21日
土曜日
オビ文ケノビ
「この帝国支配の時代の中で、著者は常にフォースと共にあるのだと思い感動した。オビ・ワン・ケノビ(ジェダイマスター)」
朝8時15分起床。K子が“外見て、外”というので窓外を見るに、霏々たる、という表現を使うのはまさにこのとき、と言う感じの大雪。
センター試験が今日であることを思うと、どうして日本の世論は毎年最も天候の不順な2月に受験期がくる4月始業制度に疑念を唱えないのだろうかと思う。世界的に見ても9月始業が本流だというのに。
以前、やはり公立大学試験日の大雪があったとき、江國滋(故人、エッセイスト。江國香織の父親)が
「気の毒に、とは思わない。人生の若い一時期にこういう試練があってもいい」
と書いていた。受験を日本におけるイニシエーション儀式ととらえる考えは小松左京も示していたが、そういう考えからすればこの大雪も意味があること、なのかもしれない。
入浴して9時朝食。ジャガイモと牛肉のグーラーシュ(パイデザに作ったもののお余り)、バナナ。米国産牛肉問題、日ごろどう考えてもこっちの方が体に悪いインスタント食品を食っていながら何をいまさら、という感じ。鳥インフルエンザの方がよほどわれわれの命にとって危険度が高いのに、なぜBSEの方ばかり騒いでパニックになるのか。言うまでもなくその底に反米意識があるからである。人は悪者が特定できる事件にしか騒がない。
昼までにFRIDAYの四コマとコラムを書き上げてメール。昼飯の用意が何もないが、この雪では外に出るのも荷なので、以前買っておいたイタリア製のパスタミックスを茹でて食う。1時間ほど昼寝。
5時、新宿へ出てヨドバシカメラ西口へ。タクシー使ったが、雪だから遅れるかと思ったら車が少なかったのでかえっていつもより早く着いた。六花&マドのコンビとヨドバシカメラマルチメディア館で待ち合わせ、モバイルパソコンを買う予定。
早く着いたので彼らを待ちつつ並んでいるモバイルを物色、二度ほど回って気になった日立のやつをいろいろパンフなど眺めていたら、そこに二人やってくる。
「で、何がお勧めなの?」
と訊いたらマド、きょとんとした表情で
「いえ、まさに唐沢さんの見ているソレです」
と。偶然ながら、私が直感で気になった機種がマドが専門家の目でこれがいいだろうと思ったものと同じであったらしい。こういう展開に私はヨワい。実は他にも二つほど候補があって、それらも見てみて、正直言えば値段のちょっと安いのもあったのだが
「しかしあのパソコンがオレには運命の出会いだったのだ」
と思うと、もう心はそれに行ってしまう。今までそれでだいぶ人間関係とかでひどい目にもあってきているはずなのだが。即決で買い、さらに通信用のエアーHを購入、契約する。契約完了にまで1時間ほどかかるというので近くの喫茶店で時間つぶすが、ここがまた昭和末期で時間止まっているんじゃないの?と思えるようなとこ。話題は尽きずすぐ1時間。
戻って受け取り、山手線で日暮里まで。雪、相変わらず霏々たる降り。こういう日は普通外出を控えたくなるものだがなにしろ相手が大木屋のもんじゃだけに気にもならず。
日暮里、さすがに新宿より2〜3度は気温が低い。路面の雪も凍りついている。転ばぬよう用心して歩く。六花が
「質屋『おじさん』が見えましたからもうすぐですね」
と言ったが、考えてみるとこの近辺には焼き肉『サラリーマン』とか、とんかつ『蟻や』とか、奇妙な名前の店が多い。『おじさん』は後で母に聞いたら50年以上前から日暮里にある店で、
「“一寸おじさんの家に”と言って来てください」
という宣伝コピーで有名だったそうだ。
大木屋、海谷さん先に来ている。もともと海谷さんが六花とはグルメ仲間で、それで今日はマドも呼び、さらに海谷さんが
「じゃ、コバーンも呼ぼう」
と小林三十朗さんも呼ぶことになったもの。今年初めての大木屋で、大将も
「もう最近はセンセイ、大忙しで来てくれないかと思った」
などと珍しくお世辞を言う。
最初は土手煮、それから例によっての肉、牡蛎、メンチ、もんじゃ。最初、注文でメンチをいい忘れたら海谷さんと六花が口を揃えて
「メンチも!」
と叫ぶ。メンチは前からやっていたのだが誰も注文しなくなり途中でメニューから外したのだそうな。
「そしたら急にみんな“大将、あれないの? 楽しみだったのに”とか言い出しやがって、また復活させたの」
と。世の中、そんなもん。
「人数がそろえば寒ブリ一匹、おろして刺身に出来る」
と大将言うが、それには二日連続でこの店を貸し切らないといけない。
ばくばく食って、ぐいぐい飲む。話もはずんで、コバーンは小林昭二に感じが似ているとか、海谷さんがブジオに遊びに行きたいとか、盛り上がって驚くほど日本酒のハカがいき、途中で冷蔵庫の中の酒が尽きた。
11時くらいだったが、そこで店を変えよう、と出て、いくつか当たった末に、前から気になっていた“焼きとん”の店が1時までだというのでそこに入る。ここがアタリで、焼きとんも漬物も旨し。マドが最初は海谷さんやコバーンに久しぶりに会うことでちょっと神経質になっていたが、酒が入るに従って打ち解けてきて、この二軒目では全員リラックス、コバーンと肩叩いて笑いあっていた。
流行る店なのか、ここしか開いてないからか、それからも狭い店内に次々とお客さん来る。1時を回り、私はタクシーで、みんなは大型タクシー相乗りで、晴れて星がまたたいている中、帰宅。楽しい一夜であった。