裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

火曜日

ちょっとずつ猛進

イノシシ武者だけど小心なので。朝7時半起床、入浴、9時朝食、もう平常。

でも朝食はまだお正月気分で雑煮。今日も昼にパイデザが来るというので、それに同席することにする。

自室で日記つけ、他いろいろ。人間関係で暮からずっと思っていたことあり、憂鬱だが、大きなことを控えている今年はきちんとけじめつけなければいけないこと。楽工社Hさん、FRIDAYのKくんなどからメール。もう出社しているのか。

Hさんからは暮に出したまえがき原稿への賛辞があり、ちょっと照れる。暮の表日記の挨拶にも書いたことだが、05年は表向きは大変に派手にいろんなことをやっていたが単行本執筆がその分ワリをくった。物書きの基本、忘るべからず。書き下ろしをきちんとやらねば。

昼、母の室でパイデザ夫妻と。昨日、この二人が母にプレゼントしてくれたちょっと高級なオリーブオイルを使った料理、ということで。ポテトスープ、ほほ肉のシチュー、焼いたフランスパンにオイルをつけて。香りがさすがバージンオイル。最後に今は無き新宿三笠会館風ペペロンチーノ。これにもたっぷりとオリーブオイルかけて。日記アップのことなど依頼。あと、上記のけじめのこと、話したらめぐみさんに拍手された。これまで、ハタメにも相当私は参っていたらしい。

2時、仕事場に出る。初出社。最初新宿に寄り、伊勢丹に行く。今夜はK子に、ひさしぶりに夕食を作る約束をしているからだが、新年の客でゴッタ返していて買い物どころの沙汰にあらず。諦めて渋谷へ。

年賀状確認し、楽工社の原稿リライト作業にかかる。某M社から依頼の件にOKの返事、気分盛り上がる。ひさしぶりに書庫にもぐり、資料調べ。

あと、ついでにHPBのカーの作品『蝋人形館の殺人』と『毒のたわむれ』も引っ張り出す。何の気なしに読んだ『パンチとジュディ』が意外に面白かったので、ちょっと向後しばらくカーを再読してみようかな、と。

6時、仕事場を出て西武デパ地下で買い物。まだ市場開いてないから仕方ないがあまりモノが揃ってはおらず。とはいえ荷物結局多くなったのでタクシーにする。若い運転手さん、景気のこと天気のこといろいろ話しかけてきていたが、十二社のあたりで思い切ったように
「……あの、間違っていたら申し訳ないんですが、ひょっとして、ラジオとかやっていらっしゃいます?」
と訊ねてくる。

ええ、TBSで金曜日に、と答えたら、
「わあ、やっぱりそうですか。いや、お声聞いていてどこかで聞いた声だなあ。と思って」
とのこと。テレビで顔を見かけて、というのはこれまで何度もあるが(今日も地下鉄で私の顔をこっそり盗写していた人がいた)、ラジオで声を覚えていて、というのは初めて。

ちょっと嬉しかった。ただし、
「こうやって普段の声を聴くと、やっぱり落ち着いていらっしゃいますね。ラジオではどちらかというとはしゃいだ声なので」
と指摘されたのにはダア。やはりそう聞こえますか。次回からは落ち着いていこう。

帰宅、K子帰るまでに料理の算段。アサリと豆腐の小鍋仕立て、豚肉ともやしの蒸し物。もやしはこの料理の際には豆もやしを使うのだがなかったので、ニラをまぜてコクを出す。いずれもあっという間に出来る簡単料理。9時、帰ったK子と2年ぶりくらいに家で二人で食事。
「腕は落ちてない」
とお墨付き(?)を貰う。以前はほぼ毎晩、私が作っていたのだ。食べて、その後チーズなどで飲みながら新東宝映画名作選DVDボックス見る。

『憲兵とバラバラ死美人』、『憲兵と幽霊』。『バラバラ』が57年8月公開、『幽霊』が58年の同じく8月公開と一年しか間がないが、その間に天知茂の大きくなったこと。

昔、池袋文芸地下のオールナイトで『幽霊』を観たとき、一緒に観たなをきが
「“こんな悪い奴、見たことない”とはこの映画の天知茂のためにある言葉だ」
と感想を述べていたっけ。

『バラバラ』の方では江見渉(後の俊太郎)がなかなかいい味を出していた。時代の制限でグロ映画とはいえ直接描写は出来ないが、その分、死体が半年間つかっていた井戸水でメシを炊いて食っていたことがわかった兵隊たちとか、いい意味での悪趣味描写(そんなのがあるか?)が秀逸。

12時、いい具合に酔って就寝。三が日もあっという間。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa