督
であったと思う。
77,まだまだ現役で活躍してほしかった。黙祷。

昼は昼は1時、白菜とジャガイモのあっさり煮、サラダエンドウの
おひたし、たらこの鶏卵和え。
3時稽古、いつも使っていた天沼会議室の先の本天沼区民集会所
なるところだが私は初めてで、最初ちょっと迷う。なんとか30分
遅れで到着、すぐ通しの稽古に入る。
一人語りの部分はOKだが、からみのあるところが
まだテンションが本調子でないので難しい。
昼一回、夜役を替えてもう一回、都合二回の通し。
芝居のテーマに使えるCD持ってませんか、とテリーに言われ、
探してみましょう、と。
終ってまた蕎麦居酒屋。
麻見さん、由賀ちゃんなども来て、小屋入り前日だというのに
早さんと黒霧島飲んでちょっとヘベになる。

22日(月)
寝床にもぐっていたら宅急便が来て、買った執筆資料が届いた。
根ながらパラパラ読んでみたが凄く面白い。
朝9時半朝食。
外はまた雨。
昼は抜き。
CD類のうちから、舞台で使用できるものをチョイス。
何とか使えるものが見つかり、2時半ころ、出る。
新宿でまず、衣装用のシャツと蝶タイを買う。
それから下北。
雨の日の荷物持っての移動の大変さよ。
CD、さっそくハッシー、ミヤッキ等に聞かせて一発OK。
その後前半の場当たり。
ほぼ芝居全般を通し、台の下にうずくまっていなくてはならぬ
ことがわかり、かなり肉体的に疲れる役かも。
小学生のとき、自分なら学芸会にこういう演劇を掛ける(芝居版
『おそ松くん』とか)という空想をノートに書きつけたことが
あり、私は語り手役で舞台セットの片側から現在の状況を
説明する、という演出だった。似たような役を50過ぎて
実際に舞台で演ずる。不思議な気がする。
駅前の自然食定食屋『千草』でハッシー、なべさんと夕飯。
後から希依ちゃんも来て、またハッシーの犬の話など。
帰って後半。真犯人らしき人間が……? のシーンまでやって
10時、撤収時間。
ちょっと疲れていたので飲みには加わらずオオゼキで買い物
して帰宅、資料ビデオ類少し見て12時、就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa