裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

土曜日

アマルガム・ブラザーズ

 オレたちは合金みたいにひとつなんだぜ! 朝方、すごい夢を見る。腹の大きいおじさんにインタビューするのだが、そのおじさんが布袋腹をむき出してあおむけに寝ると、その腹の前に座った女の子が、その腹の中にすぽん、と頭をメリ込ませる。位置を変えてまた、すぽん。完全に頭が首のところまで腹に埋まる。いや、夢と思うから普通に思えるが、夢の中ではこれは夢とはわからなかったので仰天のインパクト。
「この世のものとも思えない光景ですね」
 としか言葉がない。女の子は美人ではないが、ニコニコと笑う顔がとても魅力的でちょっと惚れるが、
「ああ、オレの腹ではこれはできないしな」
 と諦め、おじさんに凄まじい嫉妬を抱く、というもの。

 朝7時半起床。枕元のメモに“不感症と花粉症は似てる”と。夜中に思いついて書き留めるネタじゃない。入浴、朝食。イチゴとバナナ。冷やした野菜ポタージュカップ一杯。母に“頭が熱を持っている”と言われる。脳天がカッカしている。そう言え ば昨日も口の中が乾いて仕方なかった。風邪か?

 朝のうちに、と薔薇族コラム完成させてメール。送ってから脇にあった前号(創刊号)を読んだら前フリがカブっていた。あわててそこを手直し、また再度メール。あ ぶない、あぶない。

 11時出勤。車中で女性セブンと東スポと岡田斗司夫さんのアニメ夜話同人誌を読む。自分がなんか立派なことを言っており、感心する(素直なるかな)。週刊プレイボーイから催促が来ていたが、テープ起こし原稿が送られてきていない。“送られてきてません”と返信したら、集英社のパソコンのミスだったらしく、あわてて再送し てきた。

 再送待つあいだ、FRIDAY四コマネタ。最近は読者の好みのネタ濃度がわかってきたので、面白くても濃すぎるネタは排除する。最近ハネられたのはUFOネタのチュパカブラス(メキシコの吸血生物)についてのものだった。と学会においては薄 すぎ、のネタだったのだが。

 私は好きなことを商売にしてこれまでやってこられた極めて運のいい男だと自分のことを思っているが、それは趣味の世界(と学会的、裏モノ的)なものをそのままでなく、薄めて世に出せる才能があったからだと思う。その他の私の才能というのは自分で客観的に見ても大したものではないが、この一個の才能あるが故に、マスコミで 食っていける。

 やっとテープ起こし再送あり、書き出すがネタがギャグに結びつけにくい。あぐねているうち1時、関口誠人さんとの書籍打ち合わせ。東武ホテルの喫茶店でランチ食べながら。
「音楽というのは大変に誤解されているが、“好きなことを金にする”にはあまりいい手段ではない」
 という話など出て、興味深く聞く。さっきの私の考えと偶然ながら同調している部 分あり。 いろいろと預かりものをする。

 終わってまた仕事場、週プレ、なんとか形のみ整え、絵の資料にという感じでみずしなさんのところへ送る。おぐりと編集部には明日、ギャグなどをもう一度シェイプさせたものを送る予定。そこまでやって都営新宿線篠崎駅へ、うわの空の稽古。

 昨日のグズグズを今日はどう取り返せるか、ちょっと緊張していたが、今日はなんとか無難にこなせて、
「案外やれるね」
 と評価されてホッと。ホッとしたのは向こうの方だろうが。チューニング、まずまず成功というところか。明日はもうちょっと微調整してみるつもり。

 みずしなさんはサイン会で100人近くの人にサインしてからの参加。その情熱に感心。私の出るシーン、出ないシーン、繰り返し繰り返しやってみることで芝居がだんだん完成していく。最初からでなく、あの場、この場と部分的に完成していき、た ぶん、それが最後にジグソーパズルの絵が完成するようにカチンとはまる。

 その快感がうわの空の芝居作りの醍醐味。さて、その成果は如何に。それは紀伊國屋ホール『ただいま!』舞台にて。8時半、稽古終えて近くの飲み屋で飲みつつ打ち 合わせ。

 10時半、都営新宿線で橋沢さん、清水さん、みずしなさんなどと話しながら。かなり勉強になる。今回の舞台参加、私の演技は所詮文士劇だが、参加させてもらって“ああ、楽しかった”というだけの道楽にはしたくない。といって、役者を本業にするわけではない。プロデュースを業とするモノとして、現場の経験と、参加している 人々の意識を学びたいのである。

 新宿について11時半、早く帰って週プレを手直ししようとそこで別れてタクシー飛び乗り帰宅するが、自宅のパソコンに原稿データを送っていなかったことに気がつ き、フテて寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa