裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

金曜日

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※三才ブックス原稿 トンデモ本大賞最終打ち合わせ

朝、またゲホゲホ。
携帯でニュースを見たらびっくり、デビッド・キャラダイン
死去の報。タイのバンコクのホテルで首を吊った状態で4日、
発見されたとやら。72歳。

ブルース・リー企画のテレビシリーズ『燃えよ! カンフー』は
結局リーが降ろされ、デヴィッド・キャラダイン主演で
シリーズ化。後にカルトなリー信者たちがこの事実を知って
激怒し、“KILL CARRADINE”と合言葉のように唱え、
自分もそういう信者だったのかどうか、カンフー映画大好きの
クエンティン・タランティーノが自作のタイトルに『KILL BILL』と
つけ、当然、ビル役にはデヴィッド・キャラダインを
キャスティング(当初はウォーレン・ビーティーがキャスティング
されたが途中で“この役はやっぱりキャラダインがいいよ”と
進言して降板したとやら)、『死亡遊戯』のリーと同じ黄色い
ジャージを着たユマ・サーマンにビルを殺させた……とかいう
エピソードは『映画秘宝』系のリーマニアがとうに書いている
だろうから略。

『キル・ビル』は東洋への知っていてのあえての曲解が楽しかったが
そのキャラダインがリーの死後、リーの高弟のスターリング・
シリファントと一緒にその企画を映画化した『サイレント・
フルート』は西欧人の知らないでの東洋思想の思い込み、
曲解の典型で全編思わせぶりなエピソードと台詞の羅列。
名画座で観ていて(ちなみに客は私一人だった)サクバクたる
気持ちに陥ったものだった。当然大ゴケして、ビデオで出たときは
『超戦士伝説ジタン』という、ロボットアニメみたいな
タイトルに変更されていた(ちなみに、キャラダインが演じたのは
“盲目の男”“猿男”など4役で、格闘技の秘伝書を守る謎の男・
ジタンを演じたのはクリストファー・リー)。

親父のジョン・キャラダインはシェイクスピア劇出身の
名優なのに反骨精神の持ち主でハリウッド・メジャーの作品を
嫌い、マイナーなホラーものなどにやたら出まくることで稼いで
いた。まともな役を演じた映画はてっきり『駅馬車』一作だった
(フェミニストの賭博師の役)のではあるまいか(あと、同じ
フォード作品で、組合を組織しようとして殺されてしまう
『怒りの葡萄』の説教師の役か)。

息子のデヴィッド(ちなみに5人の息子のうち4人までが俳優。
デヴィッドは長男)も、父を見習ったかまともな役はハル・
アシュビーの『ウディ・ガスリーわが心のふるさと』における
主人公(このときの設定と格好が『怒りの葡萄』のヘンリー・
フォンダそっくり!)くらいで、あとの出演作はことごとく
B級アクションとかカルト映画とかB級アクションとかカルト映画
とかB級アクションとかカルト映画とかばっかりであった。

プロペラ・ボートで悪人を追いかける変な夫婦を演じた
『ランナウェイ』、ナチスの軍服が異様に似合った『第27囚人
戦車隊』、後に同棲するバーバラ・ハーシーと“本番”シーンを
演じたという『明日に処刑を……』、そしてあの大怪作、
『デスレース2000年』のフランケンシュタイン……。
どこまでやれば気が済むの、と言いたくなるほどだった怪優人生、
まさか異国の地での自殺という幕引きを迎えるとは思いも
寄らなかったが、しかし“やり尽くした、もういい”的な
感じになったとしても理解できるような出演歴であった。
できれば親父のように、80歳過ぎても怪演を見せてほしかったが。

……と、しんみりした追悼を書いたら、どうも実際の死因は……
という噂が続報として流れてきてビックリ、つい大笑いして
しまった。いや、ある意味、こっちの方がデビッド・キャラダイン
らしい死に方かもしれん。まるで阿部定に殺された石田吉蔵だな。
http://www.afpbb.com/article/entertainment/news-entertainment/2608961/4231903

えーと、とりあえず黙祷。

9時半、朝食。
書き下ろし本、全部終ったと思ったら著者プロフィールがあった。
適当にデータを送って向うでまとめてもらう。

1時から、『ラジオライフ』原稿。5時40分までかかって。
こういうもの書いているときは咳も出ず。足はむくむが。
昼は飯粒を腹に入れる気にならず、辛ラーメンに調味酢を加えて
すする。

書き上げて編集部にメール、雨の新宿に出、伊勢丹で買い物。
なんとなく、伊勢丹のマタニティ売り場ならいいプレゼント用品が
あるのではないか、と思っていったのだが、案に相違せず、
バッチリなものが見つかった。
プレゼントらしく包んでもらう。

そこから山手線で池袋。
パルコ前で、博多から出てきたエロさん待ち合わせ。
みらい座池袋に行き、最終打ち合わせ、しら〜さん、S井さん、S崎くん。
台本にざっと目を通し、詰め。大きな問題点なし。
私は今回の大会でもまた構成・脚本担当であるが、それ以上に、
エクストラ、基調講演等の出演者選出という役割を与えられている。
今回は、予算の関係もあって過剰な演出を控え、発表主体の、
オーソドックスな形に戻した。さらに運営委員に欠員が多いため、
一般会員から大賞候補発表のパネラーを選出した。
それ含め、人的配置はすでに私の信頼するメンバーで完了している。
当初、関係者の間で感情的トラブルが起こりかけたが、
運営委員諸氏の対応よろしきを得て全て解決済み。
それを楽しみにしているような輩には気の毒だが、いつまでもそんな
トラブルを解決できず、火種を当日に持ち込むようなと学会では
ないのだ。

来年の会場のこと、S井さんから候補の図面見せてもらう。
ユニークな演出が出来そうだ、と演出屋としてのヨダレが
出かかるが、実は今回のトラブルの責任(実は私は何にもしていない
のだが、何故か渦中の人になってしまった)を取って実行委員は
辞退するつもりでいるのであった、と意見を喉の奥に引っ込める。

その後、出て飲みの店を探すが、最初の焼鳥屋で10分待ち、
というのを“じゃ、いいや”と切ったのが増長満の大失敗、
金曜の夜だということを忘れていた。さすが繁華の地池袋、
入れる店を探すのが一大事。

やっと、通りのビルの6Fの創作料理の店を見つけて入る。
クラス会か、女性ばかりの大一座が帰るところ。
I矢くん、najaさん、かなり遅れてぴんでんさんも来て、
いろいろ話に花が咲く。
今回の騒動の件、たまったものを一度に吐き出せて(みんなも
それぞれ吐き出していた)ちょっとスッキリ。
予てから考えていた来年度よりの実行委員辞退の意を表明するが、
四方から熱意を以て慰留される。
とりあえず、結論は明日の会の結果如何で、ということにする。
途中、いろいろメールあり、頭クラクラ。

帰宅、体力の消耗を抑えるためにタクシーで。
寝ようと思ったらこっちの胃を痛めている当人から電話、
関係修復の要請。感情的には言いたいことが瞬間に100も浮かんだが、
これ以上話をややこしくしたくなく、仕事の面での提携に絞って了承す。
仕事きちんとしている状態なら有能な人材なのだがな。
結局、就眠1時過ぎになってしまう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa