裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

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謹賀英雄伝説

ヤン・ウェンリーです、今年もよろしくお願い申し上げます。元旦の朝、いつも通り8時に起床、朝風呂使って9時朝食、のはずがいつまで待っても準備出来たという連絡なく、おかしいと電話したら寝過ごしていたらしい。

9時半に改めて母の部屋で朝食。
「一年の最初くらいは朝食らしい朝食を」
と、トーストとマーマレード、オムレツ。今日は夜、開田家一行が10人という大人数で来るのでその準備をしなければならぬ母の手間をはぶくため、オニギリを作ってもらって、昼はこれで。

自室に戻り、改めて酒。朝酒が許されるのは正月だけだしねえ。オニギリのおかずのサバの塩焼きと卵焼き、大晦日に買っておいたわさびカズノコとポテトサラダなどをアテにして、ちびちびやりながら年賀状メール見て、たまっているDVD類を見る。なんとも正月ぽい。

酒は『関娘』(山口県の酒)淡麗吟醸。口当たりが軽くて結構。ぬる燗でちびりちびりやりながら飲む。非常に結構。

と学会MLに、新春初書き込みはおめでたい話題で、と昇輔くんの真打昇進のことをアップ、真打披露目の際の後ろ幕をと学会で贈ることを提案、さっそく会員諸氏からの賛同を得る。

mixiでいろいろ新年のご挨拶やったり送ったり。寝正月というのはあるがミク正月である。DVDは『怪奇大作戦』の『狂鬼人間』。元旦にふさわしいというかなんというか。
「きちがい」
というセリフ続出にK子大喜び。
「日本の様に精神異常者が野放しになっている国は無いのだから、政府ももっと考えてくれなくちゃねぇ」
というセリフ、いま現代の日本にあまりにピッタリ。早すぎてしかもあまりに実もフタもなさすぎた悲劇のドラマであった。続いてDVD『CARTOON CRAZYS/BANNED &CENSORED』(検閲による上映禁止アニメ集)。

放送禁止つながりで、ということで。人種差別表現などが含まれているクラシックアニメ集だが、後期ベティもの『Be Human』などは動物虐待、アブ・アイワークスの『ちびくろサンボ』(こないだアニドウで見た)は黒人蔑視、でまあやむをえない(ベティの方は動物虐待している悪漢を虐待する話なんだが)とはいえ、同じベティ・ブープの『HA! HA! HA!』などはなぜこれが検閲にひっかかったのかさっぱりわからず。笑気ガスをココとベティが吸って笑い出す話なのでドラッグ・ムービーとされたのか?

それにしてもこの作品、『笑へ! 笑へ!』のタイトルでもう二十数年の昔、アニドウのベティ特集上映会で見て、完全にベティ・ブープのトリコになった作品だった。検閲のせいか何かその後いろいろ探したがどこでも見られず、最初に見た記憶のみで、03年の『世界と日本のアニメーションベスト150』のアンケートの中のベストアニメの一本に選び、「実写とアニメの合成で成功している作品を私はひょっとしたらこれ一本しか知らないかも」と書いた。

二十数年ぶりに再見して、その記憶が年月による美化だったらどうしよう、と、実は心配だったのだが、完全な杞憂で、今見ても、その合成の見事さとギャグの破天荒さ、表現の凄さ、後半一個のギャグで全編を描ききるストレートさ、笑気ガスが街にあふれて、時計、タイプライター、自動車からゴミ箱、橋、街の人々(これは実写)パーキング・メーターまでがヒステリックに笑い出し(自動車とパーキング・メーターは笑いすぎて壊れてしまう)、最後は墓場の墓石群が一斉にゲラゲラと笑いだすグリムさまで、大傑作で自分の目が若い頃とはいえ確かだったことを確認できて大満足だった。

他にはバン・ビューレンの『CUPID GETS HIS MAN』が、凡才バン・ビューレンにしては案外面白く、キューピッドたちを南北戦争時の北軍に比して描いており(隊長がユリシーズ・D・キューピッド将軍。ユリシーズ・S・グラント将軍のシャレで、バン・ビューレンの作品にはこの類の下手なダジャレがいっぱい出てくる)、女嫌いの男(女嫌いをキャラクターにしていて、「女は象と同じだ。眺めていれば楽しいが家に置こうとは思わない」などという名言のあるW・C・フィールズがモデル)と男嫌いの女を“総攻撃”し、捕らえた二人を杭に縛りつけて銃殺隊が愛の矢を飛ばし、無理矢理恋人にしてしまうという強引さがいい。

これが検閲に引っかかったのはワンシーン、黒人のキューピッドがいかにも黒人のカップルをバカにしたような結婚写真を見せるシーンがあるからか。
フライシャーの大傑作『フレッシュ・ベジタブル・ミステリー』禁酒法時代のスピーク・イージーを舞台にした野菜の擬人化ドラマで、アイルランド系移民を徹底し戯画化している。まず彼らはジャガイモとして描かれ(不毛なアイルランドではジャガイモが長く主食だった)、全員が警官で(アイリッシュは保守系で警官や消防士などの職につく者が多かった)、もぐり酒場を取り締まる立場ながらワイロのただ酒に酔っ払い、ニンジン夫人の子供たちの誘拐事件が起こるとただちに酔っ払いどもを無差別に逮捕、警棒でボカスカなぐるわ自白強要で拷問にかけるわ、ムチャの限りを尽くす。こりゃ検閲にもひっかかるわ、という内容。でもこの話、好きなんだなあ。
夕方まで酒飲みながらこういうDVD見て、のんべんだらりと過ごす。いかにも正月。
6時に母の室に、K子と。開田さんたち一行、Oさん、自衛隊夫婦、FKJさん、I矢くん、しら〜さん、台湾角川のワンさんなどと。

宴会用大皿(かつて札幌の薬局の近くにあったホテルが廃業するときに買ったもの)に黒豆、鶏レバ、揚げ豚、伊達巻、旨煮などを盛ったもの、名古屋の自衛官Yさん(私のファン)から贈られた巨大な晩白柚のサラダ、カズノコとワカメのあえ物などなどが並ぶ。

それと雑煮、頬肉シチューなど。テーブルだけでは座れないので、テレビショッピングでよく見る一人用簡易テーブル(このために注文して買ったらしい)も用意して。
去年はここで食べながら『ガメラ対大魔獣ジャイガー』見たが、今年は猫三味線の特典映像、秘密戦隊ゴレンジャーのビデオ(機関車仮面、野球仮面、牛ぐつ仮面)、それに先ほどの検閲カートゥーン数本。どれもウケていた。

最後に自衛官夫妻が持ってきてくれた巨大イチゴに生クリームをかけたもの。酒はI矢くんとFKJさん持参の日本酒と焼酎。10時過ぎころまでワイノワイノとダベり、かつ飲み食い。今日だけでどれだけ体重が増えたかは考えないようにする。

送りだしたあと、自室でまた酒。モンティ・パイソンのビデオなど見つつ。12時半、就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa