裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

火曜日

ふっふっふ、ムーミンどもめ!

ムーミン谷の底でうごめいておるわ。朝7時起床。窓外の天候、どんよりとした曇り。入浴、洗顔、その他。体重なかなか減少せず。とはいえ47歳にしていまだ痔や糖尿といったものに悩まされていないのはありがたい。ただし血圧がちょっと心配。朝食のとき、計ってみたが、入浴直後だし、私としてはごくごく普通の範囲内なのだが、一般的に言うとかなり高い。

朝食、黒酢ジュース、ミカン、リンゴ、豆スープ。日記つけ、空をうらめしそうに眺めるがやはり体調不全。12時半、家を出る。小雨である。コサメムーチョ、などとつぶやきつつ、コンビニでアサ芸・週プレ確認。お気に入りだった緑色の傘が壊れて悲しい。今日はなんとか使うがこれで用済みと相なる。

弁当を忘れて出たので道楽でミソノリラーメン。ちょうど次の味噌を仕込んでいるところだったが、ニンニク、タマネギ、ショウガ、長ネギ、リンゴなどを大量にすりおろして味噌に混ぜ込んでいる。
「うちのミソラーメンはスープを全部飲み干してもそのあとで喉が渇かない」
と自慢していたが、秘密はリンゴにあるとみた。

仕事場から電話で、1時にどどいつ文庫がくるが間に合うか、という確認。ラーメン騒ぎですっかり忘却していた。30分ほどどこかで待っていてもらって、と伝えておく。仕事場。さっそく来たどどいつ文庫伊藤氏を仕事場に案内して本を買う。

されから、楽工社Hさんから電話で催促のあったエッセイ本のゲラチェック。これが案外疲れる作業であった。要するに中身が詰まっているのだが。一本、別のものに差し替えた方がいいと思われるものあり、電話で伝える。

天候のせいだろうが肩がバンバンに張る。タントンに行き、一時間揉んでもらう。その間に、オノはK子から同人誌受け取り、ロフトプラスワンへ運びこむ。7時までかかって原稿書くが、もうちょっとで時間切れ。

新宿へタクシーで。
『ロフトプラスワン版オタク大賞』。OTCやグラナーテが外れてしまい今年はナシ、のはずだったオタク大賞を、ロフトの企画としてやろう、というさいとうさんのプロデュース。岡野キャプテン製作の資料がなくて果たして出来るのか?という不安あり。行ったらバーバラとオノと、アンミラメイドの女の子(バーバラのマイミクのえかちぇりいなさん)が物販していた。

楽屋にはすでに氷川竜介さん、東海村原八さん、藤津亮太さんコンテニュー林さん、やまけんさん、小川びいさんなど来ていて、初めての人とは名刺交換したり。客席はほぼ、満席。告知をそんなにしていなかったようなので、以前までの立ち見が出る騒ぎにまではなっておらず。逆に言うと告知ほとんどせずにここまで入るのは凄い。

最初に前回までのオタク大賞を仕切っていた柳瀬くんと野田くんを登壇させてさいとうさんから今回のオタク大賞がいかにしてこのような形で開催されたかという説明。これが案外重い内容で、楽屋で氷川さんと
「温度下げちゃうんじゃないか」
と心配。

その後の氷川、藤津、小川によるアニメ部門トークもちょっとやりにくそうだった。小川びい氏がいかにもオタクっぽく、いつまでも話しているのが笑える。彼が05年の話題の人物、として挙げた中の次点に私の名も入っており、驚く。アニメ夜話でアニメ語りオヤジとしてのキャラを確立させたから、とのこと。

で、そのトークの最中に遅れて楽屋入りした宮昌太郎さんとコンテニュー林さんのゲームトークが次のコーナー。これがきちんと二人で準備してネタ仕込みとかやっていたらしく(あとで台本みたら5分刻みで進行表つくっていた)トーク技術の抜群の面白さ。

私はゲームにもゲーム業界にも全くの無知で、
「任天堂の○○さんが……」
とか聞いても全然わからないド素人なのだが、そんな私が聞いても面白い。毒舌も吐くがきちんと業界の現状とその下で動いている次代への動向も押さえ、さらにゲーム業界を俯瞰するにはその会社の出自(アーケード系、おもちゃ系、エンタメ系など)を考慮しつつ見るとよくわかる(出自の違う会社同士の合併や合同はどこで利益を上げるかという経営理念が全く違うので絶対うまくいかない)という話など、目からウロコ、というか目にウロコが入っていたことも気がついていなかったのにもかかわらず、急に視界が広がった。オタクばなしというのとはちょっと違う、新しいマニアックトーク。若いしルックスもいいし、この二人、これからコンビでロフトで定期的にトークをやったら聞きに行こうかとさえ思った。実はもう私は自分がオタク大賞という場に出ることが荷になって、岡田さんと同じくもう引退、と思っていて、さいとうさんに是非にと懇願されてイヤイヤ出てきたのだが、このトークを聞いて、今日は元をとったと満足。

10分の休息を経て、最後のコーナーは“その他”という大雑把すぎるククリでやまけんさん、東海村さんと壇上へ。
「延びてますね、時間」
「さっきの二人、“小川さんの話が長い長い”とか言っていたけど、なに、長いのはお前らだーっ! と」
「でもトークうまかったですね」
「ネタはきちんと仕込んである、内容はぎっしり詰まっている、でもああいうトークだと誰もビールとか注文しない」
「われわれはユルユルで行きますので」
と、やまけんさんと漫才。メイド喫茶と絶対領域の話から、東海村さんが
「もう、ああいうのはオタクとは呼ばずに“絶対さん”とか呼んではどうか」
と提案、私が
「そのうち短縮されて“絶”とか呼ばれますね」
と。あと、ツンデレの話も。
「デレで反応するのが一般人で、オタクはツンの方を好むのでは」
「主要なのはやはりツンの方でしょうね。8:2くらい」
「ツンツンツンツンツン、デレ、ツンツン……ていうところですか」
など、客席爆笑していた。

話はどうもあっちゃこっちゃ飛んで、
「今後のオタク界の内包する問題点」
を話すべく来たつもりなのに結局馬鹿話ばかりで散漫になったが、これは前のトークの受けに負けるかと変な対抗意識を私とやまけんが燃やしたため。

いや、どうもこのイベントにここまで点が甘いとは。去年はうわの空とオタクの対立の中間に立ってどちらにも気を使いくたびれ果てたが、今年は純粋にオタクとして参加し、楽しめたからであるかもしれない。来年も出るか、これは?

最後は全員が壇上に並んで。今年は大賞とかの選出はナシ、という予定だったがそれも寂しい、というのでアキバ系、もしくは『秋葉原』にしようと東海村さんと提案。あと、触れられなかったポイントで、アニメやマンガをアカデミズムが取り込もうという動きの活発化があり、これの典型例として『テヅカ・イズ・デッド』という労作があり、ここでいわゆる地場のオタクとの拮抗が生まれれば面白いと思っていろいろ論争をしかけようとしても乗ってこないのは、向こうが関係を断絶して棲み分けようとしているからなのか、ということを言いかけたときに壇上にアカギくんが乱入、一方的に
「僕の書いた『テヅカ・イズ・デッド』批判!」
と、プリントしたものを押し付けて去る。相変わらずであることよ。

終わって、持っていった同人誌も順調にハケて完売、楽屋で“さっきの誰です?”“あれ、アカギくんですよ”“ああ、あれが名物の”“彼の出ているAV、面白いよねえ”“なんべんネタにしたことか”などと話す。小川さんはアカギくんのことを人に説明するとき、
「唐沢なをきのマンガの登場人物が実際に目の前に現れたような人」
と言うそうだ。

打ち上げに出たかったが体力限界なのでそこで辞去、終了間際に顔を出したしら〜とオノを誘って、すし好で夜食。しら〜が、その前にどこかで酒を入れてきたらしく、珍しく典型的酔っ払いの御機嫌さんになっている。バーバラ、えかちぇりいなさんも加わって、いろいろとイベントばなしなどしつつ、寿司と酒。

「唐沢さん!」
と、奥から店長が出てきて挨拶。
「入ってきた声聞いてすぐわかりましたよ」
と。以前下北沢店で店長をしていた人だった。もっとも、代金とかちょっとはマカルかと思ったがマカラズ。12時半、タクシーで帰宅。酒がかなり回ったのは気圧のせいかトークのせいかマッサージのせいか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa