裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

水曜日

サンコンさん、いらっしゃい

サンコンさんは2人の奥さんがいるから新婚時代が2回あるわけですね。

※文庫解説原稿 劇団クロムモリブデン『空耳タワー』観劇

朝ずっと日記つけ。
9時半、朝食。
ジュース、スープ、ミルクコーヒー。
外は梅雨の晴間のいい天気。

坂本頼光くんが7月4日、5日に新宿ゴールデン街劇場で
ライブをやるそうであるが、『サザザさん』などの他、
解説をつける作品に『三公と蛸・百万両珍騒動』があるという。
先日アニドウの上映会で見たばかりのもの。
あれに頼光くんの説明がつくと、いったいどういうことになるのだろうか。

昼は母の室で昼食。納豆、肉炒め、茄子の鴫焼き。
某文庫の後書きを書く。退院後の初仕事。
さすがに疲れて、足がむくむので二時間ほど横になる。
原稿書きには力が入るのだな。

さて、出かけようとしたときにちょっと感動。
むくみがとれ、サイズがひとつ小さな靴がはける。
足が軽く、何かそれだけではずんだ気分になる。

地下鉄で赤坂見附、レッドシアター。
劇団クロムモリブデン『空耳タワー』。
幸田尚子ちゃん出演の舞台である。
赤坂に小劇場がある、というのは凄いなあ。
調べてみたら、案の定なかなかのお値段だが。

誰かと一緒に観ようと思って席を2つ、お願いしておいた
のだが、入院があって連れの選択を忘れ、あわてて声をかけたが
間際でみんな所用あり、仕方なく一人で観る。

先日青山で観たクロムモリブデンはアクションと仕掛けを多用
していたが、今回は台詞中心。
全ての登場人物が長台詞を奇妙なイントネーションで語る。
会話は成立しているようで成立していない。
それぞれの人間たちがそれぞれの事情だけを考えて行動し、
その勝手な思考がからまりあっていく。
好きな女をストーカーし、ふられて腹を立てて刺してしまう少年。
母親は彼女を介抱して恩を売りなさいと息子に勧める。
警察は身代わりの容疑者をとらえ、アリバイを求める。
アリバイは芝居を観ていた、ということだが、青年はその芝居の
内容をよく思いだせない。
主催していた劇団に訊こうとするが、その劇団は振りこめ詐欺を
アルバイトにしている連中だった……。
尚子ちゃんは刺されたガールフレンドを演じて、かなりのレトロ
ファッションに身を包み、マネキン的な奇妙な演技をやっていた。
以前の河崎実の映画でも演じていたが、こういうナンだかわからない
役をやらせれば日本一の女優ではないだろうか。
私が関わってきたいくつかの劇団の芝居に比べ、もっとも
60年代からの小劇場演劇の伝統を引き継いでいる、
“正統的アングラ”(用法がおかしいが)という感じで、
深夜に眠い目をこすりながら観るともっともっと面白くなるような、
つまり脳をマヒさせる魅力というような、そんな感じの芝居だった。
あこがれを非常に感じるが、まず自分には演じられない芝居。

終った後、近くの焼鳥屋『幸ちゃん』で幸田尚子ちゃんを待つ。
クロムモリブデンのこと、ルナの芝居のことなどちょっと話。
ここの稽古は3ヶ月近くかかるそうである。ちょっと驚く。
11時ころ、別れて帰宅、ビールジョッキ二杯とハイボール一杯
飲んだきりだったが、少し疲れたのでそのまま就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa