裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

月曜日

スパゲッティもスパゲッティも青い山

まっすぐな麺でさびしい(意味不明)。

※入院

朝7時ころまで断続的に咳。
9時ころ起きだして、さすがに限界と思い、昨日調べた医院に
電話かける。11時半ころ、行くことにする。
9時半、朝食。ジュース、スープ等如例。

入浴し、トンデモ本大賞の件などMLで連絡、11時半ころ、
近くのY診療所まで。路地の真ん中近辺にあり、近所のおばさん
たちが主な患者さんらしい。

20分ほど待たされ、診療。Y先生、聴診器で胸の音を聞いた
だけで“心臓がくたびれているねえ”と。
レントゲンとり、心電図とって、再度説明を受ける。
「これは大きい病院での検査が必要です、何なら今から行きますか、
紹介状書いてあげますが」
と言われる。さてこそえらいことになった、と思ったが、
やはり心配ではあるので、お願いします、と頼む。
「救急車出しましょうか」
と言われ驚く。そこまで大変な状態なのか?
いえ、タクシー拾っていきます、と診察料払って出る。
どうも、私の身体、大変なことになっているらしい。

半信半疑だったし、今後の予定のつまり具合を見ると
入院はちょっと荷であったが、心電図の後、着てきた服を見て、
ちょっとギョッとなった。黒いシャツの上に、食べこぼしが点々と
つき、皺くちゃでひどい状態になっている。
「こんなシャツを着て出てきたのか」
それ以上に、シャツがこんな状態だと気づかないままだったのか、
という事実に、自分がいま、正常な状態にはないな、と判断せざるを
得なかった。

あわてて、近くのジーンズメイトで新しいシャツを買い、病院に向かう
タクシーの中で着替えながら、やっと自分のただならぬ状態が実感
されてきた。

K病院、家からほど近いところに一年くらい前に建った大型病院。
循環器科のS先生に見てもらうが、レントゲンをひと目見て、
「こりゃかなりバテてるなあ!」
と。有無を言わせず、即刻入院セヨとのお達しが出る。
半ば覚悟は決めていたが、そこまでに至っていたかとショック。
即、入院手続き、さらに改めて心電図、レントゲンを
とり、採血もする。何でも心臓が通常人の1/7しか働いていない
心不全状態とのこと。

ベッドもすぐに用意させます、とのことだったが、食事に1時間の
猶予をもらい、いったん家に帰る。顛末をタクシー内で、母とオノに
連絡。やりとりを聞いていた運転手さんに
「お客さんなんか、見たところ健康に見えますけどねえ」
と言われる。家で母に、オコワ風ご飯食べながら説明。
状況を話すと母、混乱したかわけのわからぬことを口走り、
ちょっと口げんか。こんなときに。
K子にメールで状況を説明、急いで病院に戻り、入院手続き。

担当の女性に“ご職業なんですか”と訊かれ、作家ですと
答えると、へえ、本とか出していらっしゃるんですかと訊かれるので
「本出したり、テレビ出たりで」
というと目を輝かせる。
「え、テレビ? 最近なんか出ました?」
「土曜日に確か『世界一受けたい授業』がオンエアの筈です」
というと、
「すいません、人呼んできていいですか」
と、奥に入って同僚を呼んでくる。ここまでミーハーチックな
反応も初めてであった。

さらにあと一時間、と時間をもらい、(向うは行って帰っての間に
倒れて手遅れになる、という事態を予測して心配しているようだった)
タクシーでまた家。編集関係など、仕事先にメールして、ワープロ、
読書用の本など手当たり次第カバンに詰め込んでトンボ帰り。

担当の若いお医者さん男女2人。
一人は劇団ひとり似のK先生、名前が何と懐かしのテレビの主人公と
同姓同名。知ってますか、と訊いたら、ネットで検索すると
その人のことばかり出ます、と。
女医さんであるI先生の方は藍川京さん似のそばかす美人。
2人からいろいろ説明を聞くに、もう私のイノチはないかのような
気分になって落ち込む。バテの極地で、多機能不全みたいな
状態になっているらしい。

緊急病棟の4人部屋に入り、ベッドに。酸素吸入の管をつけられ、
心電図測定器を胸につけられ、血流内酸素測定器を左手の人さし指
に装着され、さらに左腕に点滴の管を入れられる。
女医さんが点滴の針刺しを3回も失敗する。
いろいろ雑念も浮かぶが、もうこうなったら仕方ない、全てを
まかせるしかない、と無我の境地。

検査、その他いろいろ。
検査室までは規定で車椅子で運ばれる。
心臓エコー検査などでも、もう心臓がほとんど動いていない、
と言われて、そんなものかな、と思う。
確かにこの数日の脈動の早さは異常であったかも。

いつからこうなったのか、身体の不調が実感されたのは3月のはじめ
あたりで、そのころから咳も出始めた。だが、その咳や呼吸困難が
心臓が原因とは思いも寄らなかった。足のむくみは心臓のポンプ
作用が弱ったため、水代謝が働かなかったせいだろうが、
そう言えば最近、夜中に起きるのも、小の方ではなく、
なぜか大の欲求があったからだった。
あれは、小水が出せないので、せめてと大の方を身体が出そうと
していたのだろうか。

食欲あまりなし、酒欲さらになし、検査終って、入院日記を書き、
あとはベッドで安静に。家でダラダラしていると罪悪感にとらわれるが、
ここでは天下晴れてダラダラできる。
ちょっと快感。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa